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野良のテイムモンスターがあらわれた! 気がついたら不人気モンスターだったので、ゲームの世界でひっそり生きたいと思います  作者: 明和里苳


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第5話 森の王者モンスター

 一通り植物モンスターを狩って、その後。


(うわぁ……)


 気がつくと、辺りは毒の瘴気に満ちていた。RPGでよく見る毒沼だ。一体誰がこんな酷いことを。俺か。毒の中和には岩タイプ、特に土を掘って土壌をかき混ぜる能力が必要なんだが、俺の持つ岩タイプはロックイワだけ。コイツの持ち技は打撃系、そして岩を食うけど土は食わない。くそっ、あのマスターめ。可愛い系のモンスターばかり集めて舐めプ(なめたプレイ)しやがって。交配した卵から突然変異でロックイワが生まれなければ、岩タイプなんか皆無だっただろう。


 ひとまず毒沼は見なかったことにして、俺は更なるキュブモン狩りに乗り出すことに決めた。だってこのキュブモン槍の世界において、過去作のモンスターまで手に入ることがわかったのだ。そりゃ取り込むしかないだろう。特に今、植物タイプをたっぷり取り込んだのだ。植物タイプが強いのは水モンスターに岩モンスター。海に戻る前に、この辺で岩モンスターを集めておくか。


「ズモモモ……」


 俺はトレントーに姿を変え、地中深く根を張る。おっと、自分の吐いた毒で根が腐りそうだ。腐海は避けなければ。そして根を広げた先で……いた。


「ズモモモ!(吸収!)」


 いたいた。ロックイワの進化前のツブテイワ、モグラモンスターのモグモグモール、それからカブトムシの幼虫ヨウチューヌ。正直、進化前のモンスターをゲットしたとて、新しいスキルを覚えるわけでもなければ育成できるわけでもない。ただ俺の養分になるだけだ。だが、地中に根を伸ばすだけで入れ食い状態。なにこれ美味しすぎ。人間の俺が食すのをためらうモンスターたちも、根を絡めてエキスをチューチューするだけで勝利、そのまま取り込みまでオッケーだ。自分がやられたらと想像するとゾッとするが、自分がするのはチョーきもちー。


 最終的に、俺は半径50メートル、地下20メートルほどに根を伸ばし、その中にいたあらゆる生命を取り込み尽くした。めっちゃお腹いっぱい。もう限界って感じがする。多分だけど、本物のトレントーならばこの時点でユグドラシールに進化するんじゃないだろうか。残念ながら俺はトレントーに化けただけのワメーバなので、ただ弱小モンスターの姿形と能力、そしていくばくかの経験値を得たのみ。だがヒメスズメになってわかった、弱小の方が目立たなくていいこともある。とりあえず、満足感と達成感、そして眠気が半端ない。このままちょっと休もう。




「くらえっ! メガドレイクン、フレイムバースト!」


「ギャギャー!!」


「いくわよイエティア! アイシクルレーザー!」


「ヒョオオ〜〜」


 いてっ。なんだ一体。人が気持ちよく寝てたら、幹にチクチクとダメージが。


『おおっと、巨大トレントーが目を覚ましました! 各マスターは攻撃に備えてください!』


 頭上からはバラバラと大きな羽音とアナウンス。あれっ、ヘリ飛んでる?


 辺りを見回して驚いた。俺はいつの間にか無数のキュブモンマスターたちに取り囲まれていた。上空には数機のヘリがバラバラと旋回している。


(はっ?)


 なんか知らん間にレイドバトルになってる。てか、俺がレイドボスなのか?


 改めて我が身を振り返ると、地中のモンスターを取り込んで樹高が50メートルくらいに成長している。あたりの木々はせいぜい20メートルくらいだから、めちゃくちゃ目立ってる。しかも植物モンスターを倒すために毒を吹き散らかしたせいで、森の一部が禿げて毒沼に。うん。人里に近い森に毒沼と巨大トレントーが出現すれば、そりゃ討伐対象になるよね。


 どうする俺。さっき取り込んだモグモグモールにでも変化へんげすれば、簡単に逃げることができる。しかし周りはキュブモンマスターだらけ、巨大トレントーが一瞬でモグラに化けたら正体がワメーバだってバレるかもしれない。そもそもワメーバは嫌われ者だ。詳しい事情を話している暇はないが、俺はこの世界では悪役モンスターの筆頭なのだ。


 よし、こうなったら。


「ズモモモ〜!」


『おおっと、トレントーの葉が激しく燃え上がる! フレイムファルコンのファイアトルネードが効いたかぁ!』


「よし、やったぞファルコン!」


「ヘルハウンド、ファルコンに続け!」


「負けないわよ〜!」


 無駄にモンスターを取り込み、無駄に成長した俺。ちょっとやそっとのことではダメージが通らない。というわけで、俺は自分で葉っぱに火を放った。地味にあちぃ。だがしかし、この難局を逃れるためにはこれしかない。


「ズ〜モ〜モ〜モ〜……」


 バターン。俺は大きな音を立て、巨体を倒した。そして土埃に紛れてソルジャーアントに化け、地中に逃れた。


『おおっとぉ、巨大トレントーを討伐したァ! みんなの勝利だァ!!』


「やったね!」「やったわ!」「みんなの森を死の森にした悪いトレントーを倒したんだ!」「ざまぁみろ!」


 地上はお祭り騒ぎだ。なんか丸く収まったようでよかった。てかさっきの森、いつの間にか死の森って呼ばれてたらしい。確かに、地上も地下も俺がモンスターを狩り尽くし、文字通り死の森になってたかもしれない。


 だけど取り込んだモンスターたちは、みんな俺の中で生きてるよ。「おのれよくも」とか「オボエテロ」とか、みんな恨み言を吐き続けてるけども。仕方ないじゃん、誰だって生き延びたいし、生き延びるためには強くなるしかない。俺悪くない。


 とりあえず、ここはもう用済みだ。俺は穴を掘りつつ地中を進みながら、次の目的地について思案するのだった。

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