4.嵐の中の出会い(4)
「なんの。それがしこそ、あなたさまの声かけがなければ黒の竜の尾に打たれやられておりました。あなたさまはそれがしの命の親でござる。この金の竜、深く礼をもうす」
尾をふって、ピョコンと頭を下げる様子がかわいらしい。
「――黒の竜って、あの黒くて大きいの?」
「さよう。われらは先ほど、この人間世界に来たばかりでござるが、よもや、あのものが待ち受けておようとは……われら兄弟でもなかなかかなわぬ強敵です」
「兄弟って、あのもうひとりいた銀色の?」
「あれは、銀の竜。それがしの弟でござる。力つきてどこかに落ちてしまいもうした。よもや命を落としたということはありますまいが……それがし同様、身を小さくしてひそんでいるはず。なんとか黒の竜に見つかっておらぬことを願うばかりでござる。なにせあの宝珠を黒の竜にうばわれては一大事でござるからな」
「『ほうじゅ』ってあの銀の竜……さんが持っていた赤い玉のこと?」
「さよう。あの宝珠が無くては竜の国のお世継ぎであらせられる王子さまのゆくえを探すことがかないませぬ」
「王子さま?」
「われらが王であらせられる竜王さまのお血を引き継いでおられる方が、この人間界におられます。そして今回、名誉なことにわれら金の竜・銀の竜兄弟がその王子さまの探索、そして竜の国へのご案内役の任を受けたまわりもうした。なんとしても、あの黒の竜よりも先に王子さまを見つけ出さねばなりませぬ」
そして金の竜は、かま首をピンともたげるとナツコに向かって
「卒爾な願いごとなれど、人間どの。あなたさまにそれがしの探索の手助けをお願いできないでござろうか?」
と頭を下げた。




