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野良のテイムモンスターがあらわれた! 気がついたら不人気モンスターだったので、ゲームの世界でひっそり生きたいと思います  作者: 明和里苳


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第18話 果敢にアタック

 その後の俺たちについて、簡単に言及しておこう。


「ぬう……ぬうう……」


 何度目かの終電。ジジイは血の涙を流していた。今回もお土産がいっぱいだ。JASIN研究所の皆さんの胃袋に収まるだろう。


 魔異浜がダメならシーがあるじゃない。あの翌日、ジジイは隣に出現した新領域、魔異浜 Shopping Entertainment Amusement Park に突撃した。しかし結果は、魔異浜とほぼ同じ。それからは、なりふり構わずあちこち遠征した。既にマップにあったテーマパーク、商業施設、遊戯施設、それからありとあらゆるデートスポットに。だがしかし。


「やはりウニとキンギョでは戦えなんだか……ッ」


「ビチッ(そういうことじゃないと思うんだがな)」


 このキュブモンの世界、各フィールドの攻略に適したモンスターを連れ歩くのが常識だ。そしてそれは、デートや行楽にも当てはまる。例えば春なら、老いも若きも桜の精のキュブモン、チェリブロを模したぬいぐるみを持ってお花見に出かける。そこに花の咲く植物系モンスターを連れたキュブモンマスターが現れれば、注目間違いなし。さらにそれがチェリブロだった場合、羨望の眼差しを独り占めだ。


 テーマパークも同じ。魔異浜はネズミ、シーは水棲モンスター。United Studios Jasinは飛行系、そしてひらひらパークは格闘系。しかし、エレキネズミ一体を育成するのに、それなりの時間とコストがかかった。それぞれのテーマパークに最適と思われるモンスターをいちいち育成していたら、時間がいくらあっても足りない。だからジジイは、手持ちのモンスターで手当たり次第に特攻を繰り返したわけだが。


(もう普通に結婚相談所とか行けばいいんじゃないか?)


「そういうことじゃないんじゃ! 嬉し恥ずかし甘酸っぱい初デート、からの卒業じゃろが!」


(えっ)


 ジジイ、まだ卒業してなかったんかよ。てか、三十歳で魔法使いと言われるが、何百年ものはなんなんだろう。妖怪?




 そんな俺たちが足を運んだのは、鷹尾山だ。俺は悟った。ミスマッチが酷すぎる。ジジイが狙っていたテーマパークは、既にカップルが成立した若者が赴く場所だ。そもそも対象年齢が若すぎる。数百歳の化けモ……超人が、十代二十代のピチピチギャルをターゲットにするなど。確かに彼女らはこの上なく魅力的だが、ジジイはいい加減現実を見なければならない。


 しかしそれでは嫌だ、どうしてもギャルを諦められないというものだから。それなら、ジジイでも構わないという超SSRを神引きをするしかない。そしてそういう物好……超レア物件を探すなら、常人と少し違った趣味を持つ女性を探すしかあるまい。そこで、山歩きが好きな森ガールだ。もしかしたら、中には「外見よりも健脚」を評価してくれる美女がいるかもしれない。


 ――まあ、現実はそう甘くなかったわけだが。


「ぬう、なにがいかんのだ! 樹木系最強のユグドーラじゃぞ!」


「ゴモ」


 いくら山中だからって、歩く巨木モンスターが羨望の的になるのはどうかしてると思う。そしてそのユグドーラのバフをもってしても、ピチピチギャルは釣れなかった。そもそも山歩き愛好家に、若い女性はほとんどいない。稀にいたとして、そこには既に爽やかなイケメンがはべっていた。うん。同じ健脚なら、ジジイより若いイケメンがいいに決まってる。ユグドーラをもってしても、その差を埋めることはできなかった。


(やっぱ寺社巡りとかじゃね。キラキラのパワースポットとかじゃなく、素鴨とか)


(余計にギャルが少ないわ!)


 山頂まであと少し。まだ諦める気配のないジジイに、うぞうぞと根を這わせながら後を追う俺であったが。


(ん?)


 登山コースを外れた死角にある、切り立った崖。背の高い俺には見える。思い詰めた表情をした一人の女性が佇んでいた。


(いかん、助けねば。行くぞ!)


(おい、ちょっと)


 俺の中のジジイが俺を乗っ取り、崖に向かって行く。おいやめろ、ユグドーラって結構重いから!

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