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悪女、守られる

私は妖精たちと一致団結して、出口の扉へと向かった。

あの部屋で見つけた私の赤い鞄は、他の妖精たちがふわりと運んでくれている。


そして私は少し期待するようにチラリと妖精女王のソフィアを見た。



「ちょっと聞きたいんだけど、ソフィアさんって妖精女王ですよね?私にかけられているこの世界に拘束する魔法解けたり……?」


『えっと、この変な魔法のことですか?う〜ん、無理ですね』


「ですよね……わかってましたとも……」



私がわざとらしく悲しげにそういうと黒猫が励ますように声をかける。



『レイラ……ほら、元気出して』



黒猫の魔力が私を包み込む。

そして、私の着ていたみすぼらしい服と煌びやかな黒のドレスが入れ変わった。

丈も長くなく、シルエットが綺麗なシンプルなデザインのもので動きやすい。



「黒猫ちゃん、凄いわ!」


『でしょ?部屋で見つけたからレイラに着せてみたんだ!』



私が喜んでいると黒猫も満足そうな表情を浮かべる。

その後ろでソフィアが呟く。



『う〜ん……なんか断罪しに行く側なのに、これじゃあまるで断罪される側の格好みたいですね』



私はピクリと反応して、黒猫を見る。

黒猫は余計なことを言ったソフィアをじっと睨みつけた。



『あっ失礼しました。つい思ったことが口にでてしまって……ちょっと、少し待ってて下さい』



そういうと再び私を光が包み込んだ。

ドレスから黒色が抜けて真っ白の艶のあるものへと変わる。

ついでに髪型も整えられて、靴もそれに合わせて部屋にあった綺麗な物へと変わる。

おそらくこの部屋にあるものなので、ドレスも靴もかなり高価なものに違いない。



『ふふっ、レイラさん聖女みたいで綺麗ですよ』


「すごい!黒猫ちゃんのも良かったけど、こっちも素敵ね!聖女って私にぴったりだわ。さあ……彼らを断罪しにいくわよ」


『ちょっと、レイラ。表情に悪女感出てる!』



黒猫がそう言うと、私とソフィアが吹き出すように笑った。

少し和やかな雰囲気になったあと、しっかりと顔を引き締めるとソフィアが口を開いた。



『ふふっ、彼らにはきちんと自分の罪と向き合ってもらいましょう』



妖精女王らしい凄みのある笑顔を浮かべる。

私は新しいドレスに少し心を弾ませなが、扉を開けて外にいるルートのところへと向かった。



「レイラ様……一体これは?」


「綺麗でしょ?」



私はルートにくるりと回ってドレスを披露する。

ルートは戸惑いながら口を開いた。



「あっ、はい……キレイですけど、それではなく……」



そういうと、後ろから付いてきている妖精たちを見る。



「彼らは、あのバカ息子の親たちに閉じ込められてたの」


「ぶっ、バカ息子……コホン……」



ルートは吹き出した笑いを抑えた。

そして私は話を続ける。



「だから、あのバカ親子のところへ案内して頂戴」


「はい、レイラ様。かしこまりました」



そういうと、ルートを筆頭に私たちは王様とラインハルトのいる所へ向かう。

彼によると、今日は重役を集めて会議をしているらしい。



「レイラさま!もうそろそろです」



そうルートが声をかける。

私たちは移動速度強化の魔法をかけていたのであっという間に目的の場所に着いた。

扉からは盛大な笑い声が漏れて聞こえてくる。


そして、私はその扉をゆっくりと開けた。


すると、その存在に気づいて笑い声が止まり、代わりにざわざわと騒ぎ始める声が広がる。


中央にいた王様とその息子ラインハルトも私の存在を認識すると、本当少しだけ口角を上げニヤリと笑う。



「静粛に!ただちにあの者をとらえよ!」



ラインハルトがそういうと、私を捕えようと部屋にいた騎士たちが寄ってくる。

すると横からルートが私の前に出てきて、騎士たちを威嚇するように剣を抜いた。


ルートがこうして出てくるのは予想外だったようで、ラインハルトは動揺する。



「おい!ルート、どういうことかわかっているのか?」


「はい、もちろんです」



ルートの真剣な眼差しに少し怖気付くラインハルトを見て、私は口を開いた。



「さぁ、貴方達も入ってきて」



そういうと今度は妖精たちを中に引き入れた。

そして、それに気づいた王様が声を上げる。



「なっ!なぜ、こいつらを……っ!」


「あら?王様は記憶力がいいようね。さぁて、どうする?みんな?」



私がそう言うと、妖精たちは怒りのこもった眼差しで王様を見た。

彼は分が悪いと瞬時に理解したようでジリジリと逃げる準備をする。

そして、王様と共に妖精たちを攫った者たちは恐怖を感じて慌てて部屋から出ようとした。



それを見て、ソフィアが口を開いた。



『あの時は不意打ちに魔力を封じられる道具を使われて捕まってしまいましたが、今回はそうはさせませんよ?』



そう呟くと、この空間を全て彼女の魔力で包み込んだ。

すると、そこは出口もなければ物一つない無の空間になった。


王様が怒りを込めて口を開いた。



「お前たちみたいな人間になり損なった奴らが小賢しいことを……」



王様の暴言に妖精たちも騒ぎ始める。


そして、その横でラインハルトは私の方にジリジリと近づいてきた。



「今なら許してやるから、早く俺たちを元の場所に戻すように奴らに言え。そうだ、そしたら処刑せずに俺の愛人として城においてやろう」


「……は?何言ってるの?」


「俺は、お前みたいに外見だけ良くて誰にでも色目を使うような女を迎え入れてやろうと言ってるんだ。なんとも寛大な提案だろ?」


「ぷっ……あはははははっ!」



私は至って真剣にそういうラインハルトを見て、込み上げてくる笑いを抑えきれずに声を出した。

その様子を彼は怪訝そうに見る。



「ふふっ、ごめんなさいね。あいにく、下手クソの愛人になるほど困ってないの」


「おい、お前何を言ってる」


「だって、あまりにも自信に満ちた表情で言うんだもの。教えてあげないと可哀想でしょ?私もそんなこと全く興味なかったけど、()()()が教えてくれたの」


「アイコ……だと?」



顔を赤くして怒りを露わにするラインハルトを軽くかわすように、私は再び口を開く。



「ええそうよ。それと、私の名誉のためにもう一度言わせてもらうけどあのときの問題の写真はアイコが作ったものよ。本人から聞いたわ」


「ふん!話せない彼女がそんなこと言うわけないだろ。まだそんな嘘をつくのか!」


「嘘なんかじゃないわ。まぁ、信じないならそれでいいけど。あ、それと彼女、こんなことも言ってたわよ?貴方が赤ちゃんみたいに甘えてくるのはゾッとしたってね。下手クソな上にそんなんだから逃げられたんじゃない?」



そう言って私が優しく微笑むと、ラインハルトは心当たりがあるようで目を見開いた。

そして何も言えずに怒りに震えながら黙り込んでいた。


今度は私は王様を見て、口を開いた。



「貴方たち、本当に似たもの親子ね。同盟を結びに行って上手くいかないから攫ってくるなんて論外だわ。というより、もっと頭を使いなさいよ。あっ、それともその頭は王冠を飾るためだけのただの台座かしら?」


「貴様……っ!」



そういうと王様も怒りに震え始める。

あっ、まずい煽りすぎたと思った頃には時すでに遅く、2人が私の方に避けられないような速さで強力な魔法を放った。

ルークも間に合わない位置にいて、それでも切羽詰まったような表情で駆け寄ってくるのが目に入った。

私は魔力を全て使い尽くしていたので、死を覚悟して目を瞑る。


あ……終わった。


しかしその瞬間、どうせ死ぬならマオに会ってから死にたかったなとふと思った。

すると、死への覚悟が揺らぎ、無意識に生きたいという欲が生まれた。


そのとき、私の薬指につけていた指輪の宝石が光りはじめた。

そしてその光は私を覆うと、先ほどの魔法を跳ね返した。



「えっ……これは?」



私が驚いていると、妖精女王ソフィアが口を開く。



『レイラさんのつけていた指輪の宝石のおかげですね。たぶんさっき手を治療した時に私の魔力がたまたま、その宝石に込められて魔宝石になったんだと思います。それで自然と貴方の気持ちに反応して防御できたんでしょう』



私は薬指につけていた指輪をチラリと見る。

指輪についているオレンジっぽいピンク色の宝石がきらりと光った。

ソフィアは再び口を開いた。



『私も防御しようとしましたが、そちらの指輪の方が先でしたね。ふふふっ』



私は指輪を見てマオのことを思い出し、ボソリと呟いた。



「こんなに離れていても、貴方は私を守ってくれるのね……」



そう言って私はそっと指輪に口付けた。

そして、ソフィアが王様とラインハルトを見て言った。



『貴方たちがもう少し自立できるように手助けしてあげましようか?』


「なにっ!魔力を分けてくれるのか?」



そう目を輝かせて見る王様に呆れたようにソフィアが言い放つ。



『違いますよ?魔力が枯渇してきているのであれば、使わない生活をすれば良いだけなのです。だから、他の国……いやいっそ他の世界で学んで来てはどうですか?貴方方がレイラさんたちをこの世界に縛りつけたように、ちゃんと学べるまで別の世界に縛り付けてあげますよ?』



そう和かに話すソフィアを王様は睨みつけた。

そして、ラインハルトは鼻で笑うように言った。



「ふん!そんな簡単に別の世界になんてできるわけないだろ」


『ん?彼ならできますよ?私たちの中で唯一世界を行き来することができる存在……』



そういって、ソフィアは黒猫の方を見ると話を続けた。



『サミュエル。さぁ、彼らを異世界へ転移させなさい』


『え〜……めんどくさ。まあ転移させるだけならそこまで大変じゃないからいいけどさ』



黒猫がそういうと、王様とラインハルトは顔色を変えて懇願する。



「な……なんでもする!だから、私たちを元のところに戻してくれ」


『へぇ、なんでもするんですか?』


「ああ、何が欲しい?金か?権力か?」



2人はすがるように、妖精女王ソフィアを見た。



『ぷっ……ずいぶんと都合がいいんですね?貴方、私たちを閉じ込めたときなんて言ったと思いますか?』


「そんなの覚えて……」


『じゃあ、教えてあげます』



そういうと、ソフィアは妖艶に微笑んだ。



『今の主導権は俺にあることを忘れるな……そっくりそのまま返しますね』



ソフィアのその発言聞いて、この魔力空間の中に叫び声や泣き喚く声、そして私に彼らを説得するように頼み込む声が響く。

その雑音を聞いて、私は低い声で呟いた。



「私が……私が……そうやって、嘘だと訴えた時には誰も信じてくれなかった。そんな私が貴方達に何かしてあげると思う?」



私はにっこりと微笑み、再び口を開く。



「それと、貴方達は魔力に頼りすぎよ。他の世界の人々まで巻き込んで……。魔力が足りなければ、頭を使いなさい。少なくとも私のいた世界は魔力がなくとも、ここよりも発展していたから。たくさん学んで来るといいわ」



私がそう言い終えると、黒猫はソフィアの指示で彼らを異世界へ転移させた。


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