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木漏れ日の並木道で  作者: 須雄田 脩二
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8.青春の1ページ

体育館の入口から見て反対側の場所。体育館の場所は校舎の奥にあり、その入口の反対側なので、生徒が来る事はほとんどない。

そういう状況もあってか、ここは隠したい事を実行するには格好の場所となっていた。

その場所に男女二人の姿があった。向かい合って立っており、女子生徒から何かを話し始めていた。

「裕野君、話があってここに呼んだんだよね。一体何の用?」

女子生徒の容姿はグレーのブレザーに紺のチェック柄スカート。胸元にある細めのリボンと学校の所属を判別するピンバッジが特徴的である。

「あの、春木さん。えっと、その…。」

男子の制服はグレーのブレザーは同じだが、ズボンはチェック柄ではなく、黒一色だった。

男子生徒は次の言葉を出すのに躊躇しているのか、戸惑いの表情をしていた。女子生徒の方は、その様子を見て少し苛立ち始め、手を組み始めた。

「ここに呼び出したって事は、私に告白しようとしているんでしょ?」

女子生徒の言葉が当たっているのか、驚く男子生徒。

「え?その…はい。春木さんが好きになってしまって。」

「あのさ、裕野君が私を好きになってくれたのは嬉しいけど。私達は挨拶くらいしか交わさないし、それ以上の事を何も知らないよね?それで告白しようっておかしくない?」

「え?あ…。」

「話してみて趣味が合うとか、一緒にいて楽しいとかを感じて、気になる仲になってから進んだりするのが順序だと思うよ。いきなり付き合うとかまず無理な話だからね。」

女子生徒の話す言葉の連続にたじろぐ男子生徒。

「あ、そうですね…。」

男子生徒のなんともいえない反応に、ため息をつく女子生徒。

「そういう事だから、付き合う話はお断り。先ずは知り合いから頑張ってみて。」

「え?」

「こうやって、先ずは話す事が出来たんだから。これから先どうするかは裕野君次第ってこと。」

「そうですね。話す事が出来たのは素直に嬉しいです。」

「じゃ、これからは知り合いってことで。よろしくね。」

女子生徒はウインクをして校舎の方へと駆けていった。

「なんか、春木さんって不思議な人だな。」


同じ時、少し周りを気にしながら体育館の裏側へ歩いていく男子生徒を見かけた女子生徒がいた。

「あれって拓人じゃない?さては、体育館の裏側で何かあるんだな。」

男子生徒より周りを確認しながら女子生徒の体育館の裏側へと向かうことにした。男子生徒が進んだ方向とは別ルートからである。

体育館の裏側をちらっと覗く女子生徒。そこには女子生徒と男子生徒の二人が立っているのが確認できた。

幸い、二人はこちら側を見る方向には立っていなかったので、それには助かったと思う女子生徒。

「あれって春木さんだ、ということは…。」

女子生徒からは二人の会話は聞こえないが、二人の対応を見ていこうと考えた。

「拓人って意外にもやるときはやるんだね。」少しニヤつく女子生徒。

しばらく二人のやり取りを見ていると、話が終わったのか女子生徒がこっちを向いたのに気づいた。

こっちに向かってくる女子生徒の表情を確認したかったが、バレたらマズいと考え、しっかりと前にある生垣の影に隠れた。

女子生徒が校舎の方向へ行った事を確認して、また体育館の裏を見てみるが、男子生徒の姿は消えていた。


「状況はよく分からなかったけど、おそらく完全に失敗ではなさそうと思ったよ。」

そう話す真弘。

「見られていたなんて、全然気づかなかったよ。」

「拓人は春木さんが気になっていたんだね。そんな素振りしてなかったから、気づかなかったよ。」

「気づかれない様にしていたんだから当然でしょ。」

「確かに春木さんは容姿端麗で頭も良かったし、男子のほとんどが注目していたよな。」

「でも、話してみたら意外な一面を見れたんじゃない?」

「ほんと、なかなかズバズバという方だとは思ってなかったよ。」

「それで、お知り合いになってからの進展はあったのでしょうか?」

「まあ、同じクラスにいる内は話せる仲にはなったかな。でも、高校行くとまったく連絡しなくなったよ。」

「なるほど、よくある青春の1ページですね。でも、美空達とはずっと仲良く出来ているのですね。」

拓人は那奈香が美空を呼び捨てで話しているのを聴いて、短期間なのにとても仲が良いんだな、と感じた。

「美空達はもう赤ちゃんの頃からのお付き合いだからね。」

「ほんと、それは腐れ縁って感じ。何でも知り過ぎてるしね。」

「何でも、ね..」少し考える拓人。

「じゃあ今度は俺の恋愛話でも披露しますか!」

「秋彦のやつはパス〜。」

皆の笑い声が星空の下に響いた。


BBQもほとんど食べ終わり、片付けを済ませた5人は縁側に座りながらお酒を飲んでいた。

「拓人は明日の予定はどうなっているの?」真弘が確認してきた。

「今日はいきなり畑仕事したから、明日も手伝いを言われそうな気がする...。」

「それなら予定を入れちゃえば良いんだね。私空いているし、さっそく秘密基地に行ってみる?」

「私も予定ないよ。皆が揃ったら行こうって言っていたし、本当に久しぶりだから良いね♪」

「俺も予定無いから大丈夫だぜ。」

「秘密基地って、あの天文台の事でしたっけ?」

「そうそう、那奈香も行く?」

「そうですね。美空達が育った場所をもっと知りたいかも。」

「じゃあ決定だね!お菓子や遊ぶ物とか用意しておかないとだ。」はしゃぐ真弘。

「なんかすごいな、あっという間に予定が決まった。」

「じゃあ明日に備えて、そろそろお開きにしますか?」

「そうだな、明日もいっぱい話せるしな。よく眠れるぜ。」

ちょうどお酒の瓶も空になったので、片付けて家の入口に行く5人。

「それじゃあ明日もよろしく!楽しもうね。」

「美味しいお肉をごちそうさまでした。お会計まとめはよろしくね。」

「明日は俺が車出すからな〜。」

それぞれ挨拶をして道を歩き始める3人。拓人の家は反対側なので別方向に歩こうとした。

「じゃあまた明日もよろしく。」

「あっ拓人、今からもう少し話せる?」

「え?大丈夫だけど、明日じゃ駄目な事?」

「そうでもないけど、早めに話しておきたいと考えてたから。」

「何か訳ありそうだな、分かった。」

美空は真剣な表情だったので、真面目に対応しようと拓人は考えて中に入りなおした。


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