拠点
アナサマから魔法陣で転移した所は師匠の居るダンジョンだ。
魔法陣から出て師匠のもとへ向かう。
「その様子では首尾よくいったようだな」
「はい、ありがとう御座います。師匠の読み通りでした」
「父親が必死になっても判らないのだ、生きているのならあそこしかあるまい」
「師匠……」
俺は師匠に聞きたい事を飲み込んだ。
「何だ?」
「いえ、後ろの者達は俺の仲間です。ここに来る事も多くなると思いますのでよろしくお願い致します」
「うむ」
良い返事をもらったので、皆の方を見たら全員が顔をひきつらせて固まっていた。
ーーーー
「先に言っておいてくれないと」
「ウィル様、酷いです」
「生きた心地がしませんでした」
「死んだと思ったぞ」
「ご、ごめん」
「でも、あの御方のお陰でなのですね?」
「そ、そうなんです」
「今度、きちんと感謝の気持ちをお伝えしないといけませんね」
それからダンジョンを出て、エドオリオの街の少し高級な宿に行く。落ち着いた所でアリスとタクトが今までの話をしてくれる事になった。
「私達は隣に行ってるね」
「うん、後で」
それは男色の幼児好きの貴族から始まった。2人を買った貴族は、考えられる凌辱を尽くして飽きると他に売る。その繰り返しの長い年月。
俺だったら絶望して自ら死を選ぶか気が狂うだろうな。奴隷の身では契約で死ねはしないが。
2人がまともな精神でいられたのは、売られる時はいつも一緒にだった事と、2人は気づいてないけど智の神アイメリッサ様の加護を持っているからだと思う。
話を全て聞き終わった後、今まで感じた事の無い激しい怒りが込み上げる。
俺は何を言われてもやられても、落ち込んだり相手を嫌な奴とは思う程度で、そんなに感情的にはならない。まぁ、自業自得な所があるからね。
だけど今回は違う。ガレキーニ伯爵は許せん。なんとしても潰してやる。そして、今更だが父上の言った男爵家再興だ!
大抵の国は12歳になるとスキルや魔法適性を調べる"鑑定の儀"と言う物がある。
当然のこと2人は受けていないので、神殿に行ってお布施を払い受ける事になった。一般民が受けるのかと神官に怪訝な顔をされたが、結構な金を払ったのだ文句は言わせない。
タクトが先に受ける事になった。司祭の前に有る水晶に手を触れると、司祭がもったいを付けて祝詞を唱える。
淡い翠色の光がタクトを包み込む。スキルは虫使い。魔法は火と土属性そして無属性にあたる一般の補助魔法だ。
アリスの番。光輝く色は紫。スキルは"ブレイク"、ブレイクってなんだろう?今度、師匠に聞いてみよう。魔法は水と風の属性だ。
「2人も冒険者の登録もしよう」
「そうですね、私達もウィルの恩に報いるよう、頑張らないと」
「はい、お姉様」
無事冒険者登録も終わった。さあ、ガレキーニ伯爵をぶっ潰す作戦会議だ。
「フレアとは関係ない話しになるけどいい?」
「うん、アナサマでも何も思い出さなかったし、これと言う当てが無いから気長に待つわ」
「解った、ありがとう。ウエリントン子爵……2人の父上を思い止める為にも、先ずはガレキーニ伯爵を何とかしたい」
「簡単では有りませんが、やらなくてはなりません」
「奴の資金源を絶たないと、そして重要なのは俺達が関わっている事を知られてはならない」
と言っても、なかなか良い考えは浮かばない。ヒントになればと思い、ウエリントン子爵が言っていた事を皆に話した。
「バレタ公爵って言うのもガレキーニ伯爵の仲間なんでしょ、いっそ2人を争わせて一編に潰せ無いかしら」
「なるほど」
「それにウィルのお父様みたいに、ガレキーニ伯爵の事をよく思ってない貴族もまだまだいるんじゃない?」
「フ、フレア、鋭いね」
「まあね」
「……言い逃れの出来ない公けの場でガレキーニに罪を犯させれるって言う手も有るな」
「あっ、ウィル様、悪い顔になってますよ」
「良い考えが浮かんだのですね?」
「はい、でも宮廷内の情報が欲しいですね」
どうやって手に入れるか?
ーー
翌日、馬車を用意して王都パレスタ向かう。俺は所払いなので中に入る訳にはいかないが、今となってはどうとでもなる。
「ウィル、王都に行ってどうするの?」
「先ずは家を買って、そこに魔法陣を設置する」
「ああ~、なるほど」
夕方には王都に着いた。
王都に入る前に、師匠に事情を話すと目を一段と紅く光らせながら(師匠は相当に面白がっている)貸してくれた認識阻害の魔道具と偽装用の魔道具を使っておく。
そのお陰で門番が差し出す水晶に触れても引っ掛かる事なく入る事が出来た。
フレアに頼み、商業ギルドで打ち合わせた通りの家を買ってもらう。
「なかなか良いところね」
「素敵です」
「ホントに」
「今までの事を考えると嘘みたいだ」
「地下室も有るし言うこと無しだね」
女性陣は家の掃除を始めたので、俺とタクトは地下室に行く。
「ウィル、こんな日が来るとは思わなかったよ」
「俺もさ」
「必ずガレキーニの奴を倒そう」
「もちろんだ」
魔法陣を造って上に上がると、広間に食事の用意ができていた。
「ウィル様、食事に致しましょう」
「ありがとう、サユリカ」
このみんなが居れば、何でも出来そうな気がする。みてろよ悪党ども。
いつも読んでくださりありがとう御座います。
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