3.嵐の中の出会い(3)
目をさますと、ナツコは池のほとりの芝生に横たわっていた。
空はもうピーカンに晴れているが、自分の服もまわりもぐっしょりとぬれ、木々もところどころ折れて、ものが飛びちっている。雨風におそわれたのは間違いない。
(――ああ、こわかった。さてはたつまきにおそわれて気を失っているうちに変な夢を見ちゃったんだな。でも竜のケンカだなんて、すごい迫力の夢だった……)
ぬれそぼった体をおこして、ほうけていると
「――おお。お手前、お気がおつきになられたか?」
近くから、なにやらささやくように小さな声がした。
「えっ?」
おもわずナツコが声を出してあたりを見わたすと
「ここでござるよ。ここ」
と、わきにできていた小さな水たまりから返事があった。
――なんと、そこにいるのはとても小さな、しかしたしかに先ほど夢の中で会った金色に光り輝く竜であった。それこそ、前に水族館で見たタツノオトシゴぐらいの大きさだが、それよりはずっときれいなものだった。
「えっ、あなたはさっきの竜……さん?」
「そうでござる」
その金の竜は、まるで水たまりにのたくる小蛇のようであったが、顔を上げると、いかめしくピンとひげを張った。
「……でも、さっきはすごく大きかった」
「先ほどは、せいいっぱい気を張っておりましたのでな。今はもう黒の竜との戦いと、あなたさまが落ちるのを救い上げるのとで、力を使いはたしてしまいもうした」
「あっ、やっぱしあたしは落ちそうになっていたの?それをあなたが助けてくれて?どうもありがとう」
大きな口がせまってきたときには「食べられる!」と思って気を失ってしまったが、金色の竜はたつまきの風が消えて落ちかけたナツコを助けてくれたのだ。




