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SF詰め合わせ

青空を知らないサッカー少年

作者: 歌池 聡
掲載日:2026/03/11


※しいなここみ様主催『無謀! 瞬発力企画2』に参加しています。お題は『青空』。



 キックオフ。


 主審のホイッスルが鳴ると、センターサークルからゴールキーパーの僕のところまでバックパスが飛んでくる。


「よーし、行くぞーっ!」


 僕は声をかけて、敵ゴールめがけて大きくボールを蹴り出した。


 ──昔、『サッカー』とは細かくパスを繋いで、相手ゴール前で思いっきりシュートを放つ競技だったらしい。でも、今は違う。むしろシュートとは、キーパーの裏をかいてそっとゴールの片隅に置くように蹴り込むものなのだ。


「──あ、マズい!」


 相手フォワードのラファエウにロングパスが渡り、ムリめの態勢から強いシュートが打たれる。ゴールの枠から1mはハズレてるけど、僕は慌てて横っ飛びでボールをキャッチした。


「おい、ラファ、今のはマナー違反だろ!」

「悪い、トマス、次は気をつけるよ!」


 入りそうにない時にあんなに力を込めるなんて、非紳士的行為(イエローカードもの)だ。もしボールを後ろにそらしてしまったら、何百m先まで取りに行かなきゃならないと思ってるんだよ。


 正直言って、サッカーなんて僕らには向いてないスポーツだと思うんだけど、じいちゃん世代たちが熱狂的なので仕方ない。ただの学生同士の試合だってのに、あんなに興奮して手足を振り回してるし。

 ──ボンベが外れて酸欠になっても知らないぞ。






 人類がこの火星に移住してきたのはじいちゃん世代の頃。どういういきさつで、ろくに酸素もないこの星に来ることになったのかは誰も教えてくれない。

(僕は密かに、ここが『流刑地』だったんじゃないかと予想してる)


 昔よりは植物も増えて酸素濃度は上がってるそうだけど、父さんたちもまだ屋外では酸素ボンベ無しでは長くいられない。火星第三世代の僕たちは平気だけどね。


 地球生まれのじいちゃんたちにとっては、『サッカー』とはノスタルジーの象徴らしい。

『よく青空の下、緑の芝生の上でボールを追いかけてたものだ』なんて聞くけど――僕らにとって空は赤いのが当たり前で、想像もできないんだよな。

 別に地球に行きたいとも思わないし、その術もない。だいたい、火星の3倍の重力なんて、まっぴらごめんだね。身体も重くなりそうだし、サッカーボールも飛ばなさそうだし──あ、だからチマチマとパスを繋ぐプレースタイルなんだな。


 僕たちはこの火星で生まれて、火星人として生きていく。それだけのことさ。






 さあ、後半のキックオフだ。

 そろそろ西の空が青みがかった色に変わり始めている。火星で『青空』といえば、この夕方の時間だけなんだ。


 バックパスを受けた僕は、火星の青い夕空に向けて、また大きくボールを蹴り上げた。



企画の趣旨を簡単に説明しますと──。

朝8時に出されたお題を使って24時間以内に作品を書き、瞬発力を鍛えよう!というというものです。

下に企画のリンクを貼りますので、よろしければ他の方の作品もお楽しみください。



しかし、『青空』というお題を見て一瞬で「よし、火星の話を書こう」と考えるあたりは、自分でもどうかしてると思います(^^;


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― 新着の感想 ―
場所が変わればルールやマナーも変わる。 たとえ変わってしまっても、サッカーという競技が残っていることは嬉しいですね。
凄く綺麗で迫力ある表現とサッカーとのマッチが面白くてかっこいいですね。
なるほど、確かに火星の重力は地球の1/3ですからね。 そしてその環境下ならば、サッカーのルールも青空の意味合いも大きく変わってきますね。 そうした祖父母世代と孫世代の認識の差が趣深いです。
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