18 王宮庭園にて
陽光が王宮庭園を優しく照らしていた。風が心地よく吹き、手入れの行き届いた薔薇のアーチと噴水の周囲には貴婦人たちの笑い声が響いていた。
使節団の婦人たちをもてなすため、王命によりお茶会のホストを務めることになった。
本日の衣装は控えめな淡いグリーンのドレス。裾と胸元には控えめながら上品に見えるよう薔薇の刺繍を入れた。
「本日はお忙しい中、お越しいただきありがとうございます。短い滞在の中で少しでもくつろいでいただければと思い、ご用意をいたしました」
女官たちの意見も取り入れてセティングした。
この時間は日差しが強く当たらない。風の通り道になっているから、噴水の水で涼しく感じる。
薔薇をあしらった繊細なティーセット、季節の果実をあしらったお菓子、東方から輸入された香り高い紅茶。どれも吟味を重ね選んだもの。
「噂では聞いたことがありましたが、素晴らしい庭園ですわ」
「本当に。薔薇の香りに癒されます」
「素晴らしいテーブルセンスですわ。口に入れるのがもったいなく感じますわ」
ティーフードはお茶会の醍醐味。絶対に自信のある品だ。喜んでもらえてよかった。
婦人たちと会話が弾んでいたときだった。
「お待たせいたしました」
ふわりと風に舞うように聖女エミリア現れた。
淡いピンクのローブに、金の刺繍が品よく光っている。
「お招きに感謝いたします。クラリス様」
「ようこそいらっしゃいました。エミリア様。お忙しい中ありがとうございます」
席に着いたエミリア様は微笑みながらも、どこか探るような視線で使節団の貴婦人たちと私を見た。
「聖女様がご出席とは光栄の至りですわ」
「お会いでき、とても嬉しいですわ。王国における聖女という存在にとても関心がありましたもの」
婦人たちの視線が集まり、それに返すように微笑んでいた。
「わたくしも皆様にお会いでき、クラリス様のお茶会に招待していただきとっても光栄です。何か足りないものはございませんか? わたくしの方でも用意できますし、何よりわたくしは聖女就任以来王宮で暮らしております。何かご不便がありましたらお手伝いさせてくださいませね」
エミリア様は陛下に、今回使節団の婦人たちのお茶会を自分が開催したいと意見していたのだけど、却下された。今回のおもてなしは私が一任された……彼女にしたら面白くないだろう。