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24:終焉、第三幕

 



 伸ばされた国王陛下の手。

 そこに自身の左手を重ね、横に立ちました。


「ニコレッタ・レオパルディ公爵令嬢を我が妃とする。結婚式はまた別日に執り行うが、婚約式は内々で既に終えている」


 元老院の方々との会議の際に、婚約の誓約書は既に作り終えています。陛下と私のサインの横に教皇様がサインをしてくださり、確かな効力を持った誓約書となっています。


 ワッと歓声が上がり、教会内に盛大な拍手が響き渡ります。

 まさかこのような状態で、今までの関係性も知られている状態で祝っていただけるとは思ってもいませんでした。

 これはひとえに、陛下がいままで国民のことをしっかりと想い、国王としての責務を全うし続けていた結果だと私は思います。


「そして、先程の我が妃に向かっての暴言だが、今はまだ婚約者であるのでな……どうする? ニコレッタ」

「そうですね。自分でケジメをつけたいと思っております」

「ん」


 陛下がふわりと微笑まれました。

 私は割と見慣れているのですが、参列者の面々はあまり見る機会がなかったのだと思います。ざわりとどよめきが起こりました。


「ヴィオラ。貴女は私を『アバズレ』と呼んだけれど、貴女が昨日してたことってなぁに?」

「っ――――」

「私の婚約者だった王太子殿下と同衾していたわよね? 事後よね? どの口が『アバズレ』と言うのかしら? 特大のブーメランじゃなくて?」


 ――――まぁ、人のことは言えませんけどね?


 そこはほら、きっと知らないでしょうから。

 

「元々ね、貴女が王太子妃の座を狙っていたのは分かっていたの。というか分からない人などいなかったとは思うけどね」


 クスクスと嘲笑が聞こえます。気にせず続けましょう。


「流石に自分の家を潰すような行為はしないと思っていたんだけど。私、貴女を過大に評価しすぎたみたい」

「はあ?」

「あら? どの部分が分からなかったかしら? まさか……『自分の家を潰す』が分からなかったわけないわよね? ね……ねえ? ちょっと、答えてちょうだいよ。私、久しぶりに不安を感じているわ………」


 義妹が不機嫌そうな顔で舌打ちしました。


「まぁ! 舌打ち! なんて野蛮なのかしら?」

「アンタ、そういう本性だったんだ? キモッ。殿下が私を愛してる、抱きたい、って言ってヤッたんだから、私が王太子妃でしょ!? お父様もお母様もよくやったって喜んでたし!」

「「……」」


 絶望的です。絶望的に頭がお花畑です。

 いくら幼い頃に淑女教育を受けていなかったとはいえ、義妹が公爵家に来て五年もの年月が経っています。普通、どうにかなりますよね? 実子の認定はされていなくとも、私と大差なく――というか私より手厚く扱われていましたし。


 各季節のドレス、靴、毛皮のコート、宝石類、ナンデモカンデモ買い与えてもらっていました。

 我が公爵家が取り仕切っているシルクについては何も学ばず、教育係の教師が気に入らないと何人もクビにしていました。

 その度に紹介者や教師本人に謝罪に向かい、再就職先などのフォローをし続けたのは私です。


 お父様にどれだけ訴えても、ふわりふわり聞こえの良いことを言いながら消えるだけ。

 あぁ、思い出しただけでイライラとしてしまいます。

 深呼吸をし、落ち着きましょう。

 

「王太子殿下……あぁ、もう殿下ではありませんでしたね」


 フェルモ様と私の婚約は当時の国王陛下と教皇様の承認を経て、婚約証明が貴族院より発行されています。

 誰がどう苦情や嫌味を言おうが、決定事項で覆すことなど出来ません。当人たちにのっぴきらない理由が発生した場合のみ考慮がされます。

 そう、今回のような時ですね。


「だから、私と殿下が結婚できるんでしょ!?」

「……あ、うん。出来るわね。いま出来ているものね」

「「ブフッ……」」


 この笑い声は絶対に陛下とケネス様です。

 義妹の頭のデキがあまりにも凄すぎて、笑われてしまいました。


「契約書に組み込まれてるのよね。『婚約者以外との婚前交渉をした場合、契約違反とし身分の剥奪を要求できる』『またそれに関わった者も同罪とする』と。つまり、フェルモ様とヴィオラ、お父様とお義母様の四人の身分の剥奪を、私が望んだのよね」


 ――――これで理解できたかしら?




……ブーメランある世界よね、たぶん!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ブフッw ブーメラン………ないんじゃないかな!!w ざまぁの展開で続きがかなり気になるところですが、 作者様のコメントに、大ウケしたのでコメりましたw 楽しみに続きを読んできますε=٩…
[一言] 感情論で勝てるわけない
[一言] ブーメランは弓より前に使われてたらしいのであったでしょうね。でも、弓で廃れた歴史もあるらしいから、実物は知らないけど、諺みたいに伝わってる可能性があるかも?
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