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悪女、甘く愛される

翌朝、目が覚めると何処となく身体が疲れたままで昨夜の余韻を残していた。


私は少し身体を起こして横を見ると、整った顔に少し長めの金髪のマオがまだ眠っていた。

そのさらりとした髪を指先で遊ぶように触れると、ゆっくりと彼の瞼が開き、三白眼気味の目が私を見つける。

そしたら、布団から出てきた彼の手が私の身体をしっかりと抱き寄せ、再び瞼が閉じる。



「レイラ……もう少し寝かせて……」


「ちょっと、今日はお仕事って言ってたでしょ。起きて」



私は彼の頬を指でツンツンとつついた。

するとマオは瞼を擦りながら、眠たい目を無理矢理起こす。

そして、ゆっくりと私を抱きしめて頬に当たる程度の軽いキスをする。



「よかった……実物だ」



そういうと寝起きのマオの顔が更に優しくなり、目が合うと彼は再び口を開いた。



「ずっとこの日を待ってた」



マオは夢じゃないことを確かめるように、再び私を優しく抱きしめた。



「レイラがくれた目覚まし時計だけじゃ足りない。レイラがいなきゃいつも寝覚めが悪くて全く意味がなかった。これからはずっと俺の横で寝て」


「いいわよ。その代わり毎晩夜更かしは禁止よ?」


「ん……それは約束できないかも」



そう言って寝起きで甘えてくるマオの頭を撫でていると私は胸がキュンと締め付けられた。

そして、マオは少しずつ頭が冴えてくると軽く身体を起こし、私の方を見た。



「レイラ、今日の予定は?」


「う〜ん……とりあえず、昨日チケットくれた子にお金を払った後、梨花子さんのところに行く予定よ」


「あっ、昨日の会場にいたのってそういうことだったのか」


「そうそう、たまたま友人が来られなくなったらしくて。とても優しい子だったわ」


「そっか、じゃあ気をつけて」


「えぇ、ありがとう」



そういうと、マオは私の頭をポンポンと撫でて、ベッドから起き上がる。

私もそれに続いてベッドから出ようとするが、足腰に力が入らずカクンとよろめいた。

その姿を見てマオがすかさず駆け寄り、抱き抱えると、過保護のように私の顔を覗き込んだ。



「大丈夫?無理するなよ?」


「……昨日無理させたのは誰よ」



そういうとマオは色っぽく微笑んだ。

私は昨日の出来事を思い出し、少し顔を赤くする。

まるでマオは今まで空いていた時間を埋めるように、私に沢山の愛を囁いた。

ただ、彼の深く重い愛を受け止めた代償は大きかった。

マオは私にこつんと額を当てると、そのまま見つめて口を開く。



「悪かったって」


「もう!本当にそう思ってる?」



反省した様子もなく悪戯っぽく微笑むマオをジロリと睨むと、彼は観念した様子で頭を私の肩に落とした。



「……思ってない。まだ全然足りない、もっと欲しい」



マオの少し甘えるような声にドキッとしてしまう。

それを聞いて、私は抑えきれない気持ちが言葉に出た。



「マオ……大好きよ」



思わぬ言葉にマオが顔を上げて、少し頬を赤くしながら悩ましそうな表情を浮かべてる。



「あーっ!これ以上、朝から誘惑するのやめてくれ。せっかく起きたのにまたベッドに連れ戻りたくなる」


「もう、マオっ!」



そう言って頭を抱えるマオと少し声を荒げた私は、お互い見つめ合うと、自然と笑みが溢れる。

朝の心地よい日差しが部屋に差し込みその様子を暖かく包み込んでいた。




それから、私は昨日チケットを譲ってくれた千秋に会うために準備をしていた。

彼女との待ち合わせ場所はここから近かったので、ギリギリに家を出る。



「じゃあ、マオ。いってきます」



仕事に向かう準備を終えたマオに私は声をかけた。

すると、彼はゆっくりと近づいてきて私を抱きしめる。



「いってらっしゃい」



そういって、マオは激甘な視線を向けると軽くキスをした。

なかなか離そうとしない彼に私は痺れを切らして口を開く。



「ねぇ、マオ?いつまでそうしてるの?そろそろ家を出ようと思ってるんだけど」


「ギリギリまでいてよ」


「……あと少しだけよ」



そういうとマオは少し嬉しそうな笑顔を浮かべて、再び唇にとろけるようなキスをする。

離れたくないような気持ちをぶつけるように、私の頭を手で優しく押さえつける。

クラクラとするようなその甘い時間に私は流されそうになったが、軽くマオの身体を押して現実に引き戻す。

息を整えてから私は口を開いた。



「ダメ……これ以上は止まんなくなっちゃうでしょ。遅刻しちゃう」



私は少し熱帯びた顔で乱れた息を整えながらそういうと、マオは満足そうに私を離した。


そして、私は少し崩れた髪と身だしなみを整え直して、家を出るため玄関に向かう。


バタンとドアを開けると、同時に隣の部屋のドアもガチャリと開いた。



ハルかと思い、ふと横を振り返ると、そこにはなんと千秋がいた。



「えっ……!」


「えぇっ!?」



そういって顔を見合わせていると、何があったのか心配したお互いの部屋の主人が慌てて出てきた。


ハルは私の姿を見て、声を上げる。



「あっ、レイラちゃん!本当に戻ってきてたんだね!」


「ふふっ、ただいま」


「レイラちゃんがいなくなってから、マオはすごく寂しがって大変……」


「おい、ハル」



マオは遮るように短くそういうと、私を後ろから抱きしめた。

そして、それを見ていて千秋は驚いたような声を上げた。



「えっと……これは……?」


「あっ、千秋は知らなかったよね?この子はレイラちゃんって言って、マオの恋人だよ」


「えっ!そうだったの!?……あの時はただの熱狂的なファンかと思ってた」


「あれ?千秋、知り合い?」



そうハルに聞かれて千秋は昨日の出来事を話した。

ハルはその話を聞いて驚きつつも、ふと気になったように口を開いた。



「そうだったんだね!……にしても、レイラちゃん髪の毛バッサリ切ったんだね。マオよく気づいたね」


「……当たり前。どれだけ俺がレイラを待っていたと思ってる」



公に惚気るマオに私は顔を赤くすると、ハルと千秋もそれを見てニヤニヤする。



「あっ、そうそう!紹介してなかったね。マオ、この子俺の彼女で千秋って言うんだ」



そういうと千秋は遠慮がちに頭を下げた。

マオもそれに合わせて人見知りがちに会釈する。



「本当はもう少し早く報告したかったんだけど、そんな事言い出せる雰囲気じゃなかったからね」



ハルはそう言って苦笑いする。

マオがいかに私がいなくなってた間、辛い思いをしていたのかがわかり、私はマオの手を優しく握った。

すると、マオはふわりと微笑み私を見つめる。


ドロドロに甘い2人の空気に、コソッとハルは千秋に耳打ちする。



「凄いでしょ?ステージの上じゃ、あんなにクールなパフォーマンスをするマオがこんなデレデレになるくらい、レイラちゃんにベタ惚れなの」



そして、ハルと千秋は顔を見合わせてニヤニヤと笑った。

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