15 晩餐会
翌朝、王宮の正面玄関には、使節団を迎えるための旗が掲げられた。
今日はただの貴族の令嬢ではなく、この国の代表の一人として立つのだ。
「本日14時正門前でお出迎え。晩餐会は19時より。楽団の演奏は18時30分開始とします」
朝礼をしていた。みんなの緊張が伝わってくる。
「ほら、そんな顔をしていると使節団にも伝わります。陛下から楽しみながらお出迎えをするようにとのことです。心配は無用です。この日の為に皆んなで用意してきたのですから。何かあってもフォローします」
「はい」
「さぁ、それでは……エマさん、装花が変更になったのは知っている?」
「はいっ! 白百合から紅薔薇です」
「そうね。紅はオルデン侯国の象徴色です。歓迎の意が伝わるわ」
「はい」
「フロレンスさん、テーブルセッティングですが、各国式で並べてあるか確認をお願い」
「はい。すぐに」
「みなさん、使節団はお客様です。笑顔で目線を合わせて挨拶するように。過剰にへりくだる必要はありません。誇りを持ち、敬意を忘れないように。いつも通りでいいのです」
「はいっ」
しっかりと返事が返ってきた。みんなの顔が変わった。
使節団の馬車が見えたとき、王宮の正面玄関は緊張に包まれていた。
優雅に見えるよう姿勢を正し、笑顔を作った。
そして待ちに待った使節団の馬車が止まった。
一歩前へ出て、深く頭を下げた。
「遠路よりのご来訪、心より歓迎いたします。王の御命によりみなさまの滞在時のお世話をさせていただきます。ローゼンベルク家・クラリスと申します。短い間ではありますが、快適にお過ごしいただけるように尽力いたします」
久しぶりに話すオルデン侯国の言葉。
「お若いのに、ここまでとは。お噂以上ですな、クラリス嬢。世話になる」