表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜の王子をさがせ!  作者: みどりりゅう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/40

12.竜の王子候補(2)

 今年の春、引っこしてきた佐々木兄妹のうち、ユウの方がたまたま小学校でもナツコと同じクラスとなり、仲良くなれたことは自分の11年の人生の中でもっとも幸運なことだ、とナツコは本気で思っていた。


 そんなユウにくらべて兄のキミノリの方は、いまいちナツコにもつかみきれないところのある子だった。

 のんびりしているというか、ボサッとしているというか、とにかくふだんからだらけている。よく見ると顔もまあまあイケメンなのだが、そのにじみ出るだらけた雰囲気が素材のよさをそこねていた。


「ほら、キミノリ。もう行くよ、遅刻しちゃう」

「え~、まだいいだろ」

「いいわけないだしょ。ナッちゃんまで遅刻させる気?」


 こんなふうに、いつまでもモタモタしている兄を、しっかりものの妹がむりやり追い立てる……というのが、ナツコの見る佐々木家の毎朝の光景だった。



「えっ!?ナッちゃん、昨日の明神ヶ池のたつまきに出合ったの?」


 ナツコとユウはならんで歩く。その数歩あとからキミノリがボサッとついて歩く。それが三人のお定まりの通学スタイルだった。

 挿絵(By みてみん)


「――あのたつまき、あたしとキミノリも遠くからだったんだけど見てたんだよ。すごく大きそうに見えたのに、だいじょうぶだった?」


「うん。だいじょうぶ」


 もちろんナツコにしてみれば、本当はだいじょうぶだなんてとても言える状況ではなく、ユウに言って聞かせてやりたい話はいっぱいあったのだけど、ピカスケに、不必要に人にこの話はしないようにと言われていたので、だまっていることにした。


「なにせ、たいていの人間はわれら竜のことなど、見ることも感じることもできませんのでな。言って聞かせるだけ、おかしなことになるだけでござる。それに、どこで黒の竜が耳をそばだてているや知れませぬ。なるだけ内分ないぶんにお願いいたしまする」


 そんなナツコの気も知らず、うしろからキミノリはのんきな口調で

「いいなぁ、ナッちゃん。たつまきをそばで見られただなんて。写真とか撮らなかったの?」


「ううん、撮ってないよ。あたし、そんなの持ってないもの」

(たとえ持っていたとしても写真を撮るような余裕はなかったよ)


「何うらやましがっているの?キミノリ。ナッちゃんは危ない目にあったんだから。言葉に気をつけなさい」


「ほ――い」


 とぼけた兄にツッコむ、しっかりとした妹。

 佐々木兄妹のいつもどおりのやり取りをほほえましくながめながら、ナツコは、いったいどのようにこれから竜の王子を見つけ出せばよいか考えていた。


 王子探しの決め手となる宝珠の行方が銀の竜とともにわからない今、きのう「かむ三小だより」で見つけた王子候補の6人の男子、彼ら一人ずつにそれとなく聞いて回るぐらいしか手が思いつかない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ