28.疑惑の放課後(4)
「へえ、そうなんだ」
ピカスケが、自分の王国のことよりも王子の気持ちを考える竜であることがナツコはうれしかった。
ただ、そのあとピカスケはつづけて
「――されど実際問題として、王子さまがいつまでも人間世界にとどまることはむずかしいかと存じます」
「えっ、なんで?」
「なんとなれば成長につれ、竜としての体質・気質があらわれるでしょうからなぁ……ふつうの人間として暮らしていくのは、むずかしゅうございましょう。また黒の竜のようなものに命がねらわれている現状では、ご自身のためにも竜の国においでたまうが最上と存じます」
「……そうか、それじゃあしかたないね。あの5人を調べなおそう。こうなったらもう浅倉先生におねがいして、ひとりひとりていねいに聞いてもらうしかないよ」
「――浅倉先生ですか?」
そのピカスケの言いかたがおかしいので
「どうしたの?」とナツコはたずねた。
しかし、その問いにピカスケは直接にはこたえず
「……ナツコどのはいったいどうやって黒の竜が、王子候補とそれがしがあの部屋(図書会議室)に集まる、と気づいたとお思いですか?」
「どうって……そりゃ、あの校内放送で5人を集めたときにあやしいと思ったんじゃない?それか、そもそもピカスケを学校につれてきたのを気づかれていたか。あたしたちがあまかったけど……」
「ふうむ。されど今日、それがしはそのバケツの中で完全に気配を消しておったつもりでござる。また、あの放送……とやらもうすものでも、われらがことの前に、何やらこどもをあつめる知らせがありませなんだか?」
「そういえば……」
たしかに浅倉先生の前にも、教頭先生が花壇にイタズラをしたこどもを職員室によぶために放送をかけていた。
「しかるに、なにゆえ黒の竜はああもはっきり、部屋に集まったわれらを襲えたのでしょう?どうもそれがしには、黒の竜はわれらがあの部屋に集まることを前もって知って、待ちうけていたような気がしてなりませぬ」
「でも、そんなことどうやって……?」
「なにものかが、われらの計画を黒の竜にもらしていたとしか思えませぬ」
「そんな。だって、この計画はきのう浅倉先生がたてて……まさか!ピカスケ、先生のことをうたがっているの?」
「うたがっていないともうせば、ウソになりますかな。なにせあの方はわれわれ竜のすがたをとらえることのできるお方です。もし黒の竜にわれらの計画をもらしたものがいるとすれば、そのものは少なくとも竜とやり取りができねばなりません」




