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その男、嫉妬する

メンバーが帰った後、再び2人っきりの時間になる。

部屋には先ほどの賑やかな時間の余韻が残っていて、レイラの表情も明るい。


俺はそんなレイラを抱きしめると、先ほどのモヤモヤとした気持ちをぶつける。



「ねぇ、レイラ……他の男見ないで……嫉妬でどうかなりそうだった」


「ふふっ、なにそれ?マオだけしか見ちゃダメってこと?」



俺が黙って頷くと、レイラは笑いながら少し背伸びして俺の頭を撫でる。



「よしよし、私の騎士は独占欲が強いのね」



俺はそう改めて言われて恥ずかしくなり、黙ってレイラの肩に頭を置く。

レイラはそんな俺を少し宥めてから、身体を離すと準備していた鞄に手をかける。



「今日はこれからバイトなの。たくさん稼がないとね」


「……この家から出て行くために?」


「まぁそれもあるけど」



レイラがそう言って玄関に向かおうとすると、俺はそれを止めるように彼女の腕を掴んだ。



「出て行かないでよ」


「えっでも……仕事の都合上、一緒に住むのは大変だって」


「そんなの俺がどうにかする」



俺はレイラの腕を掴んだまま真剣に見つめると、彼女は甘えるように口を開く。



「じゃあ、ずっと私の専属の騎士でいてくれるってこと?」



俺はそんな彼女が可愛くて、腕を引きそのまま抱き寄せた。

そして、自然と甘い笑みが溢れる。



「もちろん、離すつもりもないし。ずっと守るよ」



そういうと、レイラの顔がほんのりと赤く染まり、それを隠すように俺の身体に頭を寄せた。



「……ありがとう」



そんな辛うじて聞こえる程度の彼女の小さな声を聞いて、思わず抱きしめる力が強くなる。

すると、レイラが俺の腕からすり抜けた。



「まぁ、それでもたくさん稼がないといけないから」



そう言ってレイラは笑いながら再びリビングのドアへと向かった。

なぜそこまで彼女が稼がないといけないのかわからなかった俺は、それを尋ねる。

すると彼女は持っていた鞄から見覚えのあるぬいぐるみを取り出した。



「推しに貢がないといけないからね」



そういって、俺のキャラクターぬいぐるみをフリフリと横に振ると、レイラは可愛らしく微笑んだ。

俺は抑えきれずに再びレイラを抱きしめた。

強く抱きしめると壊れてしまいそうな華奢な身体と、ふわりと香るレイラのどことなく甘い香りが俺の気持ちを更に高める。



「ねぇ、その推しが目の前にいるんだけど何か言うことない?」


「……なんて言って欲しいの?」



悪女のように微笑みながら俺を試す、レイラの振る舞いにペースを乱されつつも、俺は観念したように彼女の耳元で囁いた。



「ーー好きって言って」



すると、レイラの耳が可愛らしく赤く染まる。

抱きしめたまま俺がねだるように見つめると、頬を少し赤くしたレイラがツンとした表情を浮かべる。

そして、少し背伸びして俺の耳元に顔を寄せた。



「ーーマオ、大好きよ」



それの破壊力は抜群だった。

俺は一瞬で全てを彼女に支配されたような感覚に陥る。

照れながら微笑むレイラの顔が愛おしく、俺は本能的に彼女の唇を奪いたくなり顔を近づけた。

すると、少し強い力でレイラの手が俺の顔を遮る。



「……ダメよ?もうバイト行かなきゃ」


「絶対行かなきゃダメ?」



俺はダメ元で言ってみる。

するとレイラは笑いながら俺をかわし、玄関に向かって歩いていった。


仕方ないと諦め、レイラを玄関まで見送る。

そして、レイラが靴を履いてドアに手をかけると、3分の1くらい開いたところで振り返った。



「あっ、忘れてたわ。マオ少しこっちに寄って?」



俺は何事かと思い、レイラの方に顔を近づける。

すると、頬に柔らかいものが触れた。

不意に起こったできごとに俺の意識が飛びかかる。

俺はレイラにキスされたところを手で覆った。


レイラは余裕のある笑みを浮かべ、悪女のように俺をかき乱す。



「お利口さんにお留守番しててね」



そういって、ヒラヒラと手を振り何事もなかったかのようにサッと部屋を出て行った。

残された俺は玄関の壁に寄りかかる。


頬がいつもよりも熱く、頭の中は彼女の声や仕草でいっぱいになる。

考えれば考えるほど夢中にさせられ、それは自力では這い上がれない深い沼に落とされたような感覚だった。


そして今なら飼い主の帰りを待つペットの気持ちがよくわかる。


俺は1秒でも早く彼女に会える方法を考えていた。


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