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17 一石二鳥の生徒会

「私はとっても嬉しいけど……生徒会に入りたいだなんて、急にどうしたの? 前に誘った時は、いいって言ってたのに」

「うん……ちょっと、春休みの間に色々考えてね」


 始業式が終わり、いつもより少し早めに訪れた放課後、二人は生徒もまばらな廊下を歩きながら生徒会室に向かっていた。


 ――生徒会。


 これが、俺が茉莉亜の医学部推薦合格のために考えた、策のうちの一つだった。

 学校は教師のみが運営しているのではない。()()()と呼ばれる、生徒による生徒のための自治組織があり、それらが生徒たちの代弁者となって学校運営の一助を担っているのだ。


 そして、生徒会に属する彼らは、学校行事等で普通の生徒たちが触れる以上の役割をこなし、学生の枠を超えた様々な貴重な経験をする。その経験は、推薦を目論(もくろ)む俺たちにとって、喉から手が出るほど魅力的だった。


 医学部の推薦では、評定の他に、面接や小論文を課されることが多い。

 生徒会に所属し、そしてその活動の中で得た経験は、普通の高校生である茉莉亜にとって強力な武器になることだろう。もちろん、活動内容次第では評定への加点も期待できる。

 

 ……ふふふ、まさに一石二鳥!

 新学期が始まるまでの間、寝ている茉莉亜の耳元で繰り返し「生徒会」と呟いたり、目の前に生徒会関連のマンガとかを落としたりして気を引いたかいがあった!

 と、俺はまたも二人の間に挟まれたスクールバッグの上に座り、さながら、この学校のオリュンポス十二神がおわす聖域・生徒会室に向かう。


 生徒会の《《旨み》》は、何も茉莉亜だけにあるわけではない。


 元々、俺は当事者になるより、周りで見ている所謂(いわゆる)モブの方が性に合っているし、使える時間は全てギリシャ神話の探究に費やしていたから、生徒会には縁がなかった。

 しかし、茉莉亜経由で関わる口実ができたからには最大限利用させていただく。俺の守護天使としての影響力も確認できたことだし、茉莉亜の医学部推薦だけじゃなく、あわよくば、ギリシャ神話の信者……いや、同士を一人でも増やしてやる……!


 当初の目的だけでなく、(よこしま)な思いを胸にそう息巻いていると、一行(いっこう)はとある部屋の前で立ち止まった。

 そこは教室が並ぶ、グランドなどから最も遠い、奥の校舎の突き当り。いつの間にか周りに生徒もいない、静かな一角にその部屋はあった。


「まあ、基本的に生徒会は常に人手不足だし、茉莉亜ちゃんは一年生の頃から美化委員として活動にも積極的に参加してくれているから、みんな大歓迎だと思うけどね……ここだよ」


 そう言って、ガラッと開けたドアの向こう側は、あまりの眩しさに目を細めてしまうほど光に満ちていた。

 

 これは……さすがは、聖域か……

 思わぬ神々しさにたじろいでいると、光の向こう側からこちらに話しかける声が聞こえてくる。

 

「あ! 美咲、お疲れ様ー! 今年もよろしくねー!」

「副会長、お疲れ様です」

 

 影しか見えないが、部屋の中で、やたらと後光を放つ女性……え? この方が副会長? 副会長って、生徒会のナンバー2ではないですか!

 その地位にこの後光……まさに、オリュンポス十二神でゼウスの妻、ヘラ!


「お疲れ……って、あれ? お友達か?」


 中から、男性の声で、これまた後光を放つ人物が顔を出す。


「あ、会長もいたんですね。お疲れ様です。生徒会に入会希望の子を連れていました」


 会長って……生徒会長! ということは、この御仁(ごじん)が我が高校の最高神、ゼウス……!?


 二人が並び立つと、光が強すぎて何も見えない。

 これほどの後光……一体、生徒会のゼウスとヘラは、どんな方々なんだ……!

 と思ったところで、急速に二人の後光が小さくなっていった。

 

 眩しさも落ち着いたころ、よく目を凝らしたときに視界の隅に入ってきたのは、今日さんざん美咲から放たれていたものだった。

 

 ちょっと待て、もしかして、この後光の正体って……あの、キラキラやんけ!!

 部屋を満たすほどの量って……この夫婦神、一体何やってたんだ!!

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