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8 王からの手紙

 舞踏会が終わり数日後の朝──


「手紙?」

「はい。クラリス様宛のものです」


 執事から受け取った手紙を手に取り背筋を伸ばす。

 封蝋が施された手紙を静かに見つめていた。

 紋章は王家のもの。つまり陛下からの私信だった。


「なんて書いてあった?」


 侍女のリディアに言われて答える。

 鮮やかな栗色を巻いた勝気な美人で姉のような存在。

 表情が固くてもリディアだけにはなぜかわかる。

 仮面を被ったクラリス様も綺麗だと言ってくれる。

 少し口が悪いけれど、信頼できる、数少ない大事な存在。


「直接お話ししたいことがあるそうよ」


 冷静を装っていたけれど少し声がうわずった。


「へえ。わかったわ。衣装の準備をしなくちゃね」


 一体何の用だろう? 直接話がしたいなんて。この前の失礼を咎められるとか?

 いいえ。陛下は忙しい方だからそんなくだらない用事で呼び出すわけがない。


「表情が固いけど、何か思い当たるフシでも?」

「別に……」

「もしかして、口説かれたらどうしようとか思ってない?」

「まさか。失礼よ。ただ陛下からの呼び出しとなると気が抜けません」

「へえ。でも顔が口説かれたらどうしよう。って不安げに見えるけど?」

「そんな顔していません」

「動揺してるって。眉が1ミリ下がっているもの。動揺しているときのサインだもの」


 小さく息をついた。動揺はするでしょ。まさかの相手からの呼び出しだ。


「仮にそうだとしても、陛下がそういう方だとは思いません。公私混同を嫌う方です」

「でも……」

「根拠のない憶測はよくないわ」

「ふーん。それは失礼しました」


 リディアの言う通りの話ではないと思う。もし職務以外の件だったら……

 ううん。そんなことあるはずがない。と、自分に言い聞かせた。



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