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それぞれの物語②

 



 ●●●●●side:とある教育係の最期




 まずい。まずいまずいまずいまずいまずすぎる。


 レオパルディ公爵から推薦されて王太子殿下の教育係の一人になれた。恐ろしいほどの王城からの報酬と、公爵家からの秘密裏の報酬。ありえないほどに美味しい仕事だと思っていた。




 王太子教育係の筆頭は昔から王城で働いていたというガヴァネス。正直言って教育内容は老害以外の何ものでもなかった。

 

 俺は男性としての所作教育担当だったから、教育内容はかなり自由にさせてもらえていたが、歴史や帝王学などの国営に関わる教育はかなり偏っていた。正直、ヘドが出るほどに。


 国王はあれには教育されていないらしい。

 本人が相性が悪いと謂れのない理由で拒否し、国王自身で無能な教育係を見つけてきたからだそうだ。筆頭曰くだが。


 なのに王太子はその老害に教育させているのか?

 どうやら王太子が老害のことが好きで望んで教育を受けているらしい。まあ、老害は外面はいいからな。

 王太子、その判断能力で本当に大丈夫か?




 ――――どこだここ。


 ふと目覚めると、窓もない地下にいた。イスに座らされ、後ろ手で縛られて。王太子の教育係が横一列に並んでいる。


「目覚めたか」

「こく、おう――――」


 目の前にいたのは、処刑執行官と国王。

 

「フェルモがどうしてもというから我慢していたが――――」

「陛下! わたくしをこのような扱いをするとはっ! 先王がお嘆きですよ!」


 このババァやべぇ。国王の言葉を遮るとか。正気か?


「ならば地獄で会ってこい」


 ゴトリと首が落ちた。

 そういえば今日……かは分からないが、多分今日は、公爵の処刑日だったな。なるほど、俺たちはその陰で死ぬのか――――。




 ●●●●●side:とある侍女の英断




 真夜中の陛下の私室に、ニコレッタ様が訪れられたが、どうしたら良いのか判断が付かない、と夜勤の侍女から報告を受けました。

 慌てて侍女服を着て陛下の部屋の前に向かいます。

 なぜ、王太子殿下との結婚前夜に? なぜ? それだけしか頭に浮かびません。こんなに混乱したのは初めてです。


「ニコレッタ様、お待たせいたしました」

「リア。ごめんなさいね。陛下を起こしてちょうだい。ケーナ、走って行ってくれたのね、ありがとう」


 ニコレッタ様はほとんどの侍女の名前を覚えていらっしゃいます。まさか夜勤のみの侍女まで覚えられているとは思ってもみませんでした。

 

「ニコレッタ様、理由をお伺いしても?」

「っ……陛下にしか話しません」


 いつも笑顔を崩されないニコレッタ様が、一瞬泣きそうなお顔になられました。

 稀に、陛下の寝室に忍び込もうとされるご令嬢や侍女がいます。正直、ニコレッタ様がどちらかという判断は付きません。

 

「…………すぐに起こして参ります」

「ありがとう、ごめんね」

「大丈夫ですよ。少々お待ち下さいね」


 ニコレッタ様が泣きそうだ、それだけで私は『陛下を起こすべきだ』と判断しました。




「陛下、陛下!」

「んあ? リアか? 眠い……ちょっとしか寝てない気がする……」

「二時間ほど前に就寝されたようです」

「…………何も聞かん。寝る」


 睡眠時間だけは削らないが信条の陛下ですが、これだけはお伝えしなければなりません。


「ニコレッタ様が訪れられています。今にも泣きそうです」

「――――すぐに部屋に入れろ。ガウン!」

「はい」


 このあとどんな事が起ころうとも、私一人の責任としましょう。

 騎士はどうしようもありませんが、侍女たちは全て下がらせました。




 ●●●●●side:ラッセルの即断




 使用人たちから時々寄せられる報告。レオパルディ公爵家の内情を探ろうとする輩がいるということ。

 メリダ様を後妻として受け入れた辺りから、かなり多くなっていたがスキャンダルを報じたい大衆紙のものだろうと思っていた。


「執事殿、少しお伺いしたい――――」


 屋敷にフィガロモ伯爵が訪れた。

 今日はニコレッタ様の結婚式ではあるものの私は屋敷にいるように頼まれていた。何か良くないことが起こっている気がする。


 フィガロモ伯爵は、メリダ様の出自を聞きたいという。ニコレッタ様を助けるためだと。

 

「伯爵、ひとつだけ、お伺いしても?」

「答えられることならば」

「ニコレッタ様は現在どなたと一緒に?」

「………………国王陛下だ」


 全てを理解しました。

 ニコレッタ様が動かれた。

 では、私は指示通りに動くだけですな。


「承知しました。マルタ」

「――――はい」


 マルタと二人、今までに掴んでいる情報を出す時です。ニコレッタ様にお伝えするにはあまりにも酷すぎる情報も。


 ――――さぁ、反撃の時です。


 


 ●●●●●side:ケネス




 甥っ子兼弟兼国王でもあるジェラルドが、自分の息子の婚約者兼ジジイたちのアイドルでもあるニコレッタ嬢を手籠めにした。


 ――――何をとち狂ってんだ?


 確かにニコレッタ嬢の年齢はどっち付かずだ。

 親父のせいでフェルモが生まれる前から婚約者とされていたし、当時ジェラルドは既に婚約していたし、結婚式も決まってはいた。どうしようもなかったのはわかるが。

 

 ――――今、このタイミングでヤるか?


 早朝から元老院全員呼び出して何を言うかと思ったら、議題はコレ。


「煩い。あと違う」


 何が違うのかと聞いたら、まさかのフェルモとあの乳ゆさゆさ娘がヤったから、自分たちもヤったと。


「もうちょとまろやかに言ってくれ」


 ジェラルドは机に頭を打ち付けて恥じらいを誤魔化しているし、ニコレッタ嬢は両手で顔を覆い隠していた。

 二人とも耳が真っ赤だ。ピュアか。




 まぁまぁに酷い仕事を投げ付けられたが、収穫も多かった。

 レオパルディ公爵家のシルクは、製造から運営まで恐ろしいほどに謎のヴェールに包まれている。紐解くチャンスだな。

 

「ニコレッタ嬢こえぇぇ」


 いやほんと、怖い。

 あの娘、まだ二十代だよな。いくら後半とはいえ、経営能力が恐ろしい。求心力も恐ろしい。


『ニコレッタ嬢を連れてこないと絶対に話さない、見せない、教えない』


 どこに行っても、コレ。


 ――――何なの?


 どういう経営方法と指示なんだよ。どんだけ信頼されてんだよ。

 誰も公爵の名前は出さねぇし。お前ら公爵家の所属だろうが!


 ほんとニコレッタ嬢、こわぁぁぁぁぁい!

 



 ●●●●●side:とある少年




 お祖父様が宰相になった。

 あれ? 俺たち影はどうなるの?

 影は継続? 良かった。俺、これ以外の仕事とか出来なさそうだったし。

 

「あ。見つけた」


 ニコレッタ王妃に見つかってしまった。お祖父様が潜んでいそうな場所を教えたらしい。何やってんのあの人! 潜伏情報とか俺らの命と同等だろっ!


「いつも息子を見守ってくれてありがとうね」

「はひっ。あ、いえ、任務ですので」


 微笑みかけられて、声が裏返った。

 近い。あと良い匂いすぎる。


「伯爵にね、許可もらったんだけど――――」


 良くわからないが、王子殿下付きの護衛ということになった。表と裏と両方担当らしい。仕事量エグくない? でも、お祖父様を見ていると表も楽しそうだし、まぁいいか。




 ●●●●●side:とある王のぼやき



 息子を出産してからというもの、ニコレッタのジジイ吸引力がもの凄い。

 全ジジイを魅了する魔法でも発動させているのか?


「おかぁさま、まほーつかい?」

「あぁ。ちょっと本気でそう思っているんだが、お前はどう思う?」

「わかんないです」


 三歳児には難しい問題だったらしい。


「ジェラルド様!? 子どもに何を吹き込んでいるのですか!」


 ――――しまった、バレた。


 身重なのに走って来ようとしている。

 慌てて駆け寄り、抱きとめた。


「ニコレッタが可愛いと教えこんでいたんだよ」

「絶対に嘘です!」


 頬を膨らませていじけている。本当に可愛いな。

 ニコレッタの頬に手を添えると、そっと目蓋を閉じて上向きになってくれる。

 乱したい衝動に駆られながら、柔らかく唇を重ねるだけにとどめた。


 ――――流石に、子供の前では、な?




最後までお付き合い、ありがとうございました!

また何かの作品でお会いできれば幸いです。



沢山のブクマや評価、本当にありがとうございます!

何度何度もランキングに押しあげていただきましたヽ(=´▽`=)ノ


下の方に、他作品のリンクあります☆

気になられた方はじぇひ!

ではまた(ΦωΦ)ノシ


 笛路

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― 新着の感想 ―
[良い点] いるよね年上の男ホイホイ女子ー! 子供産んでもほわほわなの。わかるわかる。 ケネス様いいですねぇ好き過ぎる。マニアなファンはダースでいるんだろうな~。各所で初恋泥棒してるのでは。 でも多分…
[一言] 捕縛されて連行されただけでざまぁになるとトチ狂った作者が多い中、しっかり断罪まで書ききり刑を執行しているのがとても良かったです。 また乳揺れ娘も、薬を盛りまくってパーにした王子に頭を割られる…
[良い点] 完結おめでとうございます。 教育係はやはり罪深いよね。あの馬鹿王子を育てたんだから [気になる点] やっぱりもう少し王様は馬鹿王子を叱るぐらいはしなきゃダメだったな。 効果なくともやったの…
2023/09/06 21:43 退会済み
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