表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜の王子をさがせ!  作者: みどりりゅう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/40

27.疑惑の放課後(3)

 浅倉先生は、なぜナツコと自分が明神ヶ池に飛び出したか、その理由をまわりに聞かれたので


「突風があったとき、たまたま近くにいた平山さんがショックのあまり心が不安定になって学校の外にとび出てしまい、それをわたしが追いかけた……ということにしたの」

 と言った。


「そんな、無実の罪をかぶせるようなことしてごめんなさいね」


 もうしわけなさそうな担任に対して、ナツコは

「いいんです。どうせ本当のことなんか、だれに言っても信じてもらえないですから。――じゃあ、あたし帰ります」

 と小学校にのこった最後の児童として校舎を出た。


 その肩には、まるで手のりのインコのようにピカスケが止まっているし、バケツには休眠中の銀の竜がいる。


「ひとりで帰って、だいじょうぶかしら?もうだいぶんと夕方になってしまったけど」


「だいじょうぶです。明るいところを通ります。それにピカスケがいますから」


「そう……なら、おねがいね。わたしもまだ用事がのこっているから」


 校門まで見送ってもらいながら、ナツコはこのたった二日ぐらいで急に浅倉先生との距離がちぢまった気がしてふしぎだった。浅倉先生は担任だけど、5年2組のクラスのなかで浮いている。その先生と、いま一番、近しいのは自分かもしれない。

挿絵(By みてみん)

「あーあ、たいへんな一日だった。はやく帰って休みたいよ」

 とぼとぼ歩きだしたナツコに


「もうしわけござりませぬ。おわびのしようもありませぬ」

 と肩の上で恐縮するピカスケだった。


「ピカスケがあやまることじゃないよ。……それより、いったいどういうことなんだろう?あつめた5人全員がピカスケたちのこと見えなかっただなんて。あの5人の中には王子はいなかったってことだよね」


「――ウウム、そのことでござるが」

 ピカスケはうなると

「そのことについては、なことがござる。銀の竜が休眠まえに言いのこした言葉によると、彼がさきほど、それがしの危機に気づいて、われらがもとにかけつけるとちゅう、あの図書会議室とやらのそばで、たしかに宝珠が反応を見せていたというのです。つまり、やはり少なくともあの部屋周辺に、王子さまはおられたのです」


「……それって、どういうこと?」


 ナツコの問いにピカスケは

「考えられることといたしましては、実は王子さまはあの5人の中におられたが、あえてわれら竜を見て見ぬふりをなされたということでしょうか」


「見ぬふり?なんでそんなこと?」


「それは、残念ながら王子さまがわれら竜にかかわりたくないとおぼしめされているのやもしれませぬ。もし、かりに王子さまがご自分が竜の王子であるとご存じで、なおかつふつうの人間のままお暮しになりたいとおぼしめすならば、そのようなごふるまいに出られる……ということも考えられます」


「――そうか。王子になるからといって、みんながみんなよろこぶとはかぎらないもんね」

(あたしだって、家族やユウちゃんたちと、はなれて暮らさないといけないなんて、イヤだものなあ)


「……ピカスケは、もし王子さまが竜の世界に行きたくないと言ったらどうするの?むりやりっこにでもつれていく気?」


 ナツコの問いにピカスケは無言になったが、しばらくすると

「そのような無体むたいなまねをする気はござらぬ。あくまで王子さまご本人の意思によることでござる」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ