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27:聞いてない!

 



 ●●●●●side:ヴィオラ




 ――――こんなの聞いてない!

 

 殴られながら下働きをしていた盗賊のアジトから、盗賊のお頭の女が連れ出してくれた。

 盗賊は明日の夜に討伐されるから、と。どうやら女が手引したらしい。

 その女が「隣のギルヴァに行くよ!」と言い出した。お金がないからと、稼ぎながら旅して、国境を越えた。


 物凄く立派な家に行ったら、うだつの上がらなそうなオッサンから山奥の別荘ってとこに連れてかれて、驚くほど豪華な暮らしが出来るようになった。

 でも女はそれじゃ満足しなかった。

 自分を『お母様』と呼べと言い出した。娘のふりをして、オッサンと家族のふりをして、もっともっと贅沢をするんだって。


 女は『お母様』、オッサンは『お父様』、私は『ヴィオラ』。

 オッサンには妻がいて、それが『お母様』には邪魔なんだと言う。オッサンの妻を別荘に呼び出して、『お母様』と親子の振りをして、オッサンの妻を脅した。

 馬車での帰り道、死ぬように細工したんだと、嘲笑ってた。


 それからすぐに、オッサン――『お父様』の屋敷で暮らせるようになった。でもそこにはニコレッタ――『お義姉様』がいた。ニコレッタは、王子様の婚約者なんだって。

 オッサンは婚約を解消したいけど、自分からそれをすると、家の金が減るんだと言っていた。だから、アタシが王子様をオトして結婚したら良いんだって。


 ――――簡単じゃん。


 『お母様』の真似すればいいだけでしょ?

 ほらね? 簡単。

 キラキラ光ってる王子様は、何でも言うことを聞いてくれた。いっぱいいっぱいいっぱい甘やかしてくれた。

 ニコレッタとは婚約してるけど、可愛いとか好きとか思えないって。私はとっても可愛くて好きなんだって。

 なんだ、ニコレッタ嫌われてんじゃん。コレ、私がもらっていいよね?




 ――――ほらね、簡単じゃん。


 なかなかチャンスなくてギリギリになっちゃったけど、フェルモ様の部屋に侵入して、押し倒されるよう仕向けて、「君が一番だ。愛してる」って言ってもらった。完璧じゃん?


 なのに。


 なんで?


 こんなことになるなんて、聞いてない。

 私は、ふわふわ、愛されて、贅沢して、楽しく生きれるって聞いてたのにっ!




 ●●●●●side:フェルモ




 ――――こんなの、聞いてない。




 父上は厳しいし、ニコレッタも厳しい。毎日毎日勉強ばっかり。


 ニコレッタの妹――ヴィオラは私のことを「格好良い」、「頼りがいがある」、「男らしくて好き」だと言ってくれる。

 ニコレッタと結婚しなきゃだけど、それまでは遊んでもいいよね?

 教育係は昔の王族は妾妃がいたり、愛人を囲ってたって言ってた。お祖父様も何人かいたんだって。

 父上には妾妃はいないんだって。

 何でか聞いたら、死んだお母様に心酔してて、臣下の意見を聞かないんだって。


 ――――父上が変なんだ?


 王族はいっぱい子供がいたほうがいいけど、ニコレッタは年齢的に何人も産めるはずがないって教育係が言ってた。だから私は妾妃や側妃を作る必要があるんだって。

 二つの違いがわからないけど、気にしなくていいらしい。

 ヴィオラがおすすめだって言われた。ヴィオラなら好きだし、妾妃にしてあげよ。でも、女の人は『妾妃』って言葉は嫌いだから、『妃にしてあげる』って言えば良いんだって。




 ――――凄かった。


 ヴィオラに誘われて、ベッドに入って、裸になって。

 閨教育で聞いてたのより、凄かった。


 ヴィオラを喜ばせたから、たぶんニコレッタも喜ぶよね?

 明日が本番だし、練習できて良かったや。失敗したらまたニコレッタに怒られちゃうから。

 ニコレッタは怒ってないって言うけど、『どうやったら出来るようになるか』とかそんなのばっかりずっと言ってくるから、怒られてるのと一緒にしか思えないんだよね……。

 ヴィオラと裸で抱き合ってたら、急にニコレッタが部屋に入ってきた。


「…………なるほど」


 まずいまずいまずいまずい、顔がいつもの怒るときの顔!


「ちちちちがうんだ、ニコレッタ! こ、これは……!」

「殿下。きちんと責任を取って、義妹と結婚してさしあげてくださいませね?」

「え?」


 あれ? いいの? 怒ると思ったのに。

 教育係の言ってたことは本当だったんだね。やっぱり妾妃は必要なんだよね。ニコレッタ、いままでヴィオラのこと苦手そうだったから嫌なのかなぁって思ってたけど、諦めてくれたのかな?


 あれ? でも、ヴィオラと結婚していいってことは?

 ニコレッタは私と結婚しないのかな?

 それともニコレッタが妾妃になるの?


「……ニコレッタはどうするの?」

「私ですか? そんなの決まってるじゃない」


 ニコレッタが見たこともないような晴れやかな笑顔で部屋を出ていった。

 追いかけたほうがいいかなぁ?


「フェルモさまぁ、続き、しましょ?」

「っ、うん!」




 何でこんなことになってるんだろう?

 廃太子って、物凄い犯罪を犯したときにされるやつだよね?

 隔離棟にヴィオラと二人きりで幽閉されるんだって。ヴィオラがずっとキーキーってお猿さんみたいに叫んでる。


 煩いなぁ。面倒くさいなぁ。視界の邪魔だなぁ。


 こんなことになるなんて、聞いてないよ?




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― 新着の感想 ―
[一言] 心が育っていなかったお2人
[一言] まあ、王太子はまだまだ子供というか考えが足りない。教育係のせいもあるけどね。教育がかりはしっかり選ばなきゃね。側近はどうなんだろう。似たような感じかもなあ、止められたりいさめられたりしてなさ…
[一言] フェルモくん、庶民に生まれてたとしても仕事出来なさそうだし、脳足りんだし、普通に善良なお嬢さんと結婚させたらあかんタイプやんけ。教育でどうにかできるレベルやないやん。生まれ付き足りてない子や…
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