7.ピカスケ(3)
「見た目はどうなの?それも半分半分?上半分は人間で、下半分はシッポになっているとか?それともツノとか生えてる?」
「ふつうの人間のすがたで暮らしておられるかとぞんじます」
「いくつなの?」
「……それが、どうもはっきりいたしませぬ。なにせコチラ……人間界とわれら竜の世界とでは、時間の流れかたがちがいますのでなあ」
「じゃあ名前は?」
「名前……人間には、そういうものがあるのでしたなあ。われわれ竜には、その……名前とやらをつける習慣がありませぬ。せいぜい色やツノの数で呼び分けるていどですので、王さまも気にとめておられませなんだ」
「そんな。相手の名前も年齢もわからないでよく探す気になったわね」
あきれる少女に竜は
「ですからこそ、われらはあの宝珠を持ってまいったのです。
銀の竜が持つあの宝珠は王家代々に伝わる重宝の品。そこに現・王さまが自らご調整なさって、王さまの血を受けついでおられる方が近くにおりますなら、赤く光って反応するようになっております。われら兄弟はあの宝珠をしるべにして王子さまをお探しする所存でございました。あのさきほどの池……」
「明神ヶ池?」
「さよう。銀の竜のもうしたことによれば、宝珠の反応を見るかぎり王子さまがあの池周辺、せいぜい町ひとつ分の範囲の中におられることは間違いないようでござる」
「そんなこと言っても町ひとつって、けっこうあるよ」
「黒の竜がおそってくることの無ければ、あのまま探索を続けておるところでございましたが……」
にがにがしげに口をゆがめる金の竜に
「いったいあの黒い竜はなんなの?」と聞くと、
ちょっと金の竜は言いにくそうに
「――彼は王子さまをおむかえすることをよろこばぬものでござる。先回りしてこの世界にあらわれ、われら兄弟を待ちぶせしていたのです。
おそらくねらいは宝珠でございましたのでしょう。あれがなくば、彼もこの慣れぬ人間界で王子さまを見つけ出すことはむずかしいでしょうからな。それがしとしては、銀の竜があの宝珠を黒の竜にうばわれず今も持っておりますことを祈るばかりです……しかし一方、銀の竜が宝珠を失っておる事態にもそなえ、なにか別の手段でも王子さまを見つけ出せるように考えておかねばなりませぬ」
「別の手段って言ってもなあ……なにか、ほかに王子さまにつながる手がかりはないの?王子がダメなら、せめてそのお母さんのこととか。それなら王さまも知ってるでしょ。付きあっていたんだから」
「そうですなぁ……おお、そういえば王さまが、王子さまの母上さまのことを……」
「ふんふん」
「髪の長い人間であった、と言っておられましたなあ」
ナツコはズッコケそうになった。