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木漏れ日の並木道で  作者: 須雄田 脩二
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7.幼馴染集合

「コンロはこれで良いかな、炭も出さないとな。」

拓人は倉庫に入って炭を探すがパッと見る感じでは見当たらなかったので、物を移動させながら探す事にした。

「あっ、これ懐かしい。よく残っていたなぁ。」

拓人が見つけたのは子供達が描かれたキャンバス。油絵の具で描かれているが、外で保存していたのが悪かったのか随分と劣化していた。

「秘密基地で描いたんだよな。でも、どれが自分かが分からないや。」

描かれている人数は5人で、滲んだりしてぼやけており、自身を特定するには難しかった。それぞれが色々な遊具で遊んでいる姿が描かれていた。

「自分の好きな遊具を描いたんだっけ、山の上の滑り台は楽しかったな。」

人物の下に文字が描かれていたような模様があるが、それも判別するには厳しかった。

「秋彦、真弘、美空、それと…誰だったけ?」

男子2人と女子3人が描かれているのは分かるが、女子1人の名前が拓人の記憶からは出てこなかった。

「そもそも、もう一人なんていたっけ?ん~、気になるから美空に聞いてみるか。」

拓人は色々な物を動かして、ようやく炭を見つける事が出来た。庭に戻ると用意した椅子に男性が座っているのが見えた。

「よう拓人、久しぶりだな!」

「秋彦、久しぶり。来たんだったら手伝ってくれよ。」

秋彦は椅子に座っているだけで、何かをしている様子はなかった。

「失礼だな。ちゃんと、着火剤と水を運んできたぞ。というか、ほとんど終わっているだろ。後は美空と真弘が食材を持ってきたらOKだろ?」

「確かにそうだな。じゃあ火をおこしておくか。」

炭をコンロに入れて、着火剤に火を付けて炭に火が燃え移るようにする。火が点いた事で少し暑くなった気がした。

「ようやく帰ってきたか。全然帰ってこないから、俺達の事なんてどうでも良いのかと思ってたぜ。」

「お金も時間も作れなかったし、帰ろうと思っても難しかったんだよ。皆に会いたかったと思う事もあったさ。」

「確かにな、東橋で一人暮らしなんてこっちの倍くらい金がかかるって聞くしな。大丈夫だ、誰も拓人の事は忘れてなんていねぇよ。」

「ありがとよ。よし、火はこれで十分だな。」

炭がパチパチと音をあげて燃えてきたので、網を上に乗せる。

「秋彦も公務員になったんだよな。何をしているんだっけ?」

「インフラ設備や施設設備の管理が主だな。皆の生活を守るって大変だけど、生きがいも感じるぜ。」

「学生の時も学級リーダーとかやったりしていたしな。秋彦にはぴったりの職だな。」

「拓人も似たような仕事しているんだろ?建物の詳細設計をしているとか。」

「そうだな。公共施設も対応していたりするから似ているかもな。」

拓人は少し仕事の事を考えた。

 ==

「裕野さん。この図面なんですが、少し計算が間違っていませんか?この数字だと思います。」

「えっ?えっと…。確かにそうですね、ありがとうございます。」

「裕野さんの間違い、結構多いですよ。もう少し頑張ってほしいです。」

「すみません…。」


「今回の案件はこちらのメンバで対応します。」

「あっ、僕も参加したいです。この件は前からやりたいって考えてました。」

「裕野さんはもう少し簡単な案件で勉強していこうか。図面確認するくらいなら大丈夫だけど。」

「……わかりました。」

 ==


「おい、拓人。何考えてるんだよ?」

考え込んでいてしまっていた拓人に声をかける秋彦。

「えっ?ああ、なんでもないよ。」

「そうは見えないけどな、困った事あったら何でも相談してくれよ。」

「お待たせ~。おっ、火はバッチリ出来上がってるね。」

家の中から美空と真弘、それに那奈香が食材を並べたトレイを運んできた。トレイの上には海鮮や肉がのっている。

「まだ中に食べ物あるから、お二人とも手伝って~。」

「おうさ~。」

「初めまして裕野さん、園島です。よろしくお願いします。」

那奈香が拓人に挨拶をする。那奈香は首辺りまでのストレートヘアでポロシャツに七分丈パンツの服装だった。

「ご丁寧にありがとうございます、裕野です。」

「はいはい、挨拶終わったら食材運ぶよ~。」

皆で食材を運び終える。色とりどりの野菜と海鮮、肉類が綺麗に並べられた。飲み物も用意され、それぞれ好きな物をコップに注ぐ。

「よし、準備おっけーだね。じゃ、拓人から乾杯の挨拶を頂きましょう!」と真弘が言う。

「えっと…、皆集まってくれてありがとう。短い時間しかいられないけど故郷の空気を存分に楽しむよ、乾杯!」

「かんぱーい!」

「いっぱい楽しんでくれたまえ。」

「よっしゃあ!肉焼いていくぜー!」

秋彦が串に刺された肉を網の中央にのせていく。脇には野菜も置いていく。

「海鮮も焼いてよ、ホイルにのせてね。」

「やっぱりBBQは良いなぁ。」

「普段集まる時って居酒屋が多いしね。BBQすると夏って感じが大きい。」

「東橋にいるとバーベキューするのも大変だし、こうやって広々と出来るって良いよな。」

「あー確かに。都会でバーベキューするにしても自然を満喫しながらは難しそうだね、場所も狭いって聞くし。」

「それに余分に費用も発生する事が多いね、場所代や交通費とか。」

「わっ、やっぱり都会ってお金がかかるね。こっちで仕事して正解だったと思う。」

「真弘も公務員をやってるんだよな?」

「そうだよ、地域の皆をサポートするのが私の役目かな。高齢者や保育のサポートしたり、商店との繋がりをもっていたり。」

「まるで何でも屋さんだな。」

「人手不足だからそうなるのも仕方がないんだよ。都会は細かく分担されているよね、羨ましい。」

「対応する量が違うから、なんとも言えないと思うけど。」

「肉焼けたぜー!ほらよ!」秋彦がそれぞれの皿に焼けた肉をのせてくる。

「いただきまーす!うん、最高!」

「星も見えてきたよ、外で食べるって良いね。」

空を見上げると天の川と夏の大三角を中心に星が沢山きらめいていた。都会では先ず見られない景色である。

「綺麗ですね。私、こういう生活がしたいと思ってこちらに引っ越してきたんですよ。」

「那奈香は安芸田でマンション暮らししてたから、ある意味都会人だよね。」

「こちらの皆様には本当によくしてもらっています。」

「海鮮も出来てきたぜ~。」大皿に海鮮がのったホイルを並べる秋彦。

「秋彦ありがと。そういえば中学の時だけど、拓人が告白していたよね~。」

「真弘、どうしてそれを?」拓人がビクッと驚く。

「それは初耳だね。」美空が興味津々に拓人を見てくる。

「だって、現場を見ちゃったからね。あの時は皆忙しかったから広めるのを止めていたけど、今まで忘れてたよ。」

「それで、誰に告白したの?」

「それはね…。」

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