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悪女、思い出す

私たちは魔力空間から外にでると、まず真っ先にルートが口を開いた。



「あの……我が国のトップにいた人たちがいなくなり、私たちはこれからどうしたらいいんでしようか?」


『とりあえず、彼らが戻ってくるまでは私たちの魔法でコピーした彼らを動かします。そして、最低限の魔力で運営できる構造を作って、手助けさせていただくつもりです』



そういうと妖精女王ソフィアが微笑んだ。

そして、その頼もしそうな彼女の笑顔を見て安心したルークが私の方を見つめる。



「レイラ様は……これからどこに行かれるんですか?」


「う〜ん、とりあえず必要なものも見つけたしここから出ていくわ」



私がそういうと、ルートが跪き私の方を見た。



「レイラ様っ!大変都合がいいことはわかっています。ですが、言わせてください。もう一度私を……レイラ様の騎士にさせていただけないでしょうか」



ルートはしっかりと頭を下げる。

私はそんなルートの顔を上げさせて、ふわりと微笑む。

そして首を振った。



「……私の騎士は、もう永遠に彼だけって決まって人がいるの。だから貴方の希望に応えることはできないわ」



そして、私はマオの顔を思い出して思わず優しい表情になる。

その姿を見てルートは少し顔を赤くし、諦めたように言った。



「レイラ様……私はもっと強くなります。あの日、レイラ様を傷つけてしまったような失敗を繰り返さないために」


「えぇ、ルートならできるわ」



それだけ言うと私はルートを置いてその場を去っていった。

彼は私の姿が見えなくなるまで、忠誠を誓うように跪いていた。




♦︎♦︎♦︎


それから、私は妖精たちと別れてもともといた森へと向かった。



「あれ、黒猫ちゃん?一緒に行かなかったの?」


『まあね、レイラと一緒にいた方が楽しいなと思って』


「そう、じゃあ一緒に行きましょう」



そして、私は黒猫と共に森の奥へと向かった。

そこで私は気になっていたことを黒猫に聞く。



「そういえば、気になってたんだけど貴方の名前ってサミュエルっていうのね」


『まあね、でも別に黒猫のままでもいいよ』


「そう?でも、サミュエルって本に書いてあった世界を巡る妖精と同じ名前ね」


『……レイラ、よく鈍感って言われない?』



黒猫のサミュエルは呆れながらそう言った。

私は色々と察して、はっと息を呑んだ。



「ええっ!あなたって、そんなにすごい妖精だったのね」


『まぁね、それよりレイラの大事なものを思い出さなきゃ!』


「そうだった!さっそく見つけた持ち物を見てみるわ」



そう言って私は持ってきていた赤い鞄を開けた。

さっき見た名前の書いてあったから本、ノート、鉛筆などが出てくる。

そして鞄の奥にあったものを取り出した。



『……写真?』


「えぇ、そうみたい」



私はその写真をじっと見つめた。

それは先生らしき大人と子供たちが並んでいる写真。

どこか懐かしい気がして1人ずつ顔を確認していくと、微笑んでいる自分を見つけた。

そして、私はその中で1人の子に目が止まった。


私の鼓動が早くなり、だんだんと靄のかかっていた記憶が鮮明になっていく。


私は幼い頃に両親を亡くして親戚の家を転々としていたこと。

その度に学校も変わっていたので、人と深く関わることを避けていたこと。

ただこの子だけは違ったこと。


私は再び鞄に手を入れ、奥底にあったものを引っ張り出した。

出てきたのはビニール袋に入った紙切れだった。

それを見て私の胸が締め付けられる。


大事な母からの手紙を目の前で破り捨てられた悲しい記憶。

しかし、それは悲しいものだけではなかった。

紙切れのようにバラバラにされたその手紙を私は拾うのすら諦めたものを、その子……彼は小さな紙を拾い集めてくれた。

そんな優しい記憶。



私はまだもっと大切なものがあると直感的に感じて鞄を探る。

すると、奥に1枚の手紙が入っていた。



『五十嵐 真緒くんへ』



私は自分の拙い字で書かれたその宛名を見て自然と涙を流す。

幼い頃、彼と過ごした日々が鮮明に甦ってくる。

そして、自然と口から言葉が溢れ出した。



「マオ……マオ……っ!」



これは私がマオと最後に会う約束をしていたあの日渡せなかった手紙だった。


そして全ての記憶が蘇る。



『れいらちゃん、大丈夫。泣かないで、ずっと守るから』



そう言ってくれたのは幼い頃のマオだった。


たとえ、彼が覚えていなくてもまた出会えたのだからそれでいい。

本音を言うと思い出して欲しいという気持ちがないわけではないが、あまりにも短かかったその日々は、きっとマオの記憶には残ってないだろう。

だから、これは私だけの大切な美しい思い出としてとっておこう。


そして、マオとのこれからの日々を記憶に残していけばいい。



私の頬を一筋の涙が流れた。

それを指で拭き取り、私はぴょんと飛び込んできた黒猫を抱き抱えて言った。



「ねぇ、黒猫ちゃん。私思い出したわ」


『えっレイラ何か思い出したの?』


「ええ、全部思い出した」



黒猫は私を見つめる。

そして、私は優しい笑みを浮かべて口を開く。



「私の大切にしていたものは……」



あの時私が1番大切に思っていたものーー

それはーー




《初恋》




すると、ふわりと優しい光が私を包み込んだ。

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