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出会い

 俺の父上とウエリントン子爵は、若い時から馬があって仲が良かった。なので屋敷も近かった事も有り、俺が小さい時からお互いに行き来していた。


ウエリントン子爵には、2人の子供がいた。俺より2つ年上のアリス様と同い年のタクト様だ。


当時6歳だった俺は、アリス様と会うのが楽しみだった。可憐で優しくて、俺の初恋の相手……今、思い出しても胸がキュンとなる。


しかし、ある日を境にパッタリと2人は屋敷に来なくなったし、子爵の屋敷に行ってはいけないと言われた。


父上に理由を聞いても教えてはくれなかった。『お前にもいずれ解る日が来る』と言っただけで。


その日が今だった。子爵もガレキーニ伯爵によって潰され人生を狂わされたのだ。


「ガレキーニ伯爵こそ諸悪の根源、いや全ての王族もだ」


「国王に直訴は出来なかったのですか?」


「幼い時から女をあてがわれ、美味い物をたらふく食い、勉強など名ばかりでバレタ公爵やガレキーニの傀儡の王に何が出きると言うのだ」


「……アリス様とタクト様は?」


「捕らえられた私は、隙をみて逃げ出し必死になって捜したよ。奴隷になって、幼児趣味の貴族に売られた事は判った。その貴族は娘達を弄び、飽きると同じ趣味の連中に売ったそうだ。それが何回も繰り返され、今でもその先はどうなったか判らない。もちろん、判かっているそいつらは始末したさ」


吐き気がしてきた。今まで俺は何も知らずにいたのだ。


「ウィル君、解っただろう。こんな国は滅ぼさなくてはいけない」


俺はこの人に何て言えばいいんだ?言える事など有るのか?


「で、でも必死に一生懸命生きている人もいます。その人達まで巻き添えにするなんて……」


「私達を陥れたガレキーニの一族や王族の顔は私は知っている。だから、そいつらを殺す事は簡単だ。しかし、それだけでは私の復讐は終わらない。王都にもこの街にも、私の家族を陥れる為にガレキーニの手足となって動いた連中が腐るほどいる。ガレキーニ達にはじっくりと恐怖を味わって貰わなくては」


「……まさか判別が出来ないからって……俺も2人を捜すの手伝います。だから、こんな事は止めて下さい」


「おかしいのは解っているが、この力を手に入れる為に私は禁忌をおかしている。止める事など出来ない。しかし、今回はここまでの様だ。この街には優秀な冒険者がたくさん居たらしい、誤算だった」


「子爵、どうしてもダメですか?」


「ああ、無理だ。……ウィル君、今度はこちらからの質問だ。その力はどうした?」


「俺の師匠はザラストです」


「ザラスト?……あのザラストか。もっとも会いたくない者、絶対に会ってはいけない者……なるほど、経緯は判らないが凄いな君は。……そろそろ私が集めた魔物は全滅しそうだ。また一から集め直しになる、出来れば君とは戦いたくない邪魔はしないでくれ、さらばだ」


「ウエリントン子爵!」


黒い空間が現れ、子爵は消えてしまった。


俺はどうすればいいんだ…………。


「お~い、大丈夫か?」


どうやら子爵が言ったように決着がついたらしい。


「はい、大丈夫です。この人達は気を失っているだけですので運んでもらえますか?」


「分かった、任しとけ」



ーーーーーーーーーーーー☆☆☆




目が覚めたらギルドの休憩室の仮眠ベッドで寝ていた。隣にはパーティーのみんなもいる。そうだ、私達は森に入った途端にキマイラの火球を受けてしまったのだ。身体全体が焼け、吹き飛ばされた所までは覚えている。


激痛で意識が戻って、また意識を失うまでに聞こえていた話し声……覚えているのはウィルと言う名前。


そして私達はキマイラの火球を受けたのに傷が1つも無い。ありえない。私達を運んでくれた人達に聞いたら、若い男の子がいたそうだ。


ウィル……が、その男の子なのかな?会って話しをしてみたいな。落ち着いたら捜してみよう。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





「師匠、俺はこの国を出て旅をしようと思います」


「ほう、旅とな?一応は理由を聞いておこうか?」


「実は…………」


「なるほど。……では1つ、師匠から弟子への助言をしよう」


「はい、何でしょう?」


「闇雲に人捜しをしても仕方がない。見捨てられた者の集まる場所を知っておるか?」


「それって、もしかしてアナサマ沼地の事ですか?」


「そうだ、そこに行ってみるが良い。お前なら大丈夫だろう」


「……分かりました」


「今のお前なら、いつでもここに戻ってこれるだろうしな」



ーーーー




師匠の事だ、きっと根拠が有って言ったのだろうが、恐ろしい、でも行くしかない。アリス様とタクト様を捜さなくてはならない。俺は次の日にエドオリオの街を出発した。



アナサマ沼地は最西端に在るので、ここからだとかなりの長旅になる。


乗っている客は俺1人、順調に馬車は進んでいたが、ガラザス王国との国境付近で馬車が急停止した。


「どうしました?」

「前の方で馬車が襲われているようです」

「かなりの人数の盗賊だな」


「不味い、こっちも気づかれた。お客さん隠れていて下さい」


護衛の冒険者の人達の指示で馬車を降りたはいいが、こんな街道の真ん中でどうしろと?


盗賊の数が多い、護衛は4人だ。大丈夫かよ?襲われていた馬車の方で爆発が起こった。派手にやっている。


護衛の人達は弱いわけではないが、心配した通り圧されて3人が倒されてしまった。


加勢に行った護衛も直ぐに囲まれ袋叩きの上、地面に転がった。息のあった護衛に止めを刺した大男の盗賊と目があった、仕方がない。


周りは盗賊だけなので遠慮はいらない。


「ライトニング・ウェーブ!」


バリバリと言う音と共に盗賊達は炭になっていく。向こうの馬車も決着がついたのか、こっちの異変に気がついた盗賊達が一斉に俺めがけてやってくる。あ~、めんどくさいな、もう。


「ダーク・ヌークレア!」


やり過ぎた。盗賊は全て消滅したが街道に大きな穴があいてしまった。土魔法で体裁を整えておく。


御者席で背中を丸めて震えている御者にもう大丈夫だと言って、冒険者の遺体を馬車にのせてもらう。その間に襲われていた馬車を見に行く。


乗客は女性が1人、さっきの爆発で気を失った様だ。


「と、盗賊は……?」


生きている護衛がいた。


「全部死にました」

「これ使って下さい」

「すまん」


回復薬で動ける様になった護衛の人と一緒に遺体を馬車にのせ、国境の街バルデンになんとか着いた。


「君はその女性を診療所に連れてってくれ。後でギルドに来てくれ、お礼がしたい」


「分かりました」



ーー


「すいません。この人を診てもらえますか?」

「どれ、そこに寝かせなさい」


「はい、ではお願いします」


「これこれ、どこへ行く。おいて行かれても困るじゃろ」


「えっ、でも」


「えっ、でも、じゃないわい。これだから今の若い者は、最後まで面倒をみんか」


「わ、分かりました」


「どれ。ふむ身体に異常は無いようじゃ。気絶しているだけじゃな。気付け薬をと……」


「ううっ……」

「目を覚ましたな」


「ここは?」

「診療所じゃ」

「何で私が?」


「覚えてないんですか?」

「何を?」

「馬車が盗賊に襲われたでしょ」


「知らない」

「え~、うそ!」


「まあ、待つんじゃ。名前は?」

「名前?……判らない」


「……どうやら記憶喪失のようじゃ」

「記憶喪失?」


「頭を打ったりショックな事があったりすると、なる場合がある。時間が経てば色々と思い出すかもしれん。ちゃんと面倒をみるんじゃぞ」


「えっ、え~」

「えっ、え~、じゃないと言っておろうが」


どうしてこうなった?……う~ん、仕方ない。


「俺はウィル」

「私は……」


「無理しなくていいよ。鑑定の魔法をかけてもいいかな?」


「えっ、……はい」


口に出さず、アプレイズを唱える。師匠に『相手にバレずにかける練習をしろ』と言われているやつは、最低限はものにしている。


名前はフレアだ。


「君の名前はフレアって言うらしい」

「フレアですか、解りました」


「俺は人捜しで、西の端まで行かなくてはならない」


「人捜し?……人捜し、人捜し。私も人捜しをしてた様な……」


「良い傾向じゃな」


「本当ですか?でも俺の行く所は危険だよ」

「あっ、それっだったら自信が有ります」


「確かに、羨ましい位スキルを一杯持ってるね」


「私も連れてって下さい。何か思い出すかもしれません」


「……解った、これも何かの縁なのだろうね」

「ありがとう御座います」

「じゃ、ギルドに行こう」


「これこれ、診察料を忘れておるぞ」


くっ、くそ爺! 睨み付けるが、爺はどこ吹く風だった。


いつも読んでくださりありがとう御座います。


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