第12話 検証
「はぁ……これで完了じゃ……」
明らかにやる気のないジジイ。俺(たち)はあの後、いろいろと検証を重ねた。主に俺の変身能力について、それはもうしつこいくらいに詳しく。
結果、取り込んだモンスターについては時間無制限。これは体感としてわかっていたことだ。それから、外見だけ真似した場合。対戦相手のキュブモンなら、習得している技まで完璧にコピーできる。そして相対している間はずっと変身可能。これは研究所にいたキュブモンで実験したから確かだ。
さらにもう1パターン、映像を見ただけの相手にはどれだけ似せられるのか。答えは、映像がある限り無限。これはキュブモンの対戦と同じ。一方、一度見た映像を元に変身した場合、変身時間は完全に俺の集中力に依存していた。大体30分、長くて45分。感覚としては、片足立ちや正座を続けるような感じ。それを過ぎるとイメージがあやふやになり、造形が保てなくなっていく。
気になるのは能力のコピーだが、こっちは全然ダメだった。
「非常に残念じゃ……ワシの三百年はなんだったのか……」
魂の抜けたジジイのつぶやきの通り、俺はJKお姉さんの仕草どころか歩き方一つコピーできなかった。いや、受付にいる時のお決まりのセリフやポーズはできるんだ。見たことあるから。だけどそれ以外、プライベートでなにしてるのとか彼氏はいるのとか、寝る時のパジャマはどうだとか、そういうのは全くダメだった。いや普通ダメだろ。
そしてジジイが一番落胆したのは、白衣の下を検証した時だ。「これは実験! これは実験なんじゃ!」などとうるさいもんだから、仕方なくボタンを二つほど外してみたとき。
クチャ、クチャァ……。
白衣の下は、まごうことなきマッドスライムだった。仕方ない、俺自身がマッドスライムの突然変異というか、主食がマッドスライムだもんな。これはミミックした他のキュブモンもそうだった。ヒメスズメの羽毛やモコチュウの被毛を掻き分けると、その下はお姉さんと同じくクチャァしている。似せているのは姿形だけで、中身はそのままなのだ。
これでジジイは一気にやる気を失った。あれだけワキワキしていた手がだらりと垂れ下がり、俺の中のMPが一気に削られた感覚。おいやめろ。お前の落胆に俺を巻き込むな。
しかし一方で、思わぬ収穫もあった。俺の中に取り込んだキュブモンを進化させることができたのだ。森の中で根を伸ばし、土中のモンスターをことごとく吸収したトレントー。コイツは緊急レイドバトルが開催されるほどの急成長を遂げたのだが、やはり進化を遂げる条件をとっくに超えていたらしい。
「ゴモモモモ(ユグドーラだ。今後ともよろしく)」
トレントーよりも明確な知性、そしてみなぎる力強さを感じる。非常に頼もしい。だがトレントーを超える巨体は使いどころがない。塩漬けか。「ゴモ?!」
あと、進化条件をクリアしていたのはロックイワだ。奴は地味に活躍するからな。しかしガンバーニュに進化させたら、もっとデカくなってしまう。コイツの進化は封印だな。「ゴロッ?!」
そうなると、もっと目立たず使い勝手が良さそうなモンスターを育てる必要がある。どれを進化させたらいいものか。俺は研究所の心臓部、巨大ポッドの前で唸った。




