表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/61

23:終焉、第二幕

 



 ボソボソと呟かれている陛下とケネス様の会話から推測するに、教皇様のご機嫌がナナメになると、女神様の像から女神様の神力が漏れ出すようでした。

 今まで私は一度も見たことが無かったですし、女神様からの返信で光るというのも今日知ったばかりです。

 私の愛し子の精神を乱すなこんちくしょうが!とか言ってるんだよ、とケネス様が解説してくださったのですが……その口調で合っているんでしょうか?


「どうすんのかね。人前で光らせちゃって」


 参列者の方々からざわめきが聞こえ始めました。それはそうでしょう、女神様の像が輝くなど、誰もが聞いたことがありませんから。


「おやおや、おやおやおや…………進行がズレてしまいましたねぇ。折角、誓いのキスに合わせて光らせようと思っていたのに」


 教皇様が残念そうに仰り、パンパンと手を叩きました。


「はいはい、鎮まりなさい。全くもう」

「「ブフッ」」


 両隣から吹き出す声。陛下もケネス様も正面を向かれて真顔のままなのですが、絶対にこの二人が吹き出しましたよね?

 チラリと視線を向けますが完全に無視です。酷いです。


「ほら、ちゃちゃっとキスして、ピカピカがそろそろ終わりますよー」

「っ、何なのよもぉっ! フェルモ様! 早くっ!」


 義妹がズタンと右足で地団駄を踏んでいました。地団駄など、貴族であれば幼子でもなかなかしない気がするのですが……まぁ、あの義妹なので、するんでしょうね。


 フェルモ様が泣きそうな顔で、義妹に無言でツンとキスしていました。

 義妹はあんな感じの誓いのキスで良いのでしょうか? 物凄く晴れやかな顔をしていますが。どこかに幸せでも見出したのでしょうか?

 不思議でたまりません。




「ふぅ。さて、晴れて二人は夫婦になったな」


 陛下がずっと瞑り続けていた目蓋を押し上げると、スッと立ち上がり祭壇の方へと歩いて行かれました。

 少しざわついていた内陣がシンと静まり、陛下の足音のみがカツーンと響きます。


「急な知らせにも関わらず、本日はよくこの式典に参加してくれた」


 陛下がスッと右手を顔の横に上げると、壁際に控えていた騎士たちが素早く動き出し、フェルモ様、義妹、お父様、義母を拘束すると、内陣側を向かせ祭壇の前に跪かせました。

 四人仲良く横並び。表情は三者三様。とにかく義母の視線が凄いです。


 陛下が四人の前に立ち、参列者たちに声をかけ続けます。

 

「知らせていた通り、今日、王族メンバーが大きく変わる」


 陛下がゆったりと歩き、王太子殿下の横に立つと、ポンと頭の上に手を乗せました。この瞬間の王太子殿下の表情は本当に哀れなものでした。

 唇の中央を引き上げ顎に皺を寄せ、今にも泣きそうな顔から、『パァァァ』っと聞こえてきそうな程に希望に満ちた口元になっていました。そんな奇跡的な展開など、そうそうあるはずもないのに。

 

「王太子であるフェルモは、この時点を以て廃嫡とする」

「っ! ちちう――――」

「お前に発言の許可は出していない」

「「……」」


 陛下のその一言で、一瞬騒がしくなりだした場がまた静かになりました。


「次に王太子妃ヴィオラ。この娘も()王太子と同じ扱いとし、この時を以て平民とする」

「なっ、何なのよこの茶番は! こんな馬鹿なことあってたまるものですか! ニコレッタ! これ、アンタの差し金でしょ!? このアバズレ年増っ!」


 義妹の耳障りな甲高い叫び声。

 それを誰も止めなかった。

 そして陛下はニヤリと笑って私に向かって右手を差し出してきました。掌を上に向けて。

 つまり、陛下のいる場所に来いということ。隣に立てということ。


 想定内。

 絶対に義妹なら叫び倒して罵倒してくれると思っていました。

 陛下が会議の場で、全力で叩きのめし存在感を知らしめろ。自由に羽ばたけ。と言ってくださいました。

 

 ふるり。

 全身が震えます。

 これは高揚からくるもの。

 ここからが、私の戦場です―――――。

 

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

◇◆◇ 4/10発売決定! ◇◆◇


魔王様の餌付けに成功しました ~魔界の定食屋で悪役令嬢が魔族の胃袋を掴みます~
書籍表紙


表紙&挿絵は『犬月煙』先生っ!
もうねもうね、表紙の2人もだけど、フォン・ダン・ショコラがめちゃくちゃかわいいの! 早く見てほしいっ。

※書籍化に伴い、タイトル・内容・キャラクターなど、大きく変更しております。

♣ ネトコン12受賞 ♣
双葉社Mノベルスf様より、紙&電子で発売です。
笛路初の紙の本んんんんっ!ぜひぜひ、お手元に迎えていただけると幸いです。

既にページのあるサイトもありましたので、一例としてリンクボタンを置いておきます。


▷▶▷ 双葉社

▷▶▷ amazon

▷▶▷ BOOK☆WALKER

▷▶▷ シーモア(準備中)

― 新着の感想 ―
[一言] お手並み拝見ヽ(´▽`)/
[気になる点] 読み飛ばしている箇所があるのかもしれませんが、婚約者以外と関係を持ったから身分剥奪を要求できるならそれこそ王子側からも同じ要求が出来ますよね。 バレてなきゃ大丈夫っていう事なんでしょう…
[良い点] 良いところで!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ