第3部プロローグ
俺、浅田直照は異世界フィロソフィア王国で雷の剣の使い手ナオテル・イフォンシス・デカペンテとして知られるようになった。最初はエマに助けられた異世界人に過ぎなかった俺が、今では国の命運を左右する戦いに身を投じることになるとは思ってもみなかった。
フィロソフィアには新たな危機が迫っていた。ルーシーが鋭く指摘したフォルスク条約の欠陥——「高度な自治」と「助言」という曖昧な表現が、まさに現実の脅威となって立ちはだかったのだ。ローレンティア地方で労働者の暴動が起こり、自治政府がマキャベリア軍に支援を要請する口実を与えてしまう危険性が高まった。
決定的な瞬間が訪れたのは年末だった。予想通りローレンティア地方で暴動が発生し、マキャベリア軍が進軍を開始した。俺はレオン副長と共にヴァルドフェール低地で敵を迎え撃つ作戦に参加した。銅線と水を組み合わせた雷の剣の新戦術——これまでの訓練と準備の集大成だった。
マキャベリア重装歩兵の密集隊形を前にして、俺は極限まで敵を引きつけた。雷の剣を発動した瞬間、青白い光がヴァルドフェール低地を包み込んだ。作戦は成功したかに見えたが、マキャベリア騎士団副長の最後の一撃が俺の左肩を貫いた。
空を見上げながら、俺の意識は徐々に遠のいていった。
エマ、みんな、俺は約束を果たせたのだろうか——。
静寂の中で、俺の記憶は途切れた。




