その男、追う
『いえいく』
誰かと送り間違えたのか、レイラからよくわからないメッセージが俺のところに来た。
意味はわからなかったが、ちゃんと理解しないといけないような気がして俺はそれに返信を返さずに考え込む。
するとふと、この前レイラからショーンの家の香りがしたことを思い出した。
もしかしたらレイラはショーンとそういう関係なのかもしれないとその時は落ち込んでいたが、何となく今は嫌な予感がして俺はショーンの部屋に向かった。
「あっ、マオマオ?どうしたの?」
ショーンがいつも通りの様子で出迎える。
しかし、俺が携帯を取り出して先ほどのレイラのメッセージを見せると、ガラリと表情を変えた。
「マオマオ、緊急事態かも。実はーー……」
そういうと、ショーンはレイラと一緒に渋川愛子を探って俺の記事が嘘だと証明する作戦を立てていたことを話した。
ショーンも俺のことを思ってしてくれていることを頭ではわかっていたが、大事なレイラに危ないことをさせているということで頭に血が上って、ショーンの胸ぐらを掴んだ。
「何でそんなに危ないことさせてんだよ!何で……」
「マオマオ……ごめん」
そう言われて俺は少し冷静になり、ショーンから手を離して口を開いた。
「とにかく、レイラを助けに行く」
「今日はマネージャーの高橋さんが撮影部屋にいると思う。とりあえず車を出してもらおう」
ショーンがそういうと、俺は急いで自分の部屋に戻り一瞬でマスクと帽子を手にすると走って撮影部屋へと向かった。
中には予想通りマネージャーの高橋がいて、俺たちの様子を見て緊急事態だと察し、すぐに行動を起こした。
それから、俺たちはレイラのいるであろう渋川愛子の部屋へと向かった。
彼女のマンションは俺たちの住んでいるところから車で移動すると割とすぐ近くだった。
その間にショーンが電話で渋川愛子と同じ事務所で一緒のマンションに住んでいる知り合いに電話をかけていた。
なかなか繋がらないので車内に不穏な空気が流れたが、マンションの前に着いた時ちょうど電話が繋がった。
幸いにもその知り合いは部屋にいたようで、オートロックを開けてくれ、難なく中に入ることができた。
そして、俺たちはその人から教えて貰った渋川愛子の部屋のある階へと向かう。
「ショーン、部屋の鍵とかどうする?さすがにドアは壊せないよな……」
「う〜ん……」
そうこうしているうちに、渋川愛子の部屋のあるフロアに着くとガタイの良い男が立っていた。
「あっ、田中さん!お久しぶりです」
ショーンがその人物に気づくと頭を下げて、俺にこそっと話しかけた。
「マオマオ、さっきオートロックを開けてくれた俺の知り合いだよ」
俺はその人が誰だか気づいて驚いた。
なぜなら、その人物は渋川愛子の事務所の社長だったからだ。
「マオくん、先日の記事の件はすまなかった。事務所としても全く把握していない記事で、こちらとしても事実確認しないと動けなくてね。否定することもできなかったんだ」
「いえ……今日はいろいろ協力していただいてありがとうございます」
俺がそう返すと田中社長は気にしないでくれと言った様子で首を振る。
俺はなんとなくだが、ショーンがしようとしていたことがわかってきた。
おそらくレイラに事実確認に動いてもらい、この社長にあとは任せるつもりだったのだと。
それにしても無駄に広いショーンの交友関係に驚かされる。
田中社長も渋川愛子の部屋の合鍵を管理しているわけではなかったのでどうしようかと思いながら、渋川愛子の部屋の前に来ると、ドアに見覚えのある猫の尻尾のようなものが挟まっているのが目に入った。
俺はすぐにそこにレイラがいるとわかり小さく声を出す。
「レイラ……っ!」
そんな俺を見て静かにとショーンが合図する。
俺は冷静さを取り戻し、ゆっくりと気づかれないようにドアを開けた。
そして、ショーンと田中社長はレイラがドアを閉まらないようにしていたことに感心しながら静かに中に入っていった。
すると中から女の声が聞こえてきた。
「……ーーまずはアンタから殺す」
ただならぬものを感じ、俺たちは一斉にその声がする方へ向かった。
俺はレイラを失うなんて考えられない。
彼女だけが信じていてくれるなら嘘なんてどうだっていい。
どうか無事であってくれ。
そう思いながらリビングのドアを開けた。




