コミカライズ記念SS:ジェラルドの決意
幼いころから知っているうえに、息子の婚約者だったニコレッタと夫婦になるということに、嫌悪感を抱く者はいるだろう。
状況が状況だったとしても、そこに落ち着く前に色々やれたのでないか。
そもそも、以前から気付いていたくせに、手を打たなかったのはなぜだ。
王太子としての教育が不足していたのでは?
フェルモたちをわざわざ皆の前で断罪した意味は?
頭の中にぐるぐると嫌な考えが巡る。
隣で穏やかに眠るニコレッタ。
シルクのような手触りの髪に指を通し、その流れで頬を撫でる。
擽ったそうにもぞりと身を捩ったので起こしてしまったかと焦ったが、すぅすぅと静かな寝息を立てていた。
――――可愛い。
分かっている。
今回のことは、私のエゴであり、失態だ。
ニコレッタは自分が求めたからだと、罪を全て被ろうとする。
だから、ともに犯した罪なのだと、折半案を出した。
本当は私一人のせいだというのに。
ニコレッタは真面目すぎる。
ケネス……ほどまではならなくていいが、適当に息抜きをさせたい。
だから、ニコレッタをどれだけでも甘やかそうと思っている。
ニコレッタが両親から得られなかった分も含め、愛し甘やかし蕩けさせたい。
「あの、陛下っ……」
「二人きりのときはジェラルドと」
「っ……じ、ジェラルド……さ、ま」
ニコレッタを抱きしめたままで目覚める朝とは、酷く多幸感の溢れるもので、ついつい額や頬や鼻の頭になんどもキスをしてしまう。
顔を真っ赤にして私の名を呼ぶニコレッタがあまりにも可愛すぎて、ギチギチに抱きしめてしまった。
「あのっ……そろそろ起きませんと」
「ん、そうだな」
もうちょっと時間はあるのだが、これ以上のイチャイチャは諸々問題が出るので諦めた。
支度を終え、朝食をともに済ませたら、各々の仕事に向かう。
「陛下、月一回のお祈りくらいやってくれないと、流石に女神様がいじけるんだが?」
「私は信じていない」
「あぁもぉ……煩いんですよぉ」
「私には聞こえん」
月初めに女神像に向かって祈るという謎の公務があるが、基本的にはサボるに限る。
まぁ、教皇が苦情を言いにくるが、ただの暇つぶしだろう。
それにしても、二時間も何を祈れというんだ。その間に国政に手を付けた方が国のためになるだろうが。
「朝イチで見かけたときはオーラはピンク色だったのになぁ。もう金色で眩しくて目が死にそう……」
「独り言がデカいぞ? ニコレッタのオーラは?」
どうせニコレッタのオーラを見たついでに、私のオーラも見たんだろう。
「悲しみの曇りはあるが、ほぼ透明だよ。安心していいよ」
「……別に、心配はしてない」
「素直じゃないねぇ」
「用が済んだのなら教会に帰れ」
教皇がはいはーいと軽く返事をして執務室を出て行った。
正直、教皇が毎日何をやっているのかは謎だ。
女神教会は、国とは別形態で運営されているので、国王であっても不用意に口出し出来ない…………が、まぁあの教皇ならそういう壁を軽々と取り払ってはくれるのできにいってはいる。
「陛下、ニコレッタ様が訪室されましたが」
「ん? もう昼か」
食事はできる限りともに摂ることにしている。
最近は、昼時になるとニコレッタが迎えに来てくれるようになった。
「待たせたな。行こう」
「はい! 今日はサーモンのアクアパッツァだそうです」
「フッ。その声色は、好きなんだな?」
「っ…………バレてしまいました」
ある程度の好きな物は把握しているが、日常に潜む細かな好みを発見するのが楽しくて仕方ない。
こういう指摘をすると、ニコレッタは照れくさそうに少し俯く。そうすると項が顕になり――――と、いかん。思考が危ないヤツになっていた。
ちなみに、ニコレッタを甘やかすためだと言いつつ、自分が一番満たされているのは見て見ないふりをしている。





