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13/61

13:教皇に見えているもの。




 緊急会議を終え、国王陛下にエスコートされながら王城内の教会に向かうこととなったのですが、何故か地下道を歩いています。


「ここは王族でも一部の者しか知らない道だ」


 道と言われるには些か薄暗すぎるのですが。

 随分と昔の昔、戦争を行っていた時代の名残り、なのだそうです。


「王城にはこういった場所が色々とある。追々覚えていくと良い」


 今回のように秘密裏に動きたい場合などに、使っていたのだとか。

 あとは、ケネス様に誘われて王城を抜け出し、城下町に遊びに行くときにも使っていたのだと言われました。


 ――――聞き流しておきましょう。


「着いたぞ。少し待ってなさい」

「はい」


 薄暗くて複雑で、ここに来るまでに何ヶ所かあった曲がり角が、全く覚えられませんでした。

 突き当りの壁かと思っていた場所の右手側に、人がどうにか通れる隙間があり、そこを抜けると上り階段が現れました。

 陛下が上った先にある扉を開け安全の確認をされています。


「さ、足元に気をつけて上りなさい」


 わざわざ階段を下りてこられ、手を差し出してくださいました。陛下が驚くほどに紳士です。こういった些細な行動が嬉しくて、握る手につい力が入ります。


「大丈夫だ、この先はもう教会だから」


 怖がっているのだと勘違いさせてしまいました。


「あっ……申し訳ございません。その、わざわざ戻って手を差し伸べていただけたことが嬉しくて……つい、力が…………」


 陛下が目を見開いたあと、左手に持っていたランプを階段に置かれました。どうされたのかと思っていると、首の後ろに手を回され――――。


「んっ……」


 貪るような熱い口づけ。


「……いかん、庇護欲と煩悩が…………。ニコレッタ、君は煽るのが上手すぎるな」

「へ……?」


 きょとんとしていると、また唇が重ねられました。今度は優しく柔らかく、甘く。


「さ、行こうか」

「はっはいっ」


 陛下がくすくすと笑いながら、再度エスコートしてくださいました。




 扉の先は、教皇様の私室のトイレでした。

 なるほど、陛下が先に確認されたのは、コレのせいなのですね。流石に使用中の教皇様と遭遇はしたくないですものね。


「本気で、あそこを使われるのは嫌なのだがね?」

「緊急事態だ」

「フン。話を誤魔化さないで欲しいね」


 教皇様が不機嫌そうなお顔でそう言われたのですが、陛下は完全に無視してお話を続けられます。

 王太子殿下と義妹のこと、国王陛下と私のこと。

 

「…………ニコレッタ嬢」

「っ、大変なるご迷惑をおかけします」


 不機嫌そうなお顔のまま名前を呼ばれてしまいました。

 先日まで今日の準備や相談で沢山のお時間を割いていただいていたのに。このようなご迷惑をお掛けしてしまい、申し訳無さと悔しさが綯い交ぜになりました。


「ニコレッタ嬢、頭をあげなさい。大変だったようだね。だが君の顔を見れば解る。とても清々しい気持ちになっているだろう?」

「……っ、はい」

「うん。君はもっと素直になりなさい。その男は……まぁ、いけ好かないが信頼は出来るのだよね。女神の加護が強いからね」


 教皇様は女神様の加護だったり、人々のオーラの色が見えるのです。国王陛下はいつでも女神様の加護で金色に輝いているのだとか。


「全く。憎たらしいほどに眩しい男だよ」

「私には見えん。だから、知らん」

「ね? 聞いたかい? 憎たらしいだろう?」


 これは苦笑いするしかありません。

 どちらもどちらな気がするのですが、お二人とも言い合いがなかなか止まりません。


「陛下、そろそろ本題に」

「んむ……ん、すまん」

「はははっ、もう尻に敷かれているのかね?」

「教皇様っ!」

「ああっ、ニコレッタ嬢、怒らない怒らない。ほら深呼吸しなさい」


 教皇様に背中を優しく撫でられてしまいました。

 私が不安にな気持ちになると、いつもこうやって背中を撫でてくださいます。


「触るな」

「ニコレッタ嬢はね、いつも透明で輝きを放っていて、美しいのだけどね。感情が揺れると少しだけ色が混ざってしまうんだよ。私はね、ニコレッタ嬢には明るい色のオーラでいて欲しいからね。ほら深呼吸をしなさい」


 私にはわかりませんが、教皇様はいつもそう言われます。

 暖色ならいいが、寒色にはならないで欲しいと。

 普通の人は様々な色が混ざっているのだそう。


「オーラが単色の者はね、しっかりとした自分を持っているから、揺らいでも直ぐに本来の色に戻るのだよ。陛下やケネス様が代表格だねぇ。憎たらしいほどに揺らがないのだよ」


 ケネス様はオレンジ色なのだとか。なんとなくイメージそのものでした。

 私は透明で、いつ何色に染まってしまうのか、とてもハラハラする存在なのだとか。


「それで、君たち二人に悲しみと怒りの色がチラチラと混じっているのは、なんでかな?」


 教皇様が全てを知っているような笑顔で、そう聞かれました。




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― 新着の感想 ―
[一言] 教皇さまいやらしい意味ではなく若い清々しい娘に頼られてめちゃくちゃ嬉しいんだろうなぁと思われますなぁ…まぁちょっとはあるとは思うけれども。若い男女に好かれるのは年を取ると嬉しいものですからね…
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