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15:新たな情報。

 



 教皇様の私室のトイレからまた地下室に戻りました。

 

「さて、少し時間が余ったな。一度部屋に戻ろうか」

「はい」


 私たちが教皇様を訪れている間、ケネス様たちが各国の方々に報告し、移動を開始していました。

 三〇台の馬車が移動したと聞き、我が家の騒動のせいでどれだけの人にご迷惑をお掛けしているのだろうかと考えてしまいます。

 陛下は、三〇台と言ってもひとつの国が二、三台を使用している、そこまで大人数ではない。と言われました。

 ちょっとだけ、感覚が違うのね……と思ってしまいました。


「だが、公爵家で夜会を開催する場合はそのくらいの馬車が来ていただろう」

「それはそうですが……その国内の貴族と各国の王族の方や使者を同じようには考えられません」

「ハハハ! まぁ、そうか。大丈夫だ、慣れる!」


 慣れ、なのですね。

 屈託のない笑顔で笑い声をあげている国王陛下を見ていると、なんだか大丈夫なような気がしてきました。

 



 国王陛下の私室で少し休憩を取ることになり、ソファに並んで座り、二人きりでお茶をいただいていました。


 初め、陛下との間は一人分ほど空けていたはずなのですが、ふと気付いたらいつの間にか半人分になっており、気のせいかな?などと考えているうちに、陛下との距離がなくなっていました。

 しかも、ピッタリとくっついて、腰に手を回され、くびれというか横腹の部分を撫でられているような?


「あの、この距離では、お茶が少し飲みづらくは――――」

『ご歓談のところ失礼いたします。陛下、早急に報告したいことが』 

「ひきゃっ!?」


 二人きりだったはずの部屋に、若い男性の声がどこからか響いて来ました。びっくりしすぎて、変な声が出てしまいました。


「っ、くっ! ん、出てこい」


 陛下が肩を震わせながら笑いを我慢しつつ、声の持ち主に出てくるよう命令していました。どこにいるのでしょうか?

 きょろきょろとしていた一瞬のうちに、目の前に十代であろう黒髪の男の子が立っていました。


「話せ」

「ハッ。祖父より報告です。現レオパルディ公爵夫人ですが、解雇され身を隠していた間に住んでいたのは、隣国ボナンノを拠点としている盗賊のアジトだったようです」

「ほう? その盗賊は?」

「九年ほど前に討伐されています」

「ふむ……で?」


 義母とみられる女性は、幼い娘と二人で隣国ボナンノの街を点々としていたようです。そして七年前にこの国に入国していたとのこと。その際の身分の証明にレオパルディ公爵家の名を出していたそうです。


 結局は、ボロボロの衣服や不衛生さが目立ったため、我が公爵家には連絡はしなかったとのこと。そして、その時の入国担当官がその女性から春を買い、こっそりと入国させてやった、とのことでした。


「入国担当官」

「捕縛済みです」

「ん」


 陛下が目を瞑り顎に手をあて、何やら考えているご様子です。

 

「なぜフィガロモが調べた時は出なかった」

「それにつきましては、申し開きのしようもございません」

「……まぁいい。分かった。引き続き頼む」

「ハッ!」


 黒髪の少年が短い返事とともに、ヒュッと消えてしまいました。


「さて、残りの足取りと、幼い子供の出自を時間内に追えるかどうかが問題だな」

「そうですね……『式』の時間は後ろ倒しにはできたでしょうが、それでも時間は限られていますものね」


 長引かせれば長引かせるほどに、逃げ道を作られてしまうのは誰もが予想できます。

 いま、王城内で各々の計画が上手く行っているのだと思い込ませる必要があります。


 不安要素としては、未だにお父様と義母と義妹、三人の計画や野望がハッキリとはわかっていないこと。

 それぞれが情報を共有して同じ方向を見ているのか、各々で別々の野望を抱いているのか。謎です。


 陛下は、王太子殿下はただの馬鹿なので何も考えていないとキッパリと断言されました。これについては否定要素が見つからず、何とも言えません。


「影はそれぞれの部屋に付けている。ボロを出してくれればいいのだがな」


 はぁ、と陛下が大きな溜め息を吐いたあと、とさりと私の肩に頭を乗せられました。

 何が起こったのか理解できず、硬直していると、堪えたような笑い声と振動。


「陛下!?」

「っふ……すまんすまん。ニコレッタは本当にスレていなくて可愛いな」


 陛下が少しだけ寝ると宣言され、目をつぶってしまいました。




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