11:腐っても公爵家。
元老院の方々と話し合い、今日の流れがサクサクと決まっていきます。
結局、広い場所をすぐさま提供できるのは、先王陛下の弟であるケネス様のお屋敷ということで場所は決定。
案内はケネス様が渋々と承諾してくださいました。
顔見知りが多いこと、元の地位が誰よりも高いことから、他国の方々が安心するであろうこと、イレギュラーな質問をされても対応可能なこと、様々な利点があるのだと陛下が、ニヤリと笑われました。
「結婚式には必ず間に合わせてみせるからな」
ケネス様がとても悔しそうでした。
後で直接お礼と謝罪をお伝えしたいです。
本当に、我が家のせいで様々な方にご迷惑を掛けてしまっています。
「では、各国の案内はケネスで確定。次」
「とりあえず、王太子殿下、公爵夫妻、ヴィオラ嬢にはバレないように何処かに囲っておきたいですな」
「そうだな」
そちらの対応は宰相閣下がしていただけるとのことでした。
「花嫁が代わったことによるドレスの準備、参列者への案内をどうするかなどの話し合いをしておきましょう。とりあえずは――――」
入り口に控えていた騎士様を呼び、補佐官と結婚式の担当官を連れてくるようにと伝えていました。
たぶん、連れてこられた二人は顔面蒼白になるでしょう。この面々を見て。私もそうなりかけましたから。
その仲間が増えることに、少しだけ嬉しさを感じてしまっています。
――――やっぱり!
結婚式の担当官と宰相閣下の補佐官が来られました。
お二人とも顔面蒼白です。
担当官であるウーゴ様がチラチラとこちらに視線を送って来ていますが、この状況では会釈するしかできませんでした。
そもそも、元凶の一味の気分なので、私から助けに動くことも出来ません。
「理解したかな?」
「っ……はい。補佐どのと足止めしてきます……」
「うむ。お前たちに任せる」
「よろしくお願いいたします」
陛下が信頼の言葉を掛けられたので、私もやっとお声掛けすることが出来ました。
「ニコレッタ様、この度は…………なんと言って良いのか…………」
「ありがとう存じます。色々とご迷惑をおかけしますが、どうか、頼みますね」
「「はい」」
担当官のウーゴ様と補佐官様が笑顔で対応に向かって行かれました。
「ニコレッタ嬢が声掛けした時のほうが、あいつらやる気になってなかったか?」
「ケネス……言ってくれるな。私もちょっと思ってしまったが」
「だよな!?」
ケネス様が物凄く煌々しい笑顔で、陛下に笑いかけていましたが、先程から非常に心臓に悪いです。
いくらお二人の仲とはいえ、国王陛下を皆様のまえで煽るのは…………。
「全く。ケネス様はいつもそうやって会議を長引かせますな。ほれ、次の議題に移りますぞ」
「へいへい」
話を進めるよう促してくださったのは、国内でも一、二を争う財力の持ち主でもあるブラージ公爵家の先代。
四十年ほど前は落ちぶれていたブラージ公爵家を、彼の手腕で盛り返したという生ける伝説でもあるお方です。
「ブラージ卿にはケネスも敵わんな。さて、続けるぞ」
「「はっ」」
結婚式はとにかく各国メンバーにはバレぬよう執り行う必要があります。
参列者への通告はこのあと宰相閣下が行っていただけるとのことでした。
「彼は一応公爵だからねぇ、家の力は驚くほどにある。金に目の眩んだ内通者が発生しないよう、細心の注意を払わねばならないねぇ」
「ヤツは気が弱いが、単純だからな。気付いた瞬間に逃げるだろうが、ヴィオラ嬢にすげ替わっても歓迎されていると思い込んでくれれば、のうのうと祝杯でも挙げるだろうよ」
お父様、結構厳しい評価をされていますのね。
まぁ、一ミリたりとも同情出来ませんし、心底納得してしまいましたが。
あのお父様です。
義妹と王太子殿下が結ばれる方がいい、などと思っているはずですもの。そうでなければ、あの義母と義妹を家に招き入れたりするはずがありません。だって、醜聞以外の何物でもありませんから。
この数年のお父様は、義妹が王城で自由にできるよう手配したりと、おかしな動きばかりしていました。
誰からの信頼も潰えているのだろうと思っていたのですが。なるほど金銭ですか。
金銭は…………義母と義妹がかなり使ってしまっているのですが。腐っても公爵家。まだまだあるのですよね……。