第14話 ヌシ襲来
「まずいの。ヌシじゃ!」
ジジイがなにかを察知した。俺も薄々気づいていた。この火山島には、ヌシと呼ばれるドラゴンが棲んでいる。アルティメットブレイズドラゴン、火属性の最強竜種だ。このカエン島で一定時間を過ごすと、確率でイベントが始まる。この島ではドラゴンの目覚めとともに定期的に噴火が起き、しばらくすると鎮まるのだが、こいつを倒すとえげつない経験値、そしてドラゴンの卵が手に入る。もちろん討伐は超難易度、ドラゴンに歯が立たないうちは避難所に避難すればOK。だがイベントは不定期なので、一度逃すと次はいつ起こるかわからない。起こって欲しい時には起こらない、物欲センサーあるあるだ。
まあ今の段階では避難一択なんだg「なにをボサッとしておる! 多少早いが行くぞい!」は?
「グランドカピバラ! 塹壕じゃ!」
「キュピ?!(なに、やんのかジジイ?!)」
ちょっと待て。俺の中のキュブモン、みんな弱小だぞ?! グランドカピバラがせいぜい中堅、最強のユグドーラは火属性と相性が悪い。まあ負けたってキュブモンセンターに死に戻るだけだが、いくらなんでも無謀では?
しかし噴火の前兆で市民が建物から飛び出し、避難所へ向かっている。人目もある中、キュブモンがマスターの意向を拒否する姿を見せるのはまずい。
「キュッ、キュピイイ!(仕方ねぇ、塹壕!)」
ゴボボボ。俺はドラゴンの足元の土をスキルで掘削した。このバトルで一番厄介なのは噴火に伴うマグマの地形ダメージだが、溝を掘ってキャンセルする。ドラゴン攻略の定石だ。
「よし、次! ロックイワ、回転体当たり!」
「ゴッ、ゴロッ?!」
「来るぞ! ツバシロー、ブレスを回避じゃ!」
「ピュルーッ!」
ジジイ、指示早っ。俺は次々にフォームチェンジして、言われた通りにスキルを繰り出す。てか、アルゴリズムを知り尽くした的確な采配。コイツやり込み半端なくね? ガチ勢300年は伊達じゃねぇ。
このループをどのくらいやっただろうか。三桁は繰り返したと思う。元マスターがエンジョイ勢だったため、俺の中には弱々モンスターしかいない。当然持ち合わせるスキルはカッスカス、相手に通るダメージは微々たるもの。だが逆に、俺の方はほぼノーダメだ。ツバシローの回避にせよカピバラの塹壕にせよ、成功率や効果範囲は素早さや特防の数値を参照しているが、参照元は彼らではなく俺のステータスだからな。
ドラゴンの足元をカピバラの塹壕で掘り下げ、マグマの地形ダメージとヤツの自然回復を阻止。そして溜め攻撃の予備動作中にロックイワでちまちまとHPを削りつつ、攻撃は全てツバシローで回避。このクソ雑魚編成でドラゴンを押してるなんて、なかなかのジャイアントキリング。
「いいぞロックイワ、もっとやれー!」
「カピバラって結構使えるんだな。俺も育てようかな……」
「くうっ、ツバシローやるな!」
背後にはいつしかギャラリーが集まっていた。マグマの危険があるので距離を取っての観戦だが、みんな手に汗を握って俺たちを応援している。まあジジイがモンスターを入れ替えているように見せかけて、全部俺が化けているんだ。中ボス級の俺のステータスとジジイの采配があればそう難しい攻略じゃないんだが、ずっと嫌われ者モンスターをやってた俺、声援を受けるのは悪い気分じゃない。
「さてトドメじゃ! グランドカピバラ、百万どろつぶてじゃ!」
「キュピイイイ!(百万ってなんだよ!)」
ドゴーン。
「ギャアアオ……!」
ズゥン。アルティメットブレイズドラゴンは横倒しになると、淡い光となって消え、まだら模様の卵が残された。
ワアアア〜〜〜!!!
「すげぇぞ! あの雑魚でドラゴンを倒しやがった!」
「あれって研究所のジジイじゃねぇか?!」
「すげえな、昔伝説のマスターやってたのって本当だったんだ!」
「あれっ、でもさっき研究所で見たような?」
「シッ。おんなじジジイが世界中にいるのは暗黙の了解だろ?」
背後で轟く歓声、そして中には聞き捨てならないセリフ。カピバラって意外と聴覚が優れている。しかしジジイは卵を拾い掲げて、ギャラリーに向けてアピールしている。
「ムホォ。またモテてしまうわい!」
「キュピ(いやモテてねぇから)」




