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お題でSS  作者: 早桃 氷魚
9/24

7/11 涙と鳥籠







空っぽの鳥かごをみて、五才の弟が目に涙をためる。

しまった、と思った時には遅かった。

「っ……うわぁぁぁんっ!」

ボロボロと涙を流しながら、しゃくりあげる。

彼はため息をこらえて、弟の頭をなでた。

「泣くなって。探してやるから」

「っ、でも、ピーちゃん、いない~」

鳥かごを両手に持って、ワンワンと泣き出す。

「どっかその辺にいるって」

彼はきょろきょろと辺りを見渡すが、公園に植えられた木々は緑で生い茂り、あちこちで鳥が鳴いている。

弟の小鳥がどこへ行ったのか、彼には見当もつかない。

鳥かごの出入り口をしっかり閉めなかったのは弟だが、それを指摘したところで盛大に泣くのがオチだ。

「そこに座って待ってろ」

彼は弟をベンチに座らせると、とりあえず小鳥を探しに出た。

木の根元から上を見上げて「ピースケ」と呼びかけるが、返事はない。

違う鳥がピピッと鳴く声を聞いて、ここにはいないなと判断し、次の木に移る。

そうして探していっても、小鳥は見つからなかった。

鳥かごから自由になったのを幸いに、大空へはばたいたのかもしれない。

彼としては、小鳥が逃げたところで、仕方ないと諦めるが、彼の弟はそういかない。

ベンチに戻ると、泣きべそをかいた弟がかけよってきた。

「ピーちゃんは?」

「あー、遠くに行ったみたいだな。おうちに帰ったんじゃねぇ?」

「おうち、ここだもん!」

弟が空の鳥かごを見せてくる。

「ピーちゃんのいえ、ここ!」

「でもピースケは、ここで生まれたわけじゃないだろ?」

「?」

彼はなだめるように、言い聞かせる。

「ピースケは木の上で生まれて、たまたまお前んとこに来ただけだ。家が恋しくなっても仕方ないさ」

「やだー! ピーちゃん、ピーちゃん~!」

再び泣き出した弟に、彼は今度こそため息をつく。

だいたい、なんでちゃんと入口を閉めていなかったのか。

そう言いたいのをぐっとこらえて、弟から鳥かごを奪う。

「あっ! ピーちゃんの!」

「帰るぞ。もしかしたら、お前の部屋に戻ってるかもしんないだろ?」

「ほんとに? ピーちゃん、ぼくのへやにいる?」

パッと顔をあげた弟が、期待に満ちた目で見上げてくる。

彼は適当にごまかして、家に帰ることにした。

家で母がなぐさめてくれるだろう。

マジで面倒くせぇ。

いつもそう思うが、

「にーちゃん、はやくかえろ!」

小鳥が家にいると無邪気に信じる弟が、可愛いとも思う。

どうせ後でまた大泣きするのは分かっているが、彼は笑顔で、弟の頭をなでた。



(終)


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お話を書くモチベーションが爆上がりしますヾ(o´∀`o)ノワァーィ♪


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