18.竜の王子候補(8)
「それで、その宝珠を持っているという銀の竜は見つからないの?」
「はい。生きていたとしても、いまは力がだいぶん弱って、黒の竜に見つからないよう息をひそめているだろうから……兄の自分でも探しだすことはむずかしいと、ピカスケが言っていました」
「そう……。じゃあ、やはり先にこちらで王子を探しておいた方がよさそうね。あなたがしようとしていたのと同じように候補者全員、一人一人をわたしが呼び出して話を聞くというのはもちろんできるけど、それで本当に見つかるかしら?だって、その王子自身が、自分が竜の子であることを知っているとはかぎらないでしょう」
(そうか。そういうこともあるんだ)
ナツコはそこまで考えていなかった。かってに、ホンモノの王子ならばその子は自分が竜とのハーフであることも当然わかっていて、たずねさえしればこちらに答えてくれる、と思いこんでいた。
「王子のお母さんがそのことを息子にちゃんと伝えている保証はないものね。こどもにとって、自分がふつうの人間でないことを知るのはショックなことでしょうから。母親としては真実をぎりぎりまで言わないでいるつもり、ということもあり得るでしょう。
その場合、たとえ本人に聞いてとしても『なにヘンなこと言ってるの、先生?』でおしまいだものね。それではこまる。かといってこのことで保護者の方を回るわけにもいかないし……なにかよい手はないかしら?」
先生はしばらく考えていたが
「平山さん。その金の竜……ピカスケだったかしら、彼を明日、学校にこっそりつれてくることはできるかしら?」
「弱ってはいますけど、できないことはないと思います」
「じゃあ、つれてきてください。そしたら、わたしが昼休みに校内放送で、王子候補の5人のこどもたちを呼び出すわ。理由はそうね……わたし、ちょうど今度の読書週間に本を読んで感想を書いてもらう子を選ばないといけないから、それを10月生まれの子にするわ。まずは男の子の部ということで集まってもらいましょう」
そういえば、浅倉先生は5年生の図書担当教員でもあった。図書委員会の集まりにもめったに顔を出さないのでわすれていた。ベテランの早川先生にまかせきり、というより遠慮しているのかもしれない。
そんな仕事をするとは図書委員のナツコも知らなかった。




