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第十八話 指先の記憶

 冬の光が低く差し込む都心のオフィス。

 光哉は大理石の床に反射する光を踏みしめながら、デスクの向こうに座る深雪を見つめる。

彼女は資料を手に、静かにページをめくる。紙と指先が触れる微かな音だけが、室内の空気を震わせる。

 深雪の手元に目を落とした瞬間、光哉の胸に温度の波が広がった。

 柔らかな指先の動きが、かつて触れた誰かの記憶と重なり、指先が伝える繊細な熱や感触が、身体の奥を疼かせる。

 紫苑の微笑み、紅音の吐息、沙羅の視線……過去の恋人たちの欠片が、指先の震えに重なる。

 深雪は資料を閉じ、静かに立ち上がる。

 黒のドレスのラインが柔らかく揺れ、髪先が肩をかすめる。

 その仕草に、光哉は吸い込まれるように息を詰める。

 まるで冬の薔薇が静かに開くかのように、妖艶な空気が二人の間に立ち込めた。

「光哉さん」

 深雪の声は低く、しかし確かな熱を帯びる。

 光哉はゆっくりと近づき、彼女の手に触れる。

 掌と掌が重なる瞬間、電流のような微細な振動が空気を走り、身体の奥に熱を刻む。

 触れたその瞬間だけで、過去のすべての恋の面影が鮮やかに蘇る。

 深雪は視線を逸らさず、光哉の指に微かに圧をかける。

 その柔らかい感触が、過去の夜を思い出させ、胸の奥で疼きを呼ぶ。

 光哉は肩の力を抜き、息遣いを整えながら、指先の温度を全身で感じる。

 冬の空気は冷たいはずなのに、指先の記憶が身体に熱を残し、官能の余韻を立ち上らせる。

 深雪は資料を机に戻し、光哉の前に立つ。

 ドレスの生地が足元で揺れ、足先から腰まで微かに官能的な曲線を描く。

 その姿勢、息遣い、微かに開いた唇――すべてが冬の光の中で艶やかに映える。

 光哉の手は自然に彼女の腕を軽く撫で、熱を伝える。

 指先が触れた瞬間、過去の恋人たちの記憶が交錯し、身体が思わず反応する。

「……昨日の続きを、少しだけ」

 深雪の声に、光哉の胸が微かに揺れる。

 過去の恋人たちとの夜の記憶が一瞬で呼び覚まされ、指先から伝わる熱が全身を巡る。

 光哉は深雪の手を取り、ゆっくりと指を絡める。

 その瞬間、過去の笑顔、吐息、視線が重なり、指先を通して交錯する。

 冬の冷たさの中、指先だけが熱を持ち、二人の心を静かに、しかし深く結びつける。

 窓の外、夜の街の光がゆらめき、オフィス内に妖艶な陰影を作り出す。

 光哉はその光と影の揺らぎに、深雪の存在を重ね合わせる。

 深雪は微かに微笑み、視線を光哉から逸らす。

 その微笑みは、静かでありながらも誘惑的で、過去の恋人たちの影を映す鏡のようだ。

 光哉は息を詰め、指先の感覚を全身で味わいながら、過去と現在が交差する官能の時間に浸る。ふたりの湿気が混ざり合う。

 やがて、深雪はゆっくりと手を引き、軽く頭を下げて資料を整える。

 その仕草のひとつひとつが、冬の光の中で艶やかに映え、官能の残像を光哉の心に残す。

 光哉は椅子に腰を下ろし、指先の熱と香りを胸の奥で反芻する。

 過去の恋人たちの面影と、深雪の存在が交錯し、冬の夜に咲く薔薇のような余韻を紡ぐ。

静かなオフィスに残るのは、指先が残した熱、微かな香り、そして冬の夜の光。

 官能の渦は、形なく漂い、二人の間に密やかな絆を築く。

 光哉は窓の外の街を見つめ、深雪の背中に想いを馳せながら、過去と現在の恋の残像を胸に刻むのだった。

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