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第二十八話 月光の再会

 東京湾に沿った高層ホテルのラウンジ。窓の向こうには夜の街の灯が宝石のように瞬き、月光が水面に銀色の道を描いていた。光哉は手元に置いた白ワインを指で軽く回しながら、静かにその光景を見つめている。

 ドアが静かに開き、紫苑が姿を現した。淡いシルクのワンピースが月光に溶け、歩くたびに柔らかな光を纏う。結花との熱のあと、火の小さくなった光哉の心臓が、静かに、しかし確実に早鐘を打った。彼の目は自然に紫苑の全身に吸い寄せられる。彼女はその視線を受け止め、微かに笑みを浮かべた。


「久しぶり」


 紫苑の声は月光に溶けるように柔らかく、そして甘く響いた。紫苑はいくつもの恋を経て成長し、得もいわれぬ妖艶さを身につけていた。

 光哉は微笑みを返し、ワインのグラスを置くと、静かに歩み寄った。紫苑の手に触れた瞬間、指先を伝う柔らかさと体温が、心の奥で眠っていた感情を呼び覚ます。

 互いの息が重なる距離で立ち、光哉は微かに紫苑の髪に手を滑らせた。その指先が首筋をかすめるたび、彼女の肩の力が抜け、柔らかく身体を預ける。

 二人の視線は、言葉よりも雄弁に交錯する。光哉の胸の奥に残る結花との余韻を、紫苑が上書きしていくようだった。彼の指先がシルクの布地を撫でると、紫苑の吐息が揺れる。まるで、熱と静けさが交錯する儀式のように、二人の身体と心は静かに、絡み合った。

 ラウンジのソファに紫苑を誘い、光哉は彼女の肩越しに月光を眺める。窓の外で海が揺れ、光が波のうねりを描き出す。その光景は、まるでこの再会を祝福するかのように、柔らかく、そして荘厳だった。

 光哉の手が紫苑の腰に回り、柔らかく抱き寄せる。肌の温もりが伝わるたび、官能的な緊張と雅な静寂が同居する。


「光哉さん…」


 紫苑の声は甘く震え、唇に微かな色を添えた。彼は自然と額を彼女に寄せ、二人の呼吸がゆっくりと重なる。触れ合う度に、身体は互いの存在を確かめ、内側から解き放たれる熱が、夜の静寂を微かに揺らす。

 やがて、手と手を絡めたまま二人は部屋に向かい、ソファに横たわる。光哉の胸に紫苑がもたれ、髪が頬に触れる。結花との激しい夜とは異なり、今夜は静謐でありながら、官能的な余韻が柔らかく身体を満たす。指先が肩や腰を撫でるたび、互いの体温が空気に溶け込む。

 月光が部屋に差し込み、二人の輪郭を銀色に縁取る。光哉は紫苑の髪を撫で、耳元に唇を寄せて囁く。

「君が戻ってくるのを待っていた」

 紫苑は微かに目を閉じ、胸の奥に静かな熱を抱きしめる。

 夜が深まる中で、二人の身体と心は穏やかに絡み合い、熱の余韻が全身を包む。互いに触れ、寄り添い、そして静かに息を整えるその時間は、愛と情念の香りに満ちた官能的な儀式であり、二人の静かな再出発を象徴していた。

 外の月光が海に反射し、都市の喧騒はまだ遠く。ホテルの室内だけが、光哉と紫苑の熱、官能、そして雅やかな静寂で満たされていた。過去の恋の余韻も、官能的な熱も、今夜の再会がそのすべてを受け止め、静かに包み込む。光哉の胸の奥で、長い孤独が少しずつほどかれ、二人の未来への確かな光が差し込むのを感じた。

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