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その男、メンバーと戯れる

俺はこんなに女に免疫がなかったのか?と疑問に思うほどレイラの仕草一つ一つに顔を赤くさせられていた。


いま本人は気づいてないだろうが、悪女のように裏のありそうな笑顔すらも反応してしまう。


俺はレイラの手を離すと、赤くなった顔を誤魔化すように自分の髪をかき上げた。



「とりあえず俺は今日仕事だから」


「そう、じゃあ私は大人しくお留守番しておくわ」



ニッコリと笑うレイラを見て俺は不安しかなかったが、変に動いてもらっては困ると思い、これだけ伝えておくことにした。



「まぁ、とにかくいろいろと面倒くさいからこの家から出ないで。テレビでも見て、少しはこっちの世界のこと勉強しておいて。頼むから問題は起こすなよ」


「ちょっと、起こすわけないじゃない!子供じゃあるまいし」



そう自信満々に言うレイラに、俺は信用できない思いを隠すことなく顔に出す。

そんな表情を気にすることなく、レイラはふと疑問を抱いた様子で口を開いた。



「ところで、マオの仕事ってなんなの?」


「……秘密」



俺はいろいろと説明が面倒くさかったのでその一言で済ませた。

少し納得のいかない表情のレイラだったがそれ以上は詮索することなく話を終えた。



それから、俺は部屋を出ると下の階へと移動する。

今日はメンバーとのSNS用動画撮影の予定だ。

ちょうど俺の部屋の真下がSNS用の撮影部屋になっていて、そこでいつも撮影を行っていた。


そのそも、このマンションも事務所の意向でメンバー全員が住んでいる。

最上階とその下の合わせて2フロア貸し切っていて、上のフロアに4人、下のフロアに3人とこの撮影部屋が1つという割り当てだ。


俺は自分の部屋のことを心配に思いつつ、撮影部屋のドアを開ける。

すると、もうすでに靴がずらっと並んでいて、他のメンバーは揃っているようだった。

そのままリビングのドアを開けると、俺の隣の部屋に住むハルがそれに気づき1番に声をかけてきた。



「マオ、珍しくギリギリだね」


「ああ。遅くなってごめん」



そういうと俺は撮影用の衣装や小物が置いてある部屋へと向かう。

基本的に身につけるものはマネージャーやスタイリストがあらかじめ用意していて、撮影はそれに着替えてから行うからだ。

スポンサーや広告の兼ね合いもあって、映るものは基本的に小物1つでも計算されているらしい。


俺は用意されていた服にさっと着替えて、再びメンバーの待つリビングへと向かった。



「ごめん、待たせた」


「大丈夫だよ」



ハルはピースサインしてにっこりと笑う。

小柄な彼は人懐っこい性格で、クリッとした瞳とブラウンの髪色が、まるで子犬のように可愛らしい。


そのハルの後ろで椅子に座って携帯を触っている男がリーダーのカグヤだ。

硬派な男で歌やダンスにも妥協しない、その性格を表すように髪の毛も黒くやや短めに整えられている。

そして、このグループの中で最年長の彼はメンバー全員から兄のように慕われている。



「じゃあ、マオも来たことだし撮影始めようか」



カグヤが慣れた手つきで機材を準備する。

今日は比較的ラフな日常動画を撮るだけなので、このようにメンバーだけで適当にやっているのだ。



そして、ある程度動画を撮り終えるとカグヤがカメラを止めて、マネージャーに送るために中のデータを取り出した。


双子のメンバー、ヤマトとミナトが2人でソファーにだらりと横になっている。

ヤマトは黒髪の男らしい雰囲気で、ミナトは少し長めの髪のほんわかした雰囲気の男だ。

彼らは顔のパーツはそっくりな双子だが他は真逆。

でも性格は合っているようで一緒にいることが多かった。



「ねぇ、マオくんって今日何か違う気がする」



ミナトがそういうと、横にいたヤマトも頷くように付け加える。



「俺もそう思ったわ。なんかあったのか?」



この双子はなかなかに鋭い。

俺はあしらうように、あくまで普段通りを貫く。



「いや、別になにもないから」


「……ねぇ、マオマオ?昨日どこに行ってたの?」



そう言ったのは、メンバーの中でも中性的な不思議な雰囲気を放つショーンだ。

性格は社交的で無駄に交友関係も広く、淡いピンク色をした長髪を後ろに束ねている。

顔立ちも少し女性っぽいので、一見見間違えられることも多いらしい。

ただこいつは、ずば抜けて勘がよく、俺は1番警戒していた。



「いや、いつも通り散歩してた」


「そっか!それにしては……少し動揺してたみたいだけど何かあったのかな〜?」



そんなショーンは、わずかな動揺も見逃すことなく、そう言って俺を見てニヤリと笑った。


俺はこれ以上詮索するなと言わんばかりにショーンを真顔で見て、あっちいけというふうに手をシッシッと振る。


メンバー間は仲がいいので気まずい空気にはならず、俺を詰めるショーンが面白くなり、みんなが連鎖するように笑い始めた。


そして、ひと笑いした後、口を開いたのはリーダーのカグヤだった。



「マオ?お前彼女できたのか?」


「いや……違うけど」


「正直に言っていいぞ。事務所のデビュー後3〜4年は恋愛禁止の暗黙のルールだったが、もう過ぎたからな。リュウマだってそうだろ?」


「えっ、俺?まぁ……そうだな」



リュウマが突然話を振られて少し照れ気味に笑う。

この赤い短髪の彼はメンバーで1番男らしく体格もいいが、笑った時は人一倍優しい目つきになり、そのギャップが人気のメンバーだ。



俺たち『Seven Summits』がデビューしてから4年が経ち、これまで事務所に恋愛禁止令を出されていたが、最近それが十分に警戒した上でならという条件で許可がおりたのだ。


そして、メンバーの中でいま唯一彼女がいるのがリュウマである。

そのリュウマは俺の方をみて口を開いた。



「マオの彼女はどんな子なんだ?」


「リュウマ……聞いてたか?彼女なんていねぇよ」



そう否定すれば、みんな少しニヤニヤしながら俺を見つめる。

俺はそんな彼らをスルーしつつ、撮影を終えたので私服へと着替えに行った。


まぁ、彼らは確かになかなかにタチの悪い集団である。

10代の甘酸っぱい青春時代を歌やダンスに費やし、そしてアイドルとしてデビューし、華々しい世界に飛び込んだ。

その代償として皆プライベートが疎かになった者たちばかりなのだから、こういった恋愛に関してはそこら辺のガキと変わらない。


俺はさっさと着替え終えるとまったりくつろいでいる連中に一言声をかけた。



「じゃあ、俺先帰るから」


「マオマオは、彼女とデートかな?」


「はぁ……家に帰るだけだって」



俺はショーンにそう返すと、みんなの生温かい視線を受けながら撮影部屋を後にした。

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