35.竜の王子(4)
(――えっ?どういうこと?)
王子であるはずのキミノリに、この竜たちのいる光景が見えないはずないじゃないか。
そう思ったナツコはしかし、そのキミノリの横にいる「少女」のすがたを見て、がく然とした。
ユウがとろんとした目で、竜たちのたたかい、そして赤くひかる宝珠を見つめていたのだ。
「どうしたの?ユウちゃん?」
ナツコはユウの体をゆするが反応がない。
(まさか!?そんな!)
しかし、ナツコにそのことをゆっくり考える余裕などなかった。
「貴様など不要だ!この人間まじりが!」
黒の竜がピカスケをはじきとばし、ユウにおそいかかってきたのだ。
「あぶない!ユウちゃん!」
黒の竜がシッポがふりあげたそのすがたに、おもわずナツコはユウを抱きしめ、かばった。
(もうダメ!)
ナツコがすべてをあきらめたそのとき
「ウウウウゥ―――――ッ!!」
ナツコがだきしめる少女から、まるで男の子のようなうなり声が上がると、そのからだが光りだし、そして――
なんということだろう!少女の全身をまばゆくかがやく、虹色のウロコがおおっていく。
「――おお!これぞまさしく王竜のおすがた!王子さまは、ぶじ『変態』をおむかえでござるぞ!」
そのピカスケのことばどおり、虹色に光かがやく若き竜はあらぶる声をあげながら、黒の竜の首根っこに飛びかかっていった。
その雄々しいすがたをナツコはただ、ぼうぜんとしながら見つめた。




