表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

44/61

44:面会

 



 陛下の執務室に戻り事の顛末を報告しました。

 急いで侍医にも伝え、解毒法を探ってもらうことに。

 フェルモ様の意識や精神が戻ることが、フェルモ様自身にとって良いことかは分かりませんが、陛下は少なからず自分が招いたことなのだと理解させたいとのことでした。


「酷い、と思うか?」

「いいえ」


 そんな事を思うはずがありません。

 フェルモ様は確かに迂闊でした。何故食べたの、とは責められませんが。

 フェルモ様の年齢と性格を考えれば分かります。きっと私の『妹』だから。きっと私の『家族』だから。安全なんだと判断してしまっていたのだと思います。

 周囲にいた侍女や騎士が止めるべきだったことでもあります。


「ん……ありがとう」


 力なく笑われる陛下を抱きしめたくなりましたが、侍女や騎士がいるのでぐっと我慢です。

 指示書を陛下から受け取り、侍医のところに行ってきますと挨拶して執務室を出ました。




 陛下からの指示書を侍医に渡しつつ得た情報を話すと、少し難しい顔をされました。

 どうやら長期戦になるようです。


「昨晩よりフェルモ様がお会いになりたいとしきりに仰っていますが、どうされますか?」 

 

 騎士は数名配置するし、希望があれば拘束衣も着せる、との事でした。騎士はお願いしたいです。でも拘束衣は大丈夫だと断りました。

 安全面などでの問題はあるのかもしれませんが、拘束衣を着せられた人は果たして落ち着いて話ができるか、という疑問がありました。


 侍医に案内され隔離棟のフェルモ様の部屋に行きました。

 ドアには仰々しい鍵が付けられていました。室内はとにかく物が排除されており、ベッド以外何もないがらんどうとした部屋でした。窓は狭く鉄格子で覆われランプ等もないため、まだ日中だというのにとても薄暗いです。


「基本はベッドや床に座ってただ揺れているだけなのですが、急に癇癪を起こされて物を投げられるので、危険な物を撤去した結果こうなってしまいました」

「食事は?」

「その際だけテーブルを運び込み、ベッドに座って食べていただいています」

「そうなのね。ご苦労さま」


 鍵を開けてもらい、ノックをして室内に入ると、部屋の隅で膝を抱えて床に蹲っていたフェルモ様がガバリと起き上がりました。


「ニコレッタニコレッタニコレッタニコレッタニコレッタ」


 私の名前を叫びながら走って来ます。騎士様が素早く動きフェルモ様を押さえ込もうとしましたが、大丈夫だと伝えて好きにさせることにしました。

 フェルモ様がぎゅっと抱きついてきます。

 多少ゾワリとはしたものの、その感情は横に置くことにしました。


「ニコレッタ、ここどこ? ニコレッタ、どこいってたの!?」

「フェルモ様、そんなに泣いてどうされましたか?」

「あのねっ――――」


 フェルモ様は幼児退行という症状を起こされているようで、とにかく幼い子供のような言動が殆どのようでした。

 自分が何故ここにいるのか、何故知らない人たちに囲まれているのか、何故私や陛下がいないのか。


「とうさま、おこってるの?」

「……」


 どう伝えたら良いのでしょうか。ここで嘘を吐いて『大丈夫、怒ってませんよ』と言ったところで、なにか解決するのでしょうか?

 

「ニコレッタ?」

「フェルモ様。……陛下はフェルモ様がここで心を強く持って、ゆっくりと自分に向き合ってほしいとお考えです」


 今のフェルモ様には理解が難しいでしょう。


「一人で心細いかもしれません。わけが分からず暴れたくなるかもしれません。ですが、堪えて堪えて、堪えてください。堪え続けた先に何かが見えるかもしれません」

「…………よくわかんない」

「ですよね。でも覚えていてくださいね。フェルモ様、また来ます」

「っ…………ぅん」


 フェルモ様からスッと離れると、フェルモ様は寂しそうなお顔で右手を伸ばしましたが、コクンと頷いて手を下げました。体の横でズボンをぎゅっと握りしめています。


 ――――あぁ、幼い頃の癖だわ。


 今後、フェルモ様がどのような扱いになっていくのか、私には分かりません。陛下も何も言われないので、決めあぐねているのかもしれません。

 陛下がどのような決断をされようと、私は受け入れようと思っています。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

◇◆◇ 4/10発売決定! ◇◆◇


魔王様の餌付けに成功しました ~魔界の定食屋で悪役令嬢が魔族の胃袋を掴みます~
書籍表紙


表紙&挿絵は『犬月煙』先生っ!
もうねもうね、表紙の2人もだけど、フォン・ダン・ショコラがめちゃくちゃかわいいの! 早く見てほしいっ。

※書籍化に伴い、タイトル・内容・キャラクターなど、大きく変更しております。

♣ ネトコン12受賞 ♣
双葉社Mノベルスf様より、紙&電子で発売です。
笛路初の紙の本んんんんっ!ぜひぜひ、お手元に迎えていただけると幸いです。

既にページのあるサイトもありましたので、一例としてリンクボタンを置いておきます。


▷▶▷ 双葉社

▷▶▷ amazon

▷▶▷ BOOK☆WALKER

▷▶▷ シーモア(準備中)

― 新着の感想 ―
[一言] フェルモ(இωஇ`。)自分のケツは自分で拭かないとね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ