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再会

 門の中に入ると皆が俺達を物珍しそうに見てくる。俺も然り気無く様子を伺う。俺が想像していたスラムの様に不衛生と言う事はなく、普通の街と変わらない感じだ。


しかし違和感が半端ない。俺が子供の時に聞いていたのと全然違うのだ。


確かに額に布を巻いたり、眼を布で覆っている者は多くいる。その下がどうなっているかは想像するのは簡単だが……。


「どうなっている?」


俺の独り言にフレアが反応する。


「ウィルもそう思うのね」


普通の人達にしか見えない。異形の者などいない。大体この人は目を覆って……いや眼が無い筈なのに何で普通に歩けるんだ。


「病気の者達はこの先の建物の中だ。奥に行けば行くほど酷い状態だ。長には俺が話しておく、捜し終えたらこの建物に来てくれ」


「わ、解りました。ありがとう御座います」


俺達を信じているのか、自由に調べていいようだ。


「何処から調べるの?」

「一番酷い所から」

「解った」


もう10年以上経っている。アリス様とタクト様と判る事が出来るだろうか?一番の頼りは珍しいアリス様の銀色の美しい髪なんだけど。



一番奥の大きな建物に足を踏み入れる。建物の中はベッドがきれいに並んでいて、清潔でゴミ1つ無い。誰かがきちんと面倒を見てくれているのだろう。


寝ている人達の顔を見ながら奥に進む。顔はただれて溶けている様に見える、末期の症状だ。


「悲しくなって来るわ」

「そうだね……」



「ねぇ、あの人」


フレアの視線を追う、くすんではいるが銀色の髪の女性が見える、俺は駆け出していた。ま、間違い無い……美しかった面影はなく、肌の全ては潰瘍に冒されていた。



「ア、アリス様……」

「……ど……な…………たで……」


「ウィルです。ファルガの息子のウィルです」


「……ウィ……ル」


彼女はもう眼が見えなくなっているのだろう。ゆっくりと手を伸ばして俺の顔を触ろうとする。でも触れる寸前でピタリと止まる。


「大丈夫です。俺には病気はうつりません」


彼女の手を握って言う。


「ああ……ウィ……ルなの……」

「そうですウィルです」


「うっ……ゴホッ」

「アリス様!」


「ウィル、早くしないと!」

「ああ、解ってる。ララメリア!頼む」


「畏まりました」


ララメリアが放つ光は目映く、いつもより光り輝いているように感じた。


焦れるような時間が過ぎ、目の前にアリス様の姿が見えた。


「アリス様」


「……」

「アリス様、ご気分はいかがです?」


「見える……眼が見える……ウィル、ああ……立派になって……」


「良かった、治った様ですね」



「これは一体どうなっているのです」


声をかけられ後ろを振り向くと、ここの世話人達なのだろうか?身体を拭く布を大量に持った女性達が、空中に浮かぶララメリアと俺を交互に見ながら呆然としている。


「すいません。勝手に治療をしました」

「治療?何を言っているのです」


「カレン、彼女を見て!」

「えっ、潰瘍が無い……」


「話の途中で悪いのですが、ウィル、もう1人の人はいいの?」


「そうだ!アリス様、タクト様は?」

「タクト……わ、私の隣に……」


アリス様の奥のベッドを見ると、俺と同じ位の男性がいた。寝ているのか、意識が無いのか?


何れにしても治さなくては。


「ララメリア」


「ウィル様、お身体は大丈夫ですか?かなり魔力を使用した筈です」


「大丈夫」

「畏まりました」


再び光が溢れだして、タクト様と思われる男性の潰瘍が消えていく。


それを見て安心した……。


「「ウィル」」「ウィル様」



ーーーー


「う~ん」

「あっ、気がつきました、皆様」


「ホントだ」

「良かった」

「ウィル」


どこだここ?あ~、あの建物の中だ。タクト様が回復したと思ったら、気が抜けて急に目が回ったんだっけ。



「魔力枯渇の一歩手前よ、バカね。とは言えないか、仕方ないわね。お疲れ様」


「ありがとう。2人は?」

「ここに居るわ」


「ウィル、こんな形で会うなんて」

「タクト様」


「もう様付けは無しだ」


「そうですよウィル。あの頃の私達ではないのです。何故ここにいるのかと、話したい事は山ほど有りますが、ここの長が話が有るそうです。先ずはそちらに」


「解りました」



ーー



長の所へは俺が1人で行くことになった。案内してくれた人が、来るようにと言った建物の入口には別の男性が立っていた。訳を話すと手で中に入れと促される。話す事が出来ないらしい。


中は普通の家と変わらない、色々見回していると1人の男と目があった。


「私がアナサマの長、テレスです。どうぞこちらへお掛け下さい」


「あ、ありがとう御座います」


「人を捜しに来たと聞いていますが、アナサマに来ようなどと言う者はいません。何故ここにいると思ったのです?」


「俺の師匠の助言です」


「師匠?……名前を聞いても……口外はしませんので」


「ザラスト」


「ザラスト!……それで不思議な力が有るのですね」


「それは想像にお任せします」


「先ほども言いましたが口外はしません。出来れば他の者も治して貰いたいのですが」


「……協力はします。一編には無理ですが」


「ありがとう御座います。……私の聞きたい事は済みました、貴方も聞きたい事が有るのでしょう?」


全てお見通しか……。


「では……」


「テレス様!大変です。また帝国の奴らが攻めて来ました。この前とは数が違います」


「くぅ、皆を集めてくれ」

「はい」


「申しわけない。話はまた後で、危険ですので先ほどの建物に避難して下さい」


どうなっている?アナサマを襲うなんて考えられない……。


「帝国がなぜここを攻めるんです?」

「それも後で」


遠くで爆発音がする。テレスさんは置いてあった杖を持って門の方へ駆けていった。


どうしようか迷っていると、アナサマの人達が門の方へ向かって行く中、サユリカとフレアが走って来るのが見えた。


「ウィル様」

「アリス様達は?」

「あの建物の中にいます」



「そうか……ここの人達の手助けをしようと思う」


「「賛成」」


俺達の意見は一致した。皆で門へと向かった。


いつも読んでくださりありがとう御座います。


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