表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/25

プロローグ

 父上が政敵にはめられて、男爵だった父上の廃爵が決まった。この王都パレスタからも所払いで、出て行かなければない。


「あ~、もう勘弁してくれ」


今まで好き勝手に遊んで暮らしていたのに。くそっ!


何だって言うんだ。


父上は出身地のガベラ地方のドゴスの街に戻り、余生を過ごすと言うし、母方の祖父の所ヘ母上と妹は行ってしまった。


「ウィル。皆は私に、お前を甘やかしていると言うがそれは違う、むしろ逆だ。よいか、よく考えるのだ。今まで通り女の尻を追っかけるも良し、御家再興の為に頑張るも良し、まぁ、しっかりやるのだな」


勝手な事を言って、俺に金貨50枚が入った革袋を渡し父上は王都を去った。


王都に居られるのは今日までだ、俺も出て行かなくてはならない。


取り合えず隣街に行く事にして、馬車に乗った。


王都を出るのは初めてだが、景色を観る余裕など無い。これからどうしよう……。


「盗賊だ!」


えっ、何?何が起こった。


馬車が急に止まった。外を見ると御者の1人が胸に矢をうけて街道に転がっていた。


「うっ、不味い」


馬車のドアが開き、俺は盗賊に引きずり下ろされた。


「何をするんだ」

「死ね!」


俺めがけて剣先が迫ってくる。俺はここで死ぬのか?恐怖で身体が動かない。


「グフッ」

「大丈夫かい?兄さん」

「へっ?」


俺を殺そうとした盗賊は倒れていた。俺を助けてくれたのは、馬車の護衛の人だ。


「ありがとう」

「気にしないで、仕事だから」


女の子なのに盗賊をバッタバッタと倒してる。今まで俺が付き合った事のないタイプだ。


「終わった様だな、リリア」

「ええ、片付いたわ」


リリアって、言うんだ。


それから彼女達は、テキパキと後始末を行った。こちらの被害は御者1人だった様だ。


夕方に近くなって、馬車は無事に隣街エドオリオに着いた。


どうするか決めていなかったので、気になるあの女の子の後をさりげなくついていく。彼女達は冒険者ギルドに入って行った。


冒険者ギルド……やっぱり冒険者なんだよね。まてよ……俺も冒険者になるって言うのはどうだ?


また、あの子と会えるかもしれないし、話しだって……仲好くなれるかも?


俺だって魔法学院に、2年間行ってたんだ。剣技だって魔法だって一通り出来る。サボって成績は悪かったけど。


さっきはビビったが、少し練習すれば何とかなる筈……たぶん。


よ、よ~し、やったるぜ!


ギルドの中に入る。


うっ、ガラの悪そうな奴ばっかりだ。あの女の子は見当たらない。やっぱり止めようか……。


「いらっしゃいませ、本日はどの様なご用件でしょう?」


「え、え~と冒険者になりたいのですが」

「登録ですね。料金は銀貨3枚になります」


受付嬢は色々説明してくれたが、怖そうなおっさん達にジロジロ見られるので、生返事してたら登録証をくれた。


「何かご質問は御座いますか?」


「あっ、さっき着いた馬車を護衛してた人達は?」


「あ~、沈黙の旋風の人達ですね、何か?」


「襲われた馬車に俺も乗っていたんで、お礼を言いたくて」


「なるほど、それならいつもの酒場で打ち上げをやっていると思いますよ」


ーー


教えてもらった酒場に来たが、厳つい連中やイケメンの兄ちゃん達が、周りを取り囲んで盛り上がっている。とても近づくのは無理そうだ。


仕方ない、宿を決めよう。


次の日の朝一番で装備を整え、淡い期待をしてギルドに行ったが、お目当てのリリアさんはいなかった。彼女達のパーティーは全員Bクラスだと言う。


俺はFクラスなので相手にしてもらう為に、差を出来るだけ縮めておきたい所だ。先ずは依頼掲示板に直行する。


最初はゴブリン相手でも戸惑ったが、魔法学院で野外での演習もやっているのですぐに慣れた。俺の魔法も捨てたもんじゃない。


しかし考えが甘かった。直ぐにクラスアップするかと思っていたが、然に非ず。Eランクに上がるだけで1ヶ月もかかってしまった。


気を取り直して受付のお姉さんに、もう一度聞いてみたら、Bランクなんて夢のまた夢だった。大体の冒険者が、DランクからCランクに上がる時に壁にぶつかるそうだ。


俺の実力じゃ何年かかるか判らないじゃん。


落ち込む……。


「おい、聞いたか?赤のダンジョンの地下3階から10階までの間でゴブリンが異常発生しているらしいぞ」


「マジか?初心者でもレベルを上げるチャンスだな。俺も直ぐに行って来る」


なんだって?俺も行かなきゃ。


まだそれほど噂は広がっていないのか、そんなに人は居なかった。しかし情報通りゴブリンとは倒したそばから遭遇する。


「うん、効率が良いね。おっ、またいた」


俺が近づくとゴブリンの奴は逃げ出した。そうは行くか、なかなか逃げ足の速い奴だ。


「こら!待て、おっと」


俺はつまずいたので岩壁に手をついた。妙な感覚に襲われる。


地面がない?深く深く沈んで行く。罠に引っかかったに違いない、落ちていく感覚が止まった。


大変な事になったのは解ったが、俺は意外に冷静だった。諦めの極致だったのかもしれない。向こうの方で灯りがユラユラと揺れていたので、行くことにした。


もう、なるようにしかならないのだ。


そこは大きな部屋だった。右の奥に上り階段がある、これを使えば元に戻れるのか?行くしかないけど。


階段に向かう時に目のすみに何かが映った、首を少し曲げて見る。


「リ、リッチ!」


俺は慌てて階段に向かって走リ出す。


「まあ待て。ここは地下70階、最後の階の1つ上だ。お前の実力では直ぐに死んでしまうぞ。私の話を聞いて損は無いと思うが?」


地下70階……やっぱり俺の人生詰んでいたか。


「そ、それはその通りですが、どんな話しでしょう?」


「それはだな……」


思いがけない俺とリッチとの交渉が始まった。


いつも読んでくださりありがとう御座います。


面白いと感じられましたら、下段に有ります評価の☆星やブックマークを付けて貰えると嬉しいです。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ