9.ピカスケ(5)
かむの第三小学校では毎月、学年全体にくばられる新聞があり、その月に生まれた児童たち全員のかんたんな紹介記事がのせられる。
何日に生まれたかまではともかく、いつの月に生まれたかは、これを見ればわかる。
「10月生まれの男子は、1、2、3……6人いるね」
ナツコはひとりひとり、王子の候補者をピックアップするとノートに書きだしていった。
5年1組のサイトウカヅキくん、
トツカタダシくん、
2組のカワバタイッペイくん、
ハルオカショウくん、
アマギコウタロウくん、
3組のササキキミノリくん……
(そうだ、ユウちゃんのところが10月生まれだったんだ)
今年の春、ナツコと同じ団地に引っこしてきた同級生、佐々木家のキミノリ・ユウ兄妹が、ともに10月生まれとして「かむ三小だより」にのっていた。
ナツコもそれを見て、あわてて誕生日プレゼントをしなきゃと母親におこづかいの相談をしていたところだった。
(あのキミノリくんが王子さまだなんてことだと大変だなあ……でも待てよ)
「ねえ、金の竜さん。その王子さまって一人っ子なの?ふたごのきょうだいとか、そういうのはないの?」
「それがし、そのような話はうけたまわっておりませぬ。王子さまはただ一人だと思っておりますが、はっきりと断定することは……」
じゃあ、いちおうキミノリくんにも確認はかけなきゃいけないのか。
(あの子が王子だとしたらイヤだな。だってユウちゃんがお姫さまになるわけでしょ。つきあいにくくなっちゃうよ)
それ以外のこどもたちにもいったいどうやって王子であることの確認をしよう?なにせナツコが話したこともない子がほとんどだ。
「う――ん……ふあぁ」
ナツコは考えなきゃいけないとは思ったが、あくびが出た。なにせ今日はいろいろなことがあって、少女はつかれきっていたのだ。
「……もういいや。そういうムズカシイことはあした考えよう」
それよりナツコには、さっきから気になっていたことがあった。
「……ねえ、あたし、あなたのこと、これからもずっと、いちいち『金の竜』ってよばなきゃいけないのかな?」
「はぁ、なにか問題でもござるか?」




