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28/61

28:こんな予定では。




 ●●●●●side:メリダ




 ――――こんな予定じゃなかった。


 公爵家で侍女をやっていた。自分で言うのもなんだけど、真面目だったと思うのよね。元々、子爵の娘だったし。

 せっかく公爵のお手付きになったのに、夫人が時代にそぐわないとかなんとか()()して、私を追い出した。

 紹介状もなく、実家にも見限られて、隣国に流れて、盗賊のお頭に見初められて――――。


 暴力を振るわれるのに疲れた。子供ができない身体だからって好き放題されるのに疲れた。盗賊たちの慰み物になるのに疲れた。

 だから、密告してやったのよ。


 なんでこの子を連れてきたんだったっけ? あ、そうだったわ。自分となんとなく似てたからだわ。何かに使える気がするのよね。




 あちこちで春を売って、国境を越えようとしたのに、盗賊の残党に見つかってボロボロにされて、どうにか入国の役人を丸め込んで国境を越えた。

 

 公爵家は相変わらず潤ってて、贅沢ばかりで、平和そう。

 公爵様が私たちの姿を見て慌ててた。心配してくれた。ずっと私を探していて下さったらしいわ。隣国まで手を伸ばしてなかったと謝って下さった。

 夫人に見つかったら面倒なことになるからと別荘を与えてくれた。

 私の実家より大きな別荘。でも、公爵家より小さい。




 公爵様がなかなか来てくださらないから、お屋敷にこっそり逢いに行きました。慌てふためくけれども、愛を囁いて優しく扱ってくださるの。


 公爵様は、潔癖過ぎる夫人にずっと嫌気が差してたそう。だから私のほうがいいらしいのよね――――。


「公爵夫人に、なろうかしら?」

「なにそれ、なれたらなんかいいことあるの?」


 この子の口調も直さなきゃね。貴族になるんだから。


「ええ。一生、これ以上の贅沢ができて、愛され続けるのよ? 素晴らしいじゃない?」

「ふぅん? いいね!」

 



 公爵家に通う道中にいくつか危険な場所があるから、気をつけなければいけないと馭者が速度を落としながら言っていました。


 ――――ふぅん?


 良いことを思いつきました。

 公爵様に新しい未来のお話をしました。公爵様は大賛成。

 雪の降る夜、夫人を別荘に呼び出して、夫人のせいで歩む羽目になった半生の話をし、公爵とニコレッタに暗殺者を仕向けたと脅し、手の者に道中に仕掛けをさせる。


 ――――あぁ、なんて簡単なのかしら?


 私は公爵夫人になれて、ヴィオラは王太子を手懐けて、完璧な人生になると思っていたのに。

 殺人罪? 何よそれ。そんなもの、日常茶飯事の些細な出来事でしょ? だって盗賊たちは毎日のように人々を襲ってたのに、私が密告するまで誰も捕まえなかったじゃない。役人が面倒そうに『金になりそうだし、まぁやるか』って言ってたもの。


 こんな予定じゃなかった。

 なぜ私が斬首されないといけないのよ!?




 ●●●●●side:公爵




 妻が邪魔だった。

 娘が王太子妃になって、いつか王妃になろうとも、私が生きている間に甘い汁が吸えるとは思えない。

 これだけ金があるのに無駄遣いをするなという。私が築いた財産なのにだ。


 爵位継承は娘が出来るようにしている。その娘が王太子妃になってしまえば、私の爵位は弟の息子へと行く。あの、頭の悪いボンクラに。

 これは私の金だぞ?

 なんとしても娘に継がせなければならないのに。


 さっさと娘に継がせて、のんびりとした老後を過ごしたい。

 あの娘は()()()()頭がいい。一度教えればすぐに理解し、すぐにモノにする。事業のことは幼い頃から叩き込んでいる。

 王太子殿下との契約が破棄されれば一番いいのだが…………。




 舞い込んできた幸運。

 子供ができないという便利だった侍女のメリダが、なぜか子連れで戻ってきた。聞けば自分に似ていたからなんとなく連れ回しているという。

 妻にバレると面倒だ。取り敢えず別荘で囲うことにした。久しぶりに発散できる。


 ――――そう思っていたのに。


 事業は忙しいのに娘は王城に取られっぱなし。妻は何かに気付いているのか、妙に監視が厳しい。

 そんな中、メリダが屋敷に来る。やめろ、バレたら面倒だ。全く、ひとつも思い通りにならない。邪魔者だらけだ。




 ある日、メリダが素晴らしい提案をしてきた。

 メリダが妻になり、連れてきたヴィオラを養子にし、ヴィオラと王太子を結婚させる? 王太子にヴィオラを選ばせれば、我が家の損失はない?


 ――――完璧じゃないか。


 契約違反で訴求出来ることはあるが、ニコレッタはしないだろう。王太子のために身を引くだろう。

 あとはニコレッタにベッタリの王太子だが……食べると()()()()()()()()という菓子を、ヴィオラに持たせて少しずつ王太子に食べさせるよう仕向ければいい。

 メリダが隣国でよく使っていたと持ってきてくれた。本当に便利な菓子だ。

 

 本当に、完璧な計画だった。

 ヴィオラは見事に王太子を陥落させ、結婚式当日にはなったものの、花嫁のすげ替えという奇跡を起こしてくれた。

 ニコレッタも納得していると聞いていた。


 なのに。


 斬首?


 こんなのは、聞いていない。

 なぜ私が犯罪者にならねばならぬ。

 私は、何もしていないのに。




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― 新着の感想 ―
[一言] なんというか……
[良い点] 王子、薬物か……哀れな
[一言] 王子はただの馬鹿じゃなくてクスリ盛られてたから馬鹿になってた?
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