34.竜の王子(3)
「なっ、なんだと!?こどもには危害をくわえないというから協力したんじゃないか?教師であるわたしにそんなことができるはずがないだろう!だましたのか!」
黒の竜はわらった。
「王子を始末できないというのなら、竜の国につれていってやるという約束はなしだ……もうよい。われが自ら手にかけてやろう。どけ、早川!」
「なにを!あっ?」
「早川先生!」
その丸太のような尾をムチのようにしならせ老教師を吹きとばすと、黒の竜は三人がしばられた木に、それこそヘビのようにからだを波打たせ近づいた。
「おのれ!そんなことはゆるさぬ!」
それに対してピカスケが体を大きくして飛びかかる。
「うるさいわ!下郎!」
こうして三度、二匹の竜のすさまじい取っ組みあいがはじまった。
目がまったく見えないはずの黒の竜は鼻だけで正確にピカスケの位置をつかみ、おそってくる。ナツコがあとでピカスケに聞いた話だと、なんでも竜の鼻は犬よりもいいぐらいなので、近くにあるものの位置は目が見えなくとも、ほぼつかめるらしい。
「ナツコどの!いまのうちに王子を!」
ピカスケが必死に黒の竜をくいとめているあいだに、ナツコとカズヨはあわててキミノリとユウ、そして浅倉先生のロープをほどいた。
浅倉先生はすまなさそうに
「ごめんなさい。早川先生が佐々木さんたちに声をかけているのが見えたから、ふしぎに思って追いかけてみたら黒の竜に見つかってしまって……」
そしてキミノリは
「ナッちゃんのことが気になるから、下校しろと言われたあともユウといっしょにこっそり学校にのこっていたんだ。そしたら早川先生に見つかって……ナッちゃんに会いたいならいっしょにおいでといわれて、それでこんな目に……。
でも、それよりいったい、今みんななにをしているの?なにもないところにむかって話しかけたりしてさ!ぼくにはちっともわけがわからないよ!」




