第1話
じゃあ、始めるよ。
それはオレが10歳になるかならないかの、たしか9月の頭くらいだったと思う。その頃、自転車で5分とかからない近所の公文式に通っていたんだ。まだ夕方にはちょっと早い時間で16時前くらい。
公文式をやってる家の前は坂道の途中でその坂道の入り口の左手が広い空き地が原っぱになっててね、坂の上なもんだからそこから下の街並みも通ってた小学校とか小学校のお寺の横の墓地なんかもばーっと一望出来て、遠くには富士山が見えたりしててね。幼心にも今日は夕日が奇麗だなぁなんて思ったりしてさ。
ふと思ったんだよ。あれ?ってね。そうなんだ、9月頭の16時ってもまだ日は落ち始めたばっかりで燦燦煌々と空にかかっててね、じゃあ、あの富士山の横に見えるオレンジ色の太陽は何なんだろ?ってなってさ。じぃーっと見てたんだよ。そしたらすこーしずつオレンジ色が薄くなってきてそれに合わせて大きさもすぅーっと萎んだみたいにちっちゃくなってさ。最後は“ふっ”って掻き消えて無くなってさ。
そこまで見てたらなんだか急に怖くなってね。周りにゃ誰もいないし、なんだろう、寂しいと怖いが一緒くたに何た感じっていうのかな。なんかそんな気持ちになって、普段は行きたくもなくて遅刻常習だった公文式がね。そこに行きゃ誰かいるってんで慌てて自転車で坂道下って公文式に駆け込んだもんだから、先生がさ、「あれK君、今日は早いんだね。」なんて言う始末で。
課題やってる最中もオレンジ色の光の正体が何だったのか気になったんだけど子供が思いつくのはUFO?とか火の玉?とかね。まぁ結局分からず仕舞いだけど今でもあれはUFOだったのかなぁ…なんて思ってるんだ。
どんとはらい。