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木漏れ日の並木道で  作者: 須雄田 脩二
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1.故郷へ帰る楽しみ

身体を起こし部屋の窓を開ける。すると太陽の光が射し込み、部屋を照らしてくれる。

眩しい光は新しい出会いや出来事が起こりそうな希望を与えてくれていた。

また不安や迷い、悲しみなどの想いを消し去り、また新しい一歩を踏み出させてくれる、そう感じる光でもあった。


トゥルルルル...

「8番線から快速列車が発車します。」

自動音声によるアナウンスがホーム中に鳴り響く。

「ふぅ…。」

待合室のベンチに座って列車を待っていた。時間はもう少しすると日が変わるくらいだが、外は蒸し暑い。待合室に設置されているエアコンの冷気が気持ちよかった。

夜も遅い時間なのに駅のホームには人が沢山いた。楽しくお喋りしながら待っている女性達、酔いつぶれてぐったりしている男性、参考書みたいな本を読んでいる学生もいて、それぞれの世界で彩られていた。

「久しぶりに帰るからな、皆はまだいたりするのかな。」

結構長い夏休みが用意出来たので故郷に帰る事を決めた。地元の高校を卒業してから大学に行くためすぐに上京したので、もう随分と帰っていない。地元の景色も変わってそうだな、とも思った。

「まもなく、2番線に碧森行きの特急列車が到着します。危険ですので、ホームの内側でお待ちください。」

駅員によるアナウンスの後に続いて列車がホームに入ってきた。長距離列車だが、車両は6両編成。以前は10両編成だったが、高速列車が並走するようになって利用客も減少した結果だ。

これに乗って一夜を過ごせば故郷の賀美照(かみてらす)に着く。高速列車だったら半日程度で到着するが、急いで行く事もなかったので、これを選んだ。

「よし、行くか。」

荷物を持ち待合室を出て、乗り込む人の流れに続いて列車に乗り込んだ。

先ずは予約した座席へと向かう。予約したのは個室で横になってゆったりと眠れるベッドになる仕様の座席。移動で疲れたくはなかったので、少し良い席を購入した。

荷物置きも余裕があり、持ってきた荷物がすっぽり入った。

リクライニング出来る席に座った。少しすると列車は走りだし、窓からは都会の夜が見えた。生活圏から離れていくのは少しワクワクする気分になる。

少し休憩していると仕事終わりで疲れていたので、横になりたい気分になったが、小腹が空いたので食堂車へと行くことにした。


食堂車はテーブルとバーカウンターが用意されていた。テーブルにはテーブルクロスがかけられており、豪華さが出ていた。

車両に入った事に気付いた乗務員が奥から近づいてきた。乗務員は青色のワンピースにエプロンを着ていたので、まるでレストランに入ったかのような錯覚になった。

「いらっしゃいませお客様、只今の時間はドリンクと軽食を提供しております。どうぞ、お好きな席にお座りください。」

乗務員に従い、中央辺りの席に座る。他の客も座っており、アルコールを飲んだりしていた。

乗務員は水が入ったコップとメニューをテーブルの上に置いた。

「ご注文はお決まりでしょうか?」

「あ、いえ。」

メニューを見ていないのに決まっている方がおかしいと思ったが、前もって調べる事も出来るか、と思い改めた。

「かしこまりました、決まりましたらお呼びください。」

メニューを開くと、サンドイッチやナッツやハムの盛り合わせなどの軽食や各種アルコールとソフトドリンク類が記載されていた。

「すみません。」

「はい、如何いたしますか?」

「生ビールとチーズの盛り合わせをお願いします。」

休み前はほぼ毎回と言っていいほどビールを飲む事が多いので、今日も飲む事にした。

「かしこまりました、少々お待ちくださいませ。」

「ここはずっと営業しているのですか?」

「はい、碧森到着の30分前まで乗務員が交代で対応しております。」

「それは、大変そうですね。」

「いえ、お客様が快適にお過ごし頂けるようにおもてなししておりますので大変なんて感じませんよ。」

乗務員はにっこりと微笑んだ。

「なるほど、ありがとうございます。」

「それでは失礼致します。」

外の景色を眺めてみる、食堂車の窓は個室よりも大きかった。住宅が多くなってきたので都心からは離れては行っているが、まだまだ明かりが多かった。

「向こうでは星が綺麗だろうな。あっ、あの場所はまだあるかな...。」

などと到着した時の事を考えていると、乗務員が食事を運んできた。

「ご注文の品になります。どうぞ、楽しいお時間をお過ごしください。」

十分に冷えたビールはとても美味しかった。チーズの盛り合わせもチェダー、カマンベール、リコッタとそれぞれの風味が良い感じで調和されていた。

「良い旅行になりそうだ。」

そう思っていると、少し気分が興奮してくるのを感じていた。

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