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竜の王子をさがせ!  作者: みどりりゅう


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24/40

24.小学校のピカスケ(4)

 明神ヶ池の森の上では、すさまじい風と黒雲が雷とともにとぐろをまいていた。


「すごいわね!」


 浅倉先生はすっかり興奮しているが、ナツコの見たところ、それはおととい見た、あのたつまきをひきおこすほどのはげしい争いにはなっていない。おそらく、ピカスケが一方的に黒の竜に押されているからだ。


 はげしくうねる黒いひかりに対して、金色のひかりはよわよわしいものに思えた。

(ピカスケはまだ傷がいえていないんだ。このままではやられてしまう)

 心配しながらナツコが見ていると、浅倉先生がその二匹の竜とはちがう方向を指さしながらさけんだ。


「あっ!あれはなに?」


 明神ヶ池そばのしげみからあらわれいでた新たな黒雲が、すごいスピードで二匹の竜の争いに、ぶつかり加わった。


「あれは……銀の竜!?」


 そう。それはきらめく銀色のウロコをふるわせる一匹の竜であった。


「兄者!加勢いたしまする!」


「おお、銀の竜!ぶじであったか?それで宝珠は?」


「しかと、この身にござります!」


「こしゃくな銀め!されど、これぞさいわい!いまこそ宝珠をわれによこすのだ!」


「なにを!そのようなわけにはまいらぬ!」


 ふつうの人間が聞けば、すさまじい雷鳴のとどろきにしか思えない竜たちのどなり合いも、ナツコや浅倉先生には、はっきりとその内容が聞き取ることができる。


 銀の竜がかけつけて二対一となり、たたかいはピカスケたちに優勢になるかと思われたが、しかしやはり銀の竜も体が弱っていた。むしろ黒の竜にねらわれるように攻撃されてしまい、その結果、力つきて上空から地面へドスンと落ちていく。


「だいじょうぶ!?」

 ナツコはあわててその近くにかけよった。


「あたしはナツコ。ピカ……金の竜の友だちよ」


 銀の竜は息をたえだえにしながらも、うす目を開けて

「これ……この珠を黒の竜にわたしてはなりませぬ……どうか、もってにげて」

 そう言うと、のどを動かし、なにやら吐き出した。

 それは赤く美しい光を放つ宝石だった。


「……えっ、これをあたしがもっていくの?」


 ナツコの問いに力なく銀の竜がうなずく、その上空から

「わらわ!その珠をわれによこせ!」

 黒の竜がおそろしい声でさけび、おりてこようとする。


 ピカスケが行かさじと胴にくらいつくが、ふりはらわれた。

「ナツコどの!宝珠をお守りください!なんとかお逃げくだされ!」


「こざかしいわ!」

 ピカスケをそのトゲつきのシッポで打ちはらうと、黒の竜はナツコを追いかける。


「平山さん!わたしにそれをわたして!」

 浅倉先生が手を広げて声をかけるが、そちらにむかう余裕がなかった。


 ナツコは木々のあいだをぬって、せいいっぱい走って逃げたが、飛竜の速さにはおよぶべくもない。あっという間に追いつかれて、しまいには木の根っこにひっかかってころんでしまった。


「わらわ!とっとと、その珠をわれによこすのだ!」


 ナツコが恐怖にかたまって、こたえもできずにいると、遠くからピカスケの声がした。

「ナツコどの!是非もない!そやつにわたすぐらいならばその宝珠、お割りになってしまってくださいませ!」


「そんな!いいの!?」


「はいっ!」


「やめよ!!」

 黒の竜はおそいかかったが、それより少女の行動の方が一歩はやかった。

挿絵(By みてみん)



 ナツコは持った宝珠を大きくふりかぶると、いきおいよく下にたたきつけ、そのあざやかな赤い宝珠はまっぷたつに割れた。

 黒の竜は怒りにたけったうなり声をあげ、ナツコをそのシッポでなぎとばした。


 少女は意識を失った。


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