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お題でSS  作者: 早桃 氷魚
18/24

7/22 ゲリラ豪雨とパライソ

 









 彼はどうやら、雨に弱いらしい。

 高校の時から、雨の日は「片頭痛がする」といって具合が悪そうで、いつも心配していたけど、それは今も変わらないみたいだ。

 出かけていた彼は、突然のゲリラ豪雨に見舞われたと言う。

 全身びしょぬれになって帰ってきた。

 そして今、俺の膝に頭をのせて横になっている。

 体も拭かずリビングに来たので、床が濡れてしまった。

 だがそんなことよりも、彼の体調が心配で、頭をそっと撫でる。

「大丈夫か?」

「ん……」

 頷くものの、顔色が悪い。

 頬に手をあてると、かなり冷たい。

「タオル持ってくるから」

 俺がそう言うと、彼は俺の手を握って、弱弱しく言う。

「行かないで」

「どこにもいかないって。すぐ戻るから」

「ここにいて」

 俺の手を握りかえす。

 けど、その力も弱くて、俺が握っていないと離れてしまいそうだ。

「お前が心配なんだ」

 何とか彼をなだめようとするが、彼はわずかに首を振る。

 うっすらと目を開けて俺を見つめると、力なく微笑む。

「いいんだ。側にいてくれたら、大丈夫だから」

「でも、顔が真っ青だ」

「……じゃあ、キスして」

 彼がじっと俺を見つめる。

 キスなんかじゃ何にもならないのに。

 そうと分かっていても、俺は彼にキスをした。

 彼が求めてくれるなら、何だってあげる。

 俺自身のすべてを捧げて、彼が生きていてくれるなら。

「んっ」

 何度もキスをするうちに、彼の唇に色が戻る。

 ようやく安心して、頬をなでた。

「大丈夫か?」

「うん」

 彼は眼差しを和らげて、頷いた。

 症状も楽になったらしい。

 早く、元気になって笑顔を見せてほしい。

 二人で暮らすこの部屋が、いつもの幸せな空間に戻ってくれと願った。

 彼の笑顔と存在が、俺に向けてくれる愛が、俺にとっての楽園そのものだから。

 彼にとっても、そうであると、信じているから。

 だから、たまに具合の悪い彼を見ると、それは永遠に続かないものだと思い知る。

 そして、より彼を大切にしようと心の中で誓うのだ。

「風呂入れてくるから、一緒に入ろ」

「えっち」

「あのな。心配してるだけだから」

 下心を隠して、真面目ぶって答える。

「ふーん」

 彼はウソなんて簡単に見抜いてしまう。

 でも、結局最後には、俺を見つめて「いいよ」と微笑んでくれた。




(終)


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