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竜の王子をさがせ!  作者: みどりりゅう
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8.ピカスケ(4)

「……それだけ?名前とかなんも無し?」


「さきほど申しましたように、われらは名前というものへのこだわりがありませぬのでなぁ。髪の特徴だけでは足りませぬか?」


「当り前よ。女の人なんて、たいてい少しは髪が長いんだから」


(付きあってた女の人の名前もおぼえてないなんて、竜ってやっぱり人間と感覚ちがうんだな。あたし、竜とはぜったいに付きあわない)


「そんなんじゃ、とてもじゃないけど探せないよぉ」


「それ以外で、それがしの存じておりますことともうすと……おお、そういえば王子のご誕生をお知りになったとき、王さまは、たいへんおよろこびになり、なんとかそれをこの人間界にお示しになろうと、この地に8匹の若竜を派遣なされ『舞い』をせしめた、とうかがっております」


「『舞い』?それってどんなの?」


「われわれ竜のいたす『舞い』ですのでそれは壮大なものでござる。雨風ふきすさび、大地にはすさまじき水があふれ……」

 挿絵(By みてみん)


「かむのの豪雨災害だ!」


「……なんでござる?」


「だから11年前の10月30日にこのあたりに起こった水害だよ。すごい雨と風が押しよせて大変な目にあったんだ。このあいだ社会の時間の『地域の歴史』でやったばっかりだよ。あたしたち5年生の生まれた年にあった大災害ってことで……なんだ、あれって竜のせいだったの?」


「せいと言われましても、われわれは王子ご誕生の祝いのつもりで……」


「もう!迷惑なことするなあ。あの時は、すごい被害がこっちの世界では出たんだから……。

 でも、それで少しわかった。『舞い』をよこしたのは王子が生まれてどれぐらいしてから?」


「知らせが入って、すぐとうかがっております。なにせコチラと竜の世界との間では時間のひずみがあるので、はっきりとしたことは言えませぬが……コチラの時間で言っても、せいぜい1週間というところでしょうな」


「それじゃあ竜の王子は10月生まれと思って間違いなさそうだね。このあたりに住んでいるあたしと同い年の子ってことは、たぶん『かむの第三小学校』に通っている。このあたりで、ほかの小学校に通っている子どもはいないもの。……なんだ!竜の王子って、うちの小学校に通っている10月生まれの子じゃない!同級生だ!」


「……よくはわかりませぬが、それで王子さまはどなたかわかりましょうや?」


「う――ん」


 いまは個人情報保護がきびしく言われている時代なので、クラスメートの誕生日でも全員はっきりとはナツコは知らない。ほかのクラスの子の誕生日となると、なおさら……

 ……あっ、でも、そうだ!今日は10月2日だから……


「ちょっと待っていて」

 ナツコは机のたなから、きのう配られたばかりの「かむ三小だより(5年生版10月号)」をとりだした。



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